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中区栄(名古屋市) 明治40年創業 伏見に『大甚』あり

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2019/12/05

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尾張徳川名古屋城下「伏見」

そこは名古屋城南側に碁盤割(商人地)が整備され商人が集まる町として始まった。1660年 「万治の大火」に見舞われその7割が消失してしまったが、その教訓から道幅を広げ、延焼を防ぐ防火帯(火除け地)を整備した、その通りが「広小路」。時代が変わっても道幅は当時と変わらない25mである。その碁盤割、最南に位置するのが 「伏見」。地下鉄が走り、街並みは金融・オフィス街に様変わりしている。「伏見」駅より徒歩0分圏内にあるのが創業明治40年の『大甚 本店』である。 

100年以上の歴史を持つ居酒屋 『大甚 本店』

大甚の創業は伏見ではなく別の場所だったが、先代が名古屋の発展、未来を見越して昭和29年に現在の場所に移転してきている。明治40 年からすると昭和29年は最近のような感覚に陥るが、それでも伏見に店を構えて65年。周りは近代的なビルしかない中、ここ大甚は1軒だけタイムスリップしたような店構えである。 

郷に入れば郷に従え店の決まりごと、楽しみ方

暖簾をくぐるとまずは大きな酒樽が目に飛び込んでくる。女将が注文順に樽から徳利に手際よく注ぎ常温・熱燗に分けて客に手渡ししているではないか! 客は徳利片手に列を乱すことなく行儀よく並んでいる。酒の配給じゃあるまいし、常識が通用しない空間に飛び込んだと痛感。

大将に案内され檜一枚板8人がけのテーブルに座る。品のよい年配の客と仕事帰りの上司と部下が並び、すでにいい感じで呑み食べ尽くした残骸がテーブルに載っている。一見、ひとりだとかなり勇気がいる席に座ってしまった。さて、ここからどうすれば……。

注文はすべて自分で賄う

まずメニューが無い。その代わり店舗中央に所狭しと並ぶ酒の肴。店のスタッフは生麦酒の注文を取った後は近づいてこない。麦酒を流し込みながら店内の動きを把握するために人間観察……。なるほど、自分のペースで好きなことができる仕組みにやっと気付く。つまり主役は「自分」である。そうと分かれば席には座っていられない。

職人技が光る「美味しい食祭」

魚介・野菜・焼き・煮物。まるで祭りを観ているようだ。そんな中から視覚嗅覚に委ね「黒豆」「焼たらこ」「穴子煮」を選択。それらをテーブルに運ぼうとしたところ、「素手じゃなくお盆を使いな!」と大きな声で大将に指南される。デビュー戦は勝手が分からない。

黒豆――素材が持つ甘味を引き出すための 絶妙な煮方と出汁加減がいい。ひとりSNSかのごとく自然に体が「いいね」する。

穴子煮――甘味旨味が凝縮され、口の中は穴子一色。口の中で溶けていくふっくらふわふわ感は至福の逸品。あー穴子! 見渡せばどのテーブルにも穴子は踊っている。 

焼たらこ――甘味から180度転換する塩味。

「あっ、女将の列に並ばなくては」と再度席を立ち、賀茂鶴一合の熱燗をみずから運ぶ。吟醸醸造だからすっきり呑め、焼たらこの塩味を引き立たせる一杯。否、日本酒の切れ味を引き立たせるのが焼たらこか。まさに鶏か卵かの世界である。

近隣の柳橋中央市場から毎朝仕入れ、毎日仕込む大甚。品数は50種以上、売り切れ閉店、残り物は次の日出さない。それが人気の所以なのであろう。

最後の会計は席で。皿の形で値段が決まり、野菜は250円〜、魚は350円〜。大きな算盤で計算するのが味わい深い。また名古屋に飛来したならば、必ずその暖簾をくぐろう。 

今回お邪魔した美味しいお店:『大甚 本店』
住所:名古屋市中区栄1-5-6
交通:地下鉄伏見駅前徒歩0分

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この記事を書いた人

編集者・ライター

長年出版業界に従事し、グルメからファッション、ペットまで幅広いジャンルの雑誌を手掛ける。全国地域活性事業の一環でご当地グルメを発掘中。趣味は街ネタ散歩とご当地食べ歩き。現在、猫の快適部屋を目指し日々こつこつ猫部屋を制作。mono MAGAZINE webにてキッチン家電取材中。https://www.monomagazine.com/author/w-31nekoyama/

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