シェアハウスだけではない アパマン不正融資も――被害者が語るスルガ銀行不正行為の実態(5/5ページ)
大谷 昭二
2021/08/27
<売買関係書類の偽装>
不自然な融資申込日、価格の違う売買契約書
自己資金10%ルールを潜脱するため、売買契約書に虚偽の価格を記載、偽造し、実質的に自己資金なしで不動産購入を可能とさせた。具体的には、価格の違う売買契約書の作成、契約締結日、融資申込日の改ざん、整合性のない契約書、売買代金の変更契約書などである、
自己資金の偽装
自己資金がないにもかかわらず、通帳の代わりに手付金の領収書を偽造し、手付金・中間金領収書の偽装、金額未記載の領収書の署名捺印など自己資金があるように見せかけた。
<その他の不正行為>
クーリングオフ告知義務違反
・スルガ銀行店舗以外での売買契約は、クーリングオフの適用を受ける。しかし、スルガ銀行の売買契約はクーリングオフの説明が一切されていない
・売買契約書、重要事項説明書にも一切記載がない
三為契約
売主が売主たる根拠を示すには「登記簿上所有者と売主の売買契約書」を買主と共に確認、もしくは買主から資料を取得しなければならない。しかし、スルガ銀行は何も確認もせず、買主は売主から何も提示されていない。第三者のための売買契約であれば、登記簿上の所有者とのつながり(売買の関係性)を証明するため、「登記簿上所有者と売主の売買契約書」の複写などが必要だ。当然、売買代金などは伏せてある内容になるが、一切提示されていない。この状況では完全な他人物売買になる。
買主不在の代金決済
・売買契約の約定が履行され残代金を支払う状態の可否の確認がなく、勝手に買主の預金口座から引き出しと送金を行っていたことがうかがわれる
・残代金支払い後も買主への連絡は行われない。送金が済まないと所有権移転登記はできないので、買主に連絡を入れていないことは著しく不誠実な行為になる
・スルガ銀行担当者は金銭消費貸借契約時に、金額未記載の引き出し伝票や振込依頼書などに署名捺印させただけで、買主本人からの預金引き出しに関する委任状や同意書もないまま預金の移動を行っていた
抱き合わせ販売、ほか
・融資条件としての定期預金契約、定期積金契約を半ば強制的に行っていた
・銀行代理業の許可を持たないチャネルに顧客への説明を委ねていた
問題解決の落としどころは?
Aさんのケースでは、当該物件の実勢価格が6000万円前後だったものが1億200万円で取引された。そこで民事調停では、実勢価格との差額を損害賠償請求の対象としてスルガ銀行側に認めさせ、その部分に関して借入金の一部と相殺するという主張を行った。これによりオーナーらには本来の不動産価値に見合った債務だけが残り、物件の売却による一括返済、あるいは賃料収入からの返済を目指すことになる。
一向に終わりを見せる気配のないスルガ銀行の不正融資問題。沈静化するどころかさらなる拡大が懸念される。“地銀の優等生”といわれたスルガ銀行の闇、今なお先は見えてこない。
この記事を書いた人
NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事
1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。