シェアハウスだけではない アパマン不正融資も――被害者が語るスルガ銀行不正行為の実態(4/5ページ)
大谷 昭二
2021/08/27
<債務関係書類の偽装>
通帳その他の自己資金確認資料の偽装
・スルガ銀行では、自己資金について原本確認が義務付けられているにもかかわらず、原本確認は全くされていない。
・収益不動産ローンにおいて、通常は10%の自己資金を投資家に要求するが、自己資金がないうえに「通帳その他の自己資金確認資料を改ざん」が日常的に行われていたようだ。しかも、本人の知らない現金を自己資金の見せ金としていたこともうかがえる。
収入の偽装
収益不動産ローンの融資基準は、借入申込人の年収の40%を返済限度額としていた。例えば、1億円の融資における返済金額が年/610万円とすると、年収1525万円でなければならないことになる。しかし、シェアハウスでの不正融資では「源泉徴収票や確定申告書の改ざん」が行われており、アパマンローンでも同様のことが行われていたようだ。
健康診断書の偽装
Aさんの場合、肝臓の数値が高いと指摘を受けていながら「なんとかします」と言われていたことから推察すると、団体信用生命保険などの加入申込における診断書などの偽装も疑われる。
<物件関係書類の偽装>
レントロール(部屋ごとの家賃や契約期間などが記載されたもの)の偽装
収益不動産ローンの融資基準では、満室想定賃貸収入の70%を返済原資とみて融資限度額を算出することとされているが、満室想定賃貸収入を大きく見せようと「同一物件で複数のレントロールを作成」「銀行用の募集家賃と実際の保証家賃の相違」「近隣価格と大幅に乖離した売買金額および担保評価」「賃貸借契約書の偽装」がなされていた。
物件概要書の偽装
物件購入後の事業計画(稼働率、運営委託費、修繕費、保険料など)を予測して投資家のキャッシュフローが融資の返済を上回るか否かの検証が必要だが、銀行用と投資家用の複数の物件概要書を作成していた。
違法建築の黙認
・違法建築では、売却が困難になることが多いが、これを黙認して融資を実行
・再建築不可物件や既存不適格物件の黙認
・確認済証の偽装
この記事を書いた人
NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事
1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。