地域創生に尽力する山本カヨが語る「福岡の魅力」と「ほど良いビジネス感」 みんな、福岡へ来てみんしゃい!
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/06/16
「バータービレッジ」代表 山本カヨ氏 撮影/吉田 達史(Photo Current66)
九州といえば、人情味にあふれ、ビジネスや情報が口コミで広がりやすいことが特徴でもある。さまざまなビジネスチャンスの可能性がある場所だ。そんな九州・福岡には、30年以上にわたって活躍する有名なローカルタレントがいる。それが山本カヨさんだ。テレビやラジオで先駆けとなった娯楽情報番組に出演し、若者からの絶大な人気を誇ってきた。そして、いま、インターネットテレビ局の代表として、障がい者支援や地域創生をテーマに、さまざまな街や人と幅広いジャンルの情報を共有・拡散している。地方で活躍すること、福岡の魅力などを山本カヨさんに聞く。新型コロナが収束した際にはぜひ訪れたいものだ。(聞き手/編集部 文/財部 寛子)
若者の人気を集めたタレント時代
──福岡県を中心に、九州地方では多くの方がカヨさんのことをご存じだと思います。何がきっかけでタレントの道に進んだのですか。
私の経歴をさかのぼっていくと、マイクを持つ最初の仕事は結婚式の司会でした。その頃、たまたま受けたラジオのリポーターのオーディションに合格。そして、もう30年前の話になりますが、九州・山口では初めてだった娯楽的要素の強いテレビの情報番組を担当することになりました。
──どのような番組だったのですか。
私が最初に担当したのは、深夜帯に放送される大学生向けの情報番組。だから、本当に娯楽要素が強くて、大学生の告白コーナーとか恋愛コーナーがあったり、大学の寮にお邪魔したり、街角で女子大生にインタビューしたり……。いまでは放送できないようなこともやっていましたね(笑)。
──そのような番組になぜカヨさんが抜擢されたのですか。
当時はタレント事務所なんてない時代。こういう番組が始まるにあたって、ラジオ局の人が「誰かおもしろそうな人いない?」と人材を探していたようですね。私がラジオのリポーターをやっていたために抜擢されたようです。全盛期の頃は、講演会やイベントの司会などで大学に行くと、100%といっていいほど私のことを知ってくれていました。
福岡のほど良い都会感と田舎感
──『ドォーモ』や『ナイト・シャッフル』といったローカル情報番組でも長年にわたって活躍されています。東京への進出は考えなかったのですか。
確かにそういったお話もありました。ただ、私は全国区にまったく興味がなかったんです。その一方で、現在、全国で活躍している博多華丸・大吉の二人を見ていると「良かったな」と思います。実は、彼らとも一緒に番組をやっていたことがあります。当時は、収録でタレントさんたちをうまく回したりリポートしたりすることがちょっと苦手だったようですね。でも、彼らが「いま、あのときの経験が役に立っています」と言ってくれ、うれしい気持ちになりますね。
──やはり福岡は離れたくない場所ですか。
福岡を1週間以上離れたことがないので、井の中の蛙のような部分はあるかもしれません。でも、ここに長く住み過ぎている分、ここよりも魅力を感じる場所や行きたいと思う場所はありません。というよりも、もしかしたら福岡から出ることへの恐怖があるのかもしれませんね。ゼロから人間関係を作るなんて、かなりの情熱が必要になるじゃないですか。そこまで情熱を燃やしてほかに住みたいという気持ちがなかったのだと思います。私の身の丈でちょうどいいのが福岡なんです。
──福岡にはどんな魅力があると思いますか。
ほど良い都会感と、ほど良い田舎感がありますね。市街地はそれなりに都会ですが、そこから車で1時間も行けば、山も温泉もある。夕方、仕事が終わってから、「ちょっと温泉に行こうよ」と温泉地まで行って帰ってきて、それでも夜中の12時にはもう寝られます。東京では考えられない感覚だと思います。
テレビ・ラジオからネットテレビの世界へ
──そんな福岡に根を張り、誰もが知る存在としてテレビやラジオで活躍し続けてきたわけですが、7年前からはインターネットテレビ局も新しくスタートしたそうですね。
長くテレビやラジオに関わってきた私は、ネット否定派でした。なんとなく“幻”の世界のような気がしていました。しかし、「これからはテレビを持ち歩く時代になる。ネットはやった方がいい」というアドバイスをいただきました。山口県出身のロンドンブーツ1号2号の淳くんにも「絶対やった方がいい」と言われました。ネットを否定するにしても、やっていないうちから否定していたら、「できないから否定しているんだ」と言われるでしょう。だからこそ、やってみよう、と決意したんです。
──テレビやラジオと比較して、ネットでの伝わり方や反応などに違いを感じますか。
いまはコンプライアンスが厳しくなっていますが、当時はテレビもラジオもやりたい放題だったので、多くのクレームがありました。でも、プロデューサーには「クレームが多いほど視聴率が上がるから心配するな」なんて言われていましたね。
いまはネットで若い世代とも一緒に仕事をしています。最初はニコニコ生放送からスタートしたので、若い子たちからはけっこうひどいと思うようなダイレクトな意見も受けました。でも、その表現の仕方がその世代にとっては正当で、それを不愉快に感じるのは単なる価値観の違いかもしれない、とも思うようになりました。だから、ネットに進出することで自分の感性や固定概念を打ち破られたという感じがあります。
「こうあるべきだ」と若い人にも考えを押し付けるのではなく、「ちょっと考え方が違うだけだな」「これは抑えつけちゃいけないな」と一歩ひく。インターネットテレビ局で地方創生のお手伝いなどもしているのですが、若い世代だからこそ持つ熱い思いにフタをしてはいけない。若い人たちにやりたいことをやらせることができる地域は、やはり人口も減らないし、地域も育っていっているような感じがします。
