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事故物件公示サイト運営者、大島てる氏に聞く(3)

【大島てる】事故の連鎖を招きかねない「脱法」リフォームを公開する!(1/2ページ)

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「突き当たりの物件」には要注意

——同じ物件で何度も事故が起こることがあると聞きましたが、そうした物件には何か理由があるのでしょうか?

大島:たしかにそういったヤバイ物件というものはあります。ただし、基本的には合理的な理由で説明できるものばかりです。

たとえば、風水で避けるべきとされている「突き当たりの物件」。こうした場所は、昔は馬が飛び込んでくるといわれていたのですが、いまは飛び込んでくるのが車なんです。一例をあげると、東京都大田区にある大森駅のすぐ近くの交差点。サイトで、大森駅を検索すると出てきますが、こういった場所ではT字路の正面にある建物に車が飛び込んでくるんです。このような場所はここに限らず、全国にあります。

 
出典/『大島てる』 「大森駅」で検索すると見ることができる

こうした場所は風水が盛んだった時代から嫌がられていますが、実は、現代でも嫌がられて当然な場所です。こうした突き当たりにあるお店にトラックが突っ込んできて、店員や客が亡くなった事故、運転手あるいは助手席に座っていた人が亡くなったという事故はたくさんあるのです。

多くの場合はスピードを出していて曲がりきれずに突っ込むのですが、なかにはドライバーが運転中に急病で亡くなったために、車がそのまま突っ込んでしまったというケースもあります。

不動産の観点からいえば、運転中に亡くなったか、事故の衝撃で亡くなったかはあまり重要ではなく、注目すべきは、もう一度、同じことが起こっても不思議ではないということなのです。なぜなら、立地に原因があるからです。ただ皮肉なことに、目の前が道路で見晴らしがいいですし、将来的に目の前に何か建物が建つことはない場所なので、不動産としては人気があるのです。

再建築できないから「柱だけ」を残してリフォーム扱いに!?


出典/『大島てる』 柱だけが残された台東区下谷の火事があった物件

——なるほど。事故が繰り返される物件は、その理由を合理的に説明できるのですね。

大島:もうひとつ、別の例をご紹介しましょう。場所は東京都台東区の下谷。ここは火事で人が亡くなっているのですが、火事があった家は公道に面しておらず、周りは住宅に囲まれていて、一見、いったいどこから入るのだろうと考えてしまうような場所にあります。

その答えとしては、細い路地を入っていかなければならないのですが、消防車も救急車も入れないような場所に家が建っているわけです。その結果、消火活動さえできれば、小火で収まるような火事であっても、死者が出るような火事になってしまう。

建築基準法にしたがえば、ここには家を建ててはいけないはずなのです。ですが、昔からある家は既存不適格、つまり家よりも法律のほうが後からできたからということで特別扱いされているわけです。

そうすると何が起こるかわかりますか?

サイトには黒っぽい柱だけが残っている状態の写真を掲載しているのですが、この写真にある柱は火事の後の残置物ではないのです。どういうことかというと、「柱だけを残してリフォームをしています」ということにしているわけです。建て替えではなく、もともとあった家をリフォームするという解釈ですから、これで建築確認を得ようとしています。

そもそも危険だからここには家を建ててはいけない、すでに家が建っている場合はいいけれど、再建築は不可だということになっているのにもかかわらず、このような脱法行為ともいえるやり方でまた家を建ててしまったら、もう一度同じことが起こってもまったくおかしくないわけです。実際には、この場所で複数回の火事があったわけではないのですが、私の目から見ればやはり危ないなと思います。

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