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相続した親の家・空き家売却の「落とし穴」 うっかりミスで所得税がウン百万円アップも!?(1/2ページ)

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2021/05/20

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イメージ/©︎ginasanders・123RF

「老後資金が2000万円必要だ」といわれる昨今、相続によって親の家を取得した場合も売却を検討する人も多いはずだ。

相続した家を売却すると、譲渡所得税など税金がかかる。その際の条件次第で「居住用財産の3000万円特別控除」や、「相続空き家の3000万円特別控除」などの税金の控除がある。しかし、ちょっとした“うっかりミス”で、とんでもない余計な税金を払うことになることがある。そのミスを防ぐには――。

まずやるべき手続きは「家の名義変更」

相続が発生し、売却の前にやっておかなければならないことは、「不動産の名義変更」と登記だ。これをやっておかないと売却はできない。また、これまでは売却しなければ、相続と住所変更の登記申請は任意だったが2024年をめどに義務化されることになった。

遺産相続の相続登記で必要な書類は、「登記申請書」や「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本」、「相続人の戸籍謄本と住民票の写し」。これに「登録免許税」(不動産の固定資産税評価額に0.4%かけた額を収入印紙で)を支払う。

また、相続人が複数いる場合は、全員が遺産分割に合意した「遺産分割協議書」も必要になる。

これらの必要書類を申請し、審査結果に問題がなければ、法務局から「権利証」にあたる「登記識別情報」が通知される。これは、相続後にまた登記する際も必要となるので、大切に保管しておきたい。

その家 いくらで買ったかの証明は

さて、取られなくてもよい税金が取られる原因になる“落とし穴”は、名義変更の完了後に潜む。

『厳しい税務調査がやってくる』(中央経済社刊)の著者で、41年間大阪国税局・各税務署で税務調査を担当した秋山清成税理士が次のように話す。

「大事なことは、親が家を購入した際の契約書や仲介手数料を払った領収書などを大事に保管しておくことです。買った本人は大事に持っているのですが、不動産を相続して、子どもは自分の名義になった場合、そういった書類をうっかり捨ててしまう人が多い。これは後で非常に困ることになるのです」

なぜか。例を挙げて説明しよう。

約30年前、親が関東郊外に一軒家を3000万円で購入。一人息子のAさんは同居を続け、両親が他界。遺品の整理を続け、不要と思われるものは処分してスッキリした。晴れて親の家を受け継いで名義変更を行い、相続登記が完了。Aさんは独身で、部屋の余る実家を売却して転居を考えた。建物自体に価格はあまりつかなかったものの、土地も広く駅から近かったため、不動産評価額は約2000万円になるのではないかと言われた。当然のことながら、不動産を売却して得た利益に対しては、所得税が課税される。

家の売値は「譲渡価額」、利益を「譲渡所得」と呼ぶ。住宅を購入した値段(手数料や印紙代などの税金も含む)から建物の減価償却費を引くと「取得費」となる。また、売却時に支払った仲介手数料や売主が負担した印紙税などは、「譲渡費用」だ。

「譲渡所得」は、「譲渡価額」-「取得費」-「譲渡費用」

に税率をかけたものが「譲渡所得税」として算出されるのだ。

税率は、物件の所有期間が5年を超えると、「長期譲渡所得」となり、所得税と住民税の税率を合わせて約20%、5年以内の場合は、「短期譲渡所得」として、所得に約40%を掛けた額が課税される。相続の場合の所有期間は、被相続人の取得時期が相続人に引き継がれる。 

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この記事を書いた人

記者・ライター集団

政治、経済、ビジネス、マネーなどさまざまなジャンルを取材、執筆活動を行っているフリージャーナリスト、ライター、カメラマンなどによる叶舎LLC.の取材チーム。

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