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家賃の安さが魅力 「駅遠物件」を探すとき気を付けておきたいこと

朝倉 継道朝倉 継道

2021/06/21

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イメージ/©︎imagepocket・123RF

コロナに圧され市場ニーズが郊外化?

新型コロナウイルスによる「コロナ禍」によって、市場ニーズの郊外化が一部で生じているといわれる現在の首都圏賃貸住宅市場。

なお、ここで「首都圏」と区切るのは、その他の地域では同様の動きがいまのところ見られないともされているからだ。

ともあれ、少なくとも首都圏賃貸市場に限っては、ニーズの郊外志向は、規模はともかく、たしかに起きている現象ではあるようだ。

テレワークやオンライン授業の拡大による通勤・通学頻度の低下や、収入の減少を受けての低家賃エリアへの“避難”といった理由から、「より都心に近く」「より駅に近く」と、いった物件選びのモノサシを見直すことになった人は、おそらく少なくないのに違いない。

そこで、この記事では、これから「駅近」物件ではなく、駅から遠い「駅遠」物件を探そうとする人へ、いくつかアドバイスを伝えたい。

「駅近で検索すると、築年が古くても家賃がさっぱり下がらないが、徒歩15分~20分と、駅から離れていくとグッと下がる。でも、周りにお店も無いだろうし、生活はかなり不便そうだな……」

そんな想いで、いま不動産ポータルサイトの画面を眺めている人のために、以下5つのヒントを捧げたい。

実は駅前よりも便利なケースもある

例えば、東京都心のターミナル駅から電車で20分くらいの街の駅前を想像してほしい。駅の周りこそ店も多く賑やかだが、そこから歩き始めると、4~5分も過ぎた頃には周囲は住宅地に。10分も過ぎれば景色はかなりのどかに。場所によっては畑や田んぼも現れ始め、いかにも買い物など不便そうな郊外の雰囲気だ。

ところが、そんな家並みをさらに進んでいくと、いきなり様相が一変することがある。複数の大型スーパーや、レストラン、ホームセンター、ファストファッション、大型100円ショップなど、便利な店がずらりと居並ぶ街が、忽然と現れることがある。

そう。そこはすなわち、街道沿いのロードサイド店舗の集中するエリアなのだ。ひょっとすると、郵便局や、歯科などのクリニック、役所の出張所まで揃っているなど、「駅から都心への通勤の便」という条件さえ除けば、ヘタな駅前よりも格段に便利だったりする。

こうした状況は、過去は地元の人以外なかなか知ることができなかったが、いまはGoogleマップがあるので手に取るように把握できる。

ちなみに、私はそんな街道沿いのロードサイド店舗の集中するエリアに隣接する住宅地に、3年ほど暮らしたことがある。

複数の大型スーパーや、ホームセンターなどの存在によって、日常の利便性は、それ以前に暮らしていた「東京都心のターミナルから2駅目&駅徒歩4分」という便利な場所と、ほとんど変わらなかった。

もっとも、こうした街は、つくりが自動車向けのサイズになっている。少なくとも自転車が、必須のアイテムとなる。

広告には「徒歩20分」とあっても1~2割増しは覚悟

次は、ネガティブな話になる。駅遠物件を探すプロセスで、特に気を付けておくべきことを伝えたい。

それは、「物件広告に載っている駅徒歩分数が大抵あてにならない」ということだ。物件が駅から遠ざかれば遠ざかるほど、その傾向が増すことを知っておいてほしい。

なぜなのか? それは、不動産広告における「駅徒歩分数」が、地図上の道路距離によって決められることによる。(道路距離80m=1分・端数は切り上げる~「不動産の表示に関する公正競争規約」)

想像してみてほしい。街中やその郊外では、人が歩く道路にあっては、進めば進むほど車道を渡る回数が増えていく。

すなわち、付随して横断歩道が増える。さらには信号も増えるというわけだ。

なので、徒歩分数20分程度が広告に示されているような距離だと、大抵、幾度かは途中で信号待ちをすることになる。

場合によっては、踏切や歩道橋、地下道、広い車道を跨いでの横断歩道への迂回といったものにもひっかかる。

そのたび、タイムロスが生じ、たとえば広告では徒歩18分と表示されているものが、現実には「20分を切ることなんてほとんどない。ヘタすりゃもっとかかる」といったケースがあり得るわけだ。

なお、広い道路や線路などに突き当たっての、横断歩道や歩道橋、踏切などへの迂回経路については、広告上、正しくは道路距離に加えなければならない。

だが、そうせずにサバ読みしている例も、残念ながらよく見られる。

坂も徒歩分数には考慮されない

同様に、駅遠物件で「こんなはずでは……」が起きる原因のひとつが、坂の存在だ。


物件探しにおける意外な落とし穴「坂道」 写真はイメージ/©︎123wawa・123RF

先ほども述べたとおり、不動産広告における駅徒歩分数は、地図上の道路距離換算で決められる。すると、地図は立体ではない。当然まっ平だ。坂は考慮されない。

そのうえで、「坂」もまた、エリアによっては信号などと同様、物件が駅から遠くなればなるほど、途中に存在する可能性が高まってくることに注意が必要だ。

駅遠物件では、自転車が日常生活に必須なことも多いが、坂はその際に大きな障害ともなる。

郊外に多い「騒音源」を見逃すな

もうひとつ、これも駅遠物件を探すときはぜひ気を付けたいリスクのひとつだ。それは、駅遠物件では、そばに耐えがたいレベルの恒常的な「騒音源」が存在することがたびたびあるということ。

代表的なものが、工場や流通施設、さらには大型幹線道路などだ。

「いくら駅遠といっても、事故物件でもないのに10部屋あるうち6部屋が空室のアパートって、どういうこと?」

そう怪しんで現場に行ってみると、物件の真裏に建つ工場が、朝から晩まで猛烈な機械音を響かせていたというのは、私がかつて賃貸仲介会社を営んでいた頃に、実際に経験したことだ。

もちろん、駅近は駅近で、建設工事や道路工事の騒音、夜の酔客の声などに悩まされることも多い。が、それは恒常的ではなく、一過性のものであることがほとんどな点が、駅遠物件とのよくある違いだ。

季節を感じながら暮らせる郊外駅遠物件

最後に、ポジティブな話に戻ろう。

駅遠物件も駅近物件も、どちらにも暮らしたことがある私が、実際にもっとも大きく感じた両者の違いといえば、それは季節感となる。

空が広く、緑も豊富な環境にあることが多い駅遠物件では、季節の移り変わりがつねに身近に感じられやすい。

すると「そんな程度のメリットか」と、思う人がいるかもしれないが、ちょっと想いを巡らせてみてほしい。

例えば、春の花々や、夏の空をうずめる入道雲、秋の舞い散る落ち葉を自分は一生のうちあと何回見ることができるのかを考えてみたとき、そのときどきの貴重さ、希少さが、輝かしく感じられてはこないだろうか?

私は、さきほどふれた駅遠物件に3年ほど暮らした際は、地元のコミュニティに飛び込み、冬は週一で「火の用心」の夜回りもさせてもらった。

夜空に星座が輝く下で、ご近所の人たちと共に歩き、熱いお茶で労をねぎらい合った思い出は、多分一生のものだろう。

 

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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