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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』現代的なタッチと瑞々しい主演者が見どころ(1/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2020/06/05

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日本映画製作者連盟によると、4月の映画興行収入総額は6億8000万円であった。昨年同月は184億6500万円なので約96%の減になった。この数字は現在の集計方法に改められた2000年以降、月別の興行収入としては最低の数字となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で映画館へ足を運ぶ観客が激減し、緊急事態宣言発令後は映画館が相次いで休館したことが要因だ。

それにしても、衝撃的な数字である。

大手映画興行会社でさえ経営は苦しいし、全国の独立系小規模映画館、いわゆるミニシアターは閉館の危機にさらされている。ミニシアターは拡大公開システムから弾かれがちな小品の公開を実現させることで、多様な映画文化を育んできた。そんな全国のミニシアターを応援しようと、映画監督の深田晃司や濱口竜介が発起人となって「ミニシアター・エイド基金」を立ち上げたところ、目標額を大きく上回る3億3102万5487円の基金が集まったという。これは国内のクラウドファンディング史上最高額で、コレクター数は2万9262人。プラットフォームを運営する株式会社MOTION GALLERYによると、集まった金額は118劇場103団体へ分配する予定で、分配額は1団体あたり303万円とのこと。暗い世相の中で聞く数少ない明るいニュースであった。

とはいえ、予断は許されない。緊急事態宣言の解除とともに映画館の営業も再開へと向かってゆくが、すぐに以前の状況へ戻るとは考えにくい。まず、映画館サイドの問題。各映画配給会社は緊急事態宣言が発令される前から徐々に新作の公開延期措置をとっており、ひと足先に営業を再開した映画館は、休館直前に上映していた作品の続映や旧作の再上映でしのぐしかなかった。しかも、今後は「三密」を防ぐために座席の間隔を空ける等の措置を講じ、入場者数を制限しなければならない。

そして、観客サイドの問題。緊急事態宣言後、私たちは様々なシーンでライフスタイルの変更を求められた。映画鑑賞のスタイルもそのひとつ。映画は映画館で見なければという生粋の映画ファンも、その思いを貫くことができなかった。だが、最初は不自由さを感じていた人々も、映画鑑賞の方法は多岐にわたっており、家庭でのデジタル配信やDVD、ブルーレイといったパッケージ鑑賞も悪くないという事に気付いてしまった。習慣を元に戻すことは容易ではないだろう。まずは、新作を公開しないことには始まらない。

緊急事態宣言終了後、最も早く拡大公開されるハリウッド・メジャー系新作は、ヴィン・ディーゼル主演のアクション映画『ブラッドショット』である。全国のイオンシネマの中ですでに営業を再開している劇場で5月29日公開。その後、営業再開する劇場へと徐々に拡大公開してゆく。

実はこの作品、アメリカでは3月13日に劇場公開されたが、国内の大半の映画館が休業となったため、3月24日にネット配信を開始した。通常のネット配信は劇場公開から2か月以上先に行うものだが、『ブラッドショット』は劇場公開からわずか11日後にアメリカ国内での配信をスタートさせている。新型コロナウイルスの影響による異例の対応であった。劇場の大スクリーンで楽しみたい作品だ。

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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