──若い世代の気持ちを受け入れることで、ネットへの移行も成功したわけですね。
結局、テレビもネットもどちらも“幻”。私はもともと幻の中で生きているんだなと思いました。ネットにはメリットもデメリットもありますが、インターネットテレビ局を利用して行動範囲が広がった方はたくさんいるのではないでしょうか。
障がい者支援と地域創生がテーマ
──そして現在、インターネットテレビ局『バーター☆ビレッジ』を主宰されています。どのようなテレビ局なのでしょうか。
「バーター」とは、「持ちつ持たれつ」というような意味があり、情報の拡散をテーマにしています。視聴者が見るだけでなく、自由に情報を発信できる動画配信のテレビ局です。頑張っているアスリート、障がい者、お店を経営している街の人々など、みんなが地域の言葉で話して情報を伝えていく。電波の中のビレッジ(村)のような感じでいろいろな情報を共有できたらいいなと思って活動しています。
九州のローカル情報が満載の『バーター☆ビレッジ』
──具体的にはどのような内容の動画があるのでしょうか。
主に、障がい者支援や地域創生がテーマとなっています。九州ローカルの情報を中心に、幅広い世代の視聴者が楽しめるよう、グルメ、観光、スポーツ、ビジネス、アイドル、音楽、ファッション、ギャンブル、サブカルチャーなどさまざまなジャンルの番組をお届けしています。
──障がい者支援については、始めるきっかけがあったのでしょうか。
デフリンピックというろう者のオリンピックがあるのですが、12年前、その日本代表のバスケットボール選手に出会ったことがきっかけです。彼が、「カヨさん、いつも見ていますよ」と話しかけてきてくれました。私が彼に「頑張ってね」と言ったとき、ちょっと暗い顔をしたんです。彼は、デフリンピックに参加するための資金の調達に悩んでいました。当時、デフリンピックは国から出る予算がまったくなく、全部自腹だったそうです。そこで、私のホームページのスポンサーの方々に協力の依頼をしました。その後、番組も作りました。いまでは、番組制作者や出演者に障がいを持ったメンバーも増えていっています。しかし、NPO法人などを設立しているわけではないので、みんな自己管理で番組を制作しており、私はできる限りの支援を続けていくという形をとっています。
──そのほか、なにか活動をしていますか。
カヨリンピックというボーリング大会を毎年開催しています。約50人ずつの健常者vs障がい者で試合をするんです。ハンディもなし。これまで7回開催したうちのほとんどが、障がい者が優勝しているんですよ。もうひとつ、文化交流イベント行っています。脊髄損傷したにもかかわらず、素晴らしい動物の絵を描く少年がいるんです。彼は「個展を開きたい」と話していました。そこで、お父さんとお母さんに「個展を無料でやったらだめですよ、とりあえず作品を集めましょう」と、スポンサーにも声をかけて個展開催を実現しました。いまでは、運送会社の方々の協力を得て、障がいを持つ子どもたちの絵をトラックに積んで移動する移動美術館も運営しています。
バータービレッジのオフィスにある脊髄損傷した少年が描いた絵。カヨさんの動物占いは「トラ」だそう
──地域創生の取り組みについても教えてください。
地域創生に関しては、何をしているというほどのことでもないんです。街の方々が、「お祭りがあるから、カヨさんのSNSで紹介してもらってもいいですか」などと相談に来ることがあるんです。もちろん私も紹介しますが、「自分たちでもフェイスブックでアカウントを作って発信するといいんじゃない?」といったアドバイスもしています。自分たちで取材をして、自分たちで写真や記事をアップしてもらう。それを私もシェアするという形です。バータービレッジでも、このようにして出会った人々と「こんなことがやりたいんですよね」といったアイデアが出たら、それを広げていく番組を地道に作っているという感じです。相手の方に「出会って良かった」と思ってもらえるように動いています。
──福岡でのビジネスも視野に入れている、賃貸住宅オーナーやビジネスパーソンにアドバイスをお願いします。
たとえば、アジア展開を考えているビジネスマンは、福岡を中継点に置く方も多くいらっしゃいます。福岡からであれば、東京に行くのも上海に行くのも同じくらいの距離ですし、韓国なら船で2~3時間です。旅行でも、東京よりも中国や韓国に行く方が安いんです。それから、福岡は食を通してコミュニケーションが成り立つ場所だと思います。“観光”という意味ではあまり自信がないのですが、食に関してはみなさんに喜んでいただける場所がたくさんあります。最後に人付き合いですが、福岡の人はおせっかいな部分も持っている人も多いので、心を開けば深い付き合いができるはずです。しかし、そこまで干渉してほしくないと思えば、その気持ちを読み取ってくれる人も多いと思います。その点では生活もしやすいのではないでしょうか。都会感と田舎感がちょうどよく融合されており、頑張ることもできる、頑張り過ぎないこともできる。福岡はほどよくビジネスができる場所だと思います。みんな、福岡へ来てみんしゃい!
【プロフィール】
山本 カヨ(やまもと かよ)
有限会社バータービレッジ 代表
福岡県出身。テレビ司会者やコメンテーター、タレントなどとして福岡を拠点に活動する。2013年4月、自由に情報を発信できるインターネットテレビ局を開局、2019年に『バーター☆ビレッジ』としてリニューアル。グルメや観光、スポーツ、ビジネス、アイドルなどさまざまなジャンルの番組を配信し、障がい者支援や地域創生の一翼を担っている。
この記事を書いた人
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