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バブル期超えの高騰!この状況は続くのか? 東京・首都圏新築分譲マンション価格・今後の見方(2/2ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2022/05/05

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パワーカップルはさらに増えるのか?

東京・首都圏新築分譲マンション市場に目立つ購買層として、「パワーカップル」が存在することはよく話題となる。定義のはっきりしない言葉だが、ざっとしたところをいえば、共働きの夫と妻、それぞれの年収が700万円程度を超える夫婦世帯、あるいは、さらに子どもまたは親がいる世帯といった辺りだろう。

つまり、彼らの世帯年収=約1400万円超ということになる。一般に年収の7倍程度までが適当とされる住宅購入価格を考えると、1400×7=9800万円となる。そこで、冒頭の不動産経済研究所のレポートをもう一度見てみよう。東京23区での新築分譲マンションの平均価格は8449万円となっている。まさにパワーカップルの購買力にシンクロしたかたちだ。

いくつかのシンクタンクなどは、こうしたパワーカップルが年々増加している旨を報告している。背景としては、いわゆる働き方改革が近年大企業を中心に進められたことが大きい。出産後、子育てもしながら女性が働き続けられる環境が整ってくるとともに、パワーカップルが生まれる環境も整ってきたというわけだ。

それでもマンションはまだ安い? 海外からの目

高騰、価格上昇と、ニュースに文字が躍る東京・首都圏の新築分譲マンションだが、国際的に見るとまだ「安い」との指摘も時々目にされる。

参考となる一資料として、一般財団法人日本不動産研究所による「国際不動産価格賃料指数」昨年11月公表分の結果を見てみよう。いわゆるハイエンドクラスマンションの価格指数の比較において、ロンドン、ニューヨーク、北京、上海、香港、台北、シンガポール……これらはすべて東京よりも数値が上回っている。東京・首都圏のマンション市場は、国際的にはある意味で出遅れており、価格の上ではいまだ伸びしろを保つとの見方もできなくはない。

東京および首都圏は、世界最大ともいわれる巨大都市圏であるばかりでなく、群を抜いた治安の良さも誇る魅力的なエリアだ。また、人口減少が進む国のなかに在りつつも、東京・首都圏自体へのヒト・モノ・お金の集中がさらに進むことへの期待値は高い。

唯一、明日にも起きかねない大地震が気になるところではあるが、目の前の旨味としてイールドギャップ(投資利回りと借入金金利の差額)にも魅力がある。マンション含め、国際的に見て東京・首都圏を不動産投資の対象として検討しない判断は、目下のところしにくいといっていいだろう。

今後も目を離せない4要素

以上、高騰している(国内的には)東京・首都圏新築分譲マンション価格は今後どうなるのか? との問いに絡めて、それを支えていると思われる4つの要素を並べてみた。

なお、記した順番は、私が思う現在のマンション価格に対する影響力がつよい順番だ。すなわち1番「金利」、2番「資産価値」、3番「市場の購買力」、4番「海外からの投資意欲」となる。

よって、今後、東京・首都圏新築分譲マンション価格がどうなっていくかについては、突発的な金融および経済的変動による影響を除いては、これら4要素の動きを随時確認していくのがよいものと、私個人は思っている。

もっとも、その突発的な変動というやつ、「危機はいつも違った顔で現れる」といった言葉どおり、いつどんなかたちのものが忍び寄ってきているのかがなかなかわかりにくい。結局のところ、これこそがもっとも悩ましい問題であり不安といえるだろう。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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