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なぜ無料の物件とそうでない物件があるのか

仲介手数料無料は本当にお得なの?

大友健右大友健右

2016/01/04

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お金がかかる賃貸契約の初期費用

 引越しにはいろいろとお金がかかります。敷金、礼金、仲介手数料など、初期費用は家賃の6~7カ月分とかなりの額になります。かつては、敷金や礼金は家賃の2カ月分というのが一般的でしたが、最近は礼金が必要ないなど初期費用を抑えた物件も多く出てきています。

 なかには、敷金は家賃1カ月分で1カ月のフリーレント(家賃が無料)付きなどといった「お得」な物件もあります。「仲介手数料ゼロ」を掲げた不動産仲介業者も多く出てきており、賃貸契約の初期費用はだいぶ安くなってきた印象があります。

 礼金なしや仲介手数料なしの物件を選べば、初期費用はかなり安くなるので借りる側にとっては魅力的な条件です。しかし、なぜほかの物件では払わなければならない仲介手数料が無料になるのでしょうか?

仲介手数料とは?

 仲介手数料とは、不動産仲介業者つまり不動産会社が、大家さんと部屋を借りる人の間に入って物件の紹介や賃貸契約などを行なうための手数料です。

 宅地建物取引業法では、仲介手数料の金額は、大家さんと部屋を借りるお客さんからの支払いを合わせて家賃の1カ月分と上限が決められています。つまり、お客さんが家賃1カ月分の仲介手数料を払えば、大家さんは仲介手数料を払わなくていいのが原則ですし、大家さんが0.5カ月分の仲介手数料を払えば、お客さんのほうは最大でも0.5カ月分を支払えばいいことになります。

 たとえば、家賃が6万円の物件で、大家さんが3万円仲介手数料を支払う場合、不動産会社が部屋を借りるお客さんからもらえる仲介手数料は3万円が上限ということです。

 ただし、これはあくまでも宅地建物取引業法の決まりであって、実際には、お客さんが仲介手数料を1カ月分支払っていても、大家さんも『広告費』という名目で家賃の1カ月分以上のお金を支払うことが一般的になっています。詳しくは後で説明しますが、ここでは不動産会社は賃貸物件を仲介することで、家賃2カ月分以上の報酬を受け取っているケースがあるということだけ頭のなかにいれておいてください。

仲介手数料が無料になる物件

 仲介手数料が無料になる物件はいくつかのケースがあります。

(1)貸主物件
 不動産会社が所有している物件を借りる場合や、大家さんと直接契約を結ぶ場合(貸主物件といいます)は、貸す人と借りる人の間に仲介業者が入らないので仲介手数料も発生しません。自分が所有している物件を直接、人に貸すときに、仲介手数料をもらうのは違反なので、物件情報に記載のある物件の所有者をきちんと確認するようにしましょう。

(2)大家さんが負担している
 物件の持ち主である大家さんは、物件にかかる固定資産税を払わなければいけませんし、建物の修繕代や管理会社に払う費用など、たくさんの費用を負担しなければなりません。ですから、長い期間、入居者が決まらず空室のままだと、大家さんにとっては出費がかさむばかりとなってしまいます。

 そうした場合、入居者を早く決めるために大家さんが仲介手数料を負担して、お客さんが仲介手数料を負担しないでいいようにするケースがあります。仲介手数料は家賃の1カ月分程度なので、何カ月も空室が続くよりは、仲介手数料分を支払ってでも早く入居者が決まるほうが大家さんにとってはプラスになるのです。

(3)広告費でまかなう
 契約が成立すると、大家さんは不動産会社に『広告費』という報酬を支払うことが一般的になっています。物件情報を公開したり、部屋の紹介を代理で行なってくれたりする不動産会社に、大家さんが『広告費』という名目で家賃1~2カ月分を支払うのです。

 これが先ほど触れた、お客さんが支払う仲介手数料の他に、大家さんも家賃の1カ月分以上のお金を支払うケースです。そうすると、不動産会社は、お客さんから1カ月分、大家さんから1〜2カ月分、合計で家賃2〜3カ月分に相当する報酬を受け取ることになります。

 先ほど、「宅地建物取引業法では、仲介手数料の金額は、大家さんと部屋を借りるお客さんからの支払いを合わせて家賃の1カ月分と上限が決められています」と説明しましたが、大家さんからは仲介手数料ではなく『広告費』を受け取っているので問題ないということなのです。

 つまり、仲介手数料が無料ということは、それと同じ金額を大家さんが『広告料』として不動産会社に支払ってくれているだけなのです。どうしてそんなことを大家さんがするかといえば、②と同じ理由で、早く入居者を決めたいからです。

(4)家賃や管理費に追加されている
 ここまでお話してきたように、仲介手数料が無料ということは、それに相当するお金が他のどこかから出ているということです。

 大家さんもボランティアで賃貸物件を持っているわけではありませんから、なかには、仲介手数料分の金額が、分割して毎月の家賃や管理費に追加されていることがあります。『仲介手数料無料』というのは初期費用を抑えたい人にとっては魅力的なポイントなので一見お得な気がしてしまいますが、長い目でみると相場より高い家賃を払い続けることになって損をする場合もあるのです。

 仲介手数料が無料になっている物件は、相場よりも家賃が高めになっていないか確認しましょう。管理費が相場よりも高い場合も注意が必要です。

初期費用を安く抑えられるがデメリットも

 ここまで見たように、仲介手数料無料といってもいろいろなケースがあります。お客さんの気をひくために、『仲介手数料無料!』という物件情報を出し、実際に話を聞いてみると「すでに契約が決まってしまったんです」などと言われ、他の物件を紹介されるなんてこともあります。

 また、初期費用をなるべくおさえたい場合に魅力的なのがフリーレント物件です。はじめの数カ月間、家賃が無料になる物件のことですが、こちらも注意が必要です。家賃が相場よりも高くなっていたり、高額な違約金が発生することも多いので、何かの事情で解約しなければならなくなった場合は、通常通り家賃を支払うよりも高くつくことになる場合もあります。

 物件の魅力的な宣伝文句を鵜呑みにせず、長期的に支払いが可能な適正な価格になっているのかを見極めるようにしましょう。

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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