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住宅業界が懸念する「ウッドショック」とは 輸入木材がコロナで予期せぬ高騰

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文/朝倉 継道 イメージ/©adam121・123RF

外国産木材価格上昇 輸入量が減少

木材価格の高騰が話題となっている。「ウッドショック」という言葉もメディアを賑わし始めた。

外国産木材の価格が上がり、輸入量が減少。品薄となっている。その影響が国内産木材への需要に及び、こちらでも価格が上昇している。

そのため、住宅着工に遅れが生じ、トラブルとなるケースも一部に出ているとのこと。マイホームや投資物件の新築を予定している人は、ぜひ今後の動向を注視してほしい。

ウッドショックの震源地はアメリカだ。新型コロナウイルスの感染拡大がその要因となっている。

「コロナ禍」は、日本同様に、アメリカでも経済に複雑な影響を与えている。住宅分野では、リモートワークの広がりや、外出を避けての在宅時間の増加といった社会活動の変化が、人々の都心離れ、一戸建て需要の増加といった新たな市場ニーズを生み出している。そこに歴史的低金利も加わって、2020年の後半辺りから市況が大いに沸いている。伸びる市場に対し、労働力不足のみならず、土地不足さえ懸念されてきているというのが勢いさかんなアメリカの現状だ。

急激な伸びを示す、米・住宅価格指数の上昇 

FHFA(アメリカ連邦住宅金融庁)による、21年3月末公表分の今年1月の住宅価格指数をみると、前年同月比で約11.4%の増加となっている。なお、同指数の伸びは20年の秋口頃から加速度を増しており、これに絡むかたちで材木先物価格も上昇を始めている。年が明けてこの4月末には、同先物価格は昨年の同時期と比較し、4倍を超える急激な伸びを示す格好だ。

なお昨年夏頃には、アメリカの住宅価格については「21年にかけて下落する」との予測も、実は囁かれていた。当然だろう。日本に比べ、アメリカのコロナ禍の凄まじさはレベルが違っている。この時期は、景気後退による失業率の増加と高止まりがアメリカ国内でも強く懸念されていた。

ところがやはり日本同様、アメリカでもコロナによる経済への影響は、その後「まだら模様」を呈することとなった。厳しい立場にあっては厳しく、そうでないところではいわゆるコロナ景気さえ生じるという、複雑な状況を示すかたちとなっていく。住宅を購入できる層に対しては需要を大いに刺激し、あれよという間に世界各地へ向かうはずの住宅用木材をアメリカが吸い上げる構造が生まれたというのが現下の状況だ。

その結果、20年4、5月には大きく落ち込んだアメリカの住宅着工件数は、その後目覚ましい回復を見せている。この1月には、景気のよいニュースが世界を駆け巡った。「20年12月の米住宅着工件数は166万9000戸。06年9月以来の高水準」との驚くべき内容だ。

さらに、アメリカに加えて、木材価格の世界的高騰をアシストしているといえるのが中国だ。いわゆる「コロナ封じ込め」を早期に達成、こちらも大人口を背景にしての住宅需要回復が伝えられるところとなっている。もしかすると、今後アメリカ以上に中国市場は沸く可能性もあるだろう。

なお、アメリカ、中国の2大マーケットが木材をほしがっているとなると、次に注目されるのが流通となる。ところが現在、コロナ禍に伴う「巣ごもり需要」が世界中に広がった影響で、運ばれるモノがどっと増え、これにより輸送用海上コンテナの不足が実は深刻化している。

そのため日本国内の事業者からは、輸入木材に関して「なんとか調達できたものが、コンテナが確保されないため、予定を過ぎても届かない」といった悲鳴も上がっているらしい。また、コンテナが需要に対し不足しているとなれば、それは当然、船の運賃にも跳ね返ってくる。このことが、輸入木材の価格高騰に加わるさらなる重荷となっている。

国内への影響、今後はどうなる

そこで、国内の木材価格への影響も数字で見てみたい。

述べてきたとおり、現在、輸入木材は価格が高騰、品薄となり、それが国産木材への需要を呼び、こちらも価格が急上昇しているというのが、目下報じられている内容だ。

参考として、農林水産省の「農林水産統計・木材流通統計調査・木材価格(令和3年3月)」の数字を紐解いてみたい。

ここでデータが挙がっている「製材用素材価格・合単板用素材価格」は、「まつ中丸太」「すぎ小丸太」など、10種類に及ぶ。

このうち、21年3月の価格が前年同月を上回っているものは半分を超え、7種類となっている。なお、数値としては「まつ中丸太」の109.6%が最大で、次が「ひのき中丸太」の前年同月比106.2%となっている。すなわち、1年を通しての上昇分としては、今回のウッドショックに絡んでの各報道を見るほどのインパクトには、ほぼ達していない印象だ。

もっとも今後については、予断は許されないだろう。

輸入木材や国産木材が、輸入・生産されたあと、加工・商品化され、消費者の手に渡るまでの間には、各段階での需給が存在する。それを担う需要家は、市場を混乱させないようある程度の負担を払い、ショックを和らげてはくれるはずだ。

が、いよいよ限界を超えたときはそうもいかない。当然ながら、異変は“川下”でも顕在化することになるだろう。

すなわち、冒頭の話に戻るが、マイホームや投資物件の新築を近く予定している人は、ぜひ今後の動向には注目をしておいてほしい。

一方で、今回のウッドショックに関連して、国産木材流通への関心が業界内でにわかに高まっていることは、よいかたちでの影響といっていい。

住宅に関しては、人口減少とも相まって、日本はすでにストックがあふれる社会となっている。

国外から木材を次々と輸入し、建物と廃棄物を増やすのではなく、生じた更新分を自国内の資源で丁寧に補いながら、林業サイクルを回していく方が、おそらく国民と国土、環境を併せてのメリットは大きいはずだ。

日本の何倍もの惨状を呈するコロナ禍も、いまや力でねじ伏せんばかりのアメリカや中国の経済は実に頼もしいが、日本は日本である。

われわれなりのコロナを奇貨とする上手な変化の方法が、おそらくは、さまざまな分野に存在するはずである。

 

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