住宅ローンで生活が苦しい! そんなときはどうすればいい?
牧野寿和
2017/10/10
なぜ住宅ローン返済で生活が苦しくなるのか
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「住宅ローンの返済中だが、生活が苦しくなってきた。どうしたらよいか?」と相談にいらっしゃる人がいます。なぜそのような状況になってしまったのか、ほとんどの人に共通した原因は大きくふたつあります。
ひとつは住宅ローン返済が始まってからの家計の支出額が、“住宅購入時に想定していた金額よりも大きくなってしまった”こと。そしてもうひとつは、”貯蓄をしていないため、現金のストックがない”ということです。
そこで、住宅ローンの返済中、どのようなときに生活が苦しくなってしまうのか、また実際に苦しくなってしまった場合の対応のしかたを、具体的にまとめてみました。
返済が苦しくなる可能性は誰にでもある
たとえば【フラット35】の融資を申し込む場合、その審査の基準のひとつに、「返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)」というものがあります。
詳細は省きますが、返済負担率が、年収400万円未満の方の場合は30%以下、年収400万円以上の方の場合は35%以下であり、金融機関の審査に通れば、借り入れすることが可能です。
もし、返済負担率の上限35%で融資を受けたならば、家計の支出のうち35%がローンの返済のみに毎月家計から出ていくお金になるということです。
たとえば、額面年収が500万円の方の毎月の収入は、500万円÷12カ月=毎月約41万円(ボーナスは考慮せず)となり、手取り額では35万円くらいです。
この方が年収の35%の借り入れをするなら、諸経費などは考慮せずに年間175万円。月にすると約14万5千円まで融資が受けられます。
「35万円(毎月の手取り額)-14万5000円(毎月の返済額)=20万5000円」ですから、極端な例ではありますが、収入が増えなければ毎月20万5000円で生活をしていくことになります。
この額が、将来の生活をしていく上で妥当な額かどうかは、個々の生活に沿ったシミュレーションをしてみないと結論は出せません。
しかし、シミュレーションをせずに「なんとかなる」と半ば見切り発車のような形で借りてしまった人のなかには、当初の返済は問題なくても、将来、子どもの教育費などでお金がかかる時期になると、返済が苦しくなってしまう場合があります。
将来の生活に必要なお金がどれくらいになるのかを考慮せず、容易に融資額を決めてしまうと、将来、誰にでも返済が苦しくなる可能性はあるのです。
返済が苦しくなる典型的なケースとは?
では、具体的に返済期間中にどのような場合、返済が苦しくなるのでしょうか。7つの典型的なケースをみてみましょう。
・ケース1:勤務先の収入減少
勤め先の業績が悪化し、返済資金として考えていた残業手当やボーナスが削減、もしくはゼロになった場合
・ケース2:パートナーの収入減少
妻の収入をあてにしていたが、産休や育児休暇などで妻の収入が減ってしまった場合や、出産以前は正規社員だったが出産後は契約社員になったなど、雇用の形態が変わったために収入が減った場合
・ケース3:介護費の負担
地方に住んでいる親の介護などが必要となり、その介護費用や交通費など、思わぬ出費が必要となった場合
・ケース4:定年後のローン返済
住宅の購入費が膨らんで、定年退職後も返済が続く住宅ローンを組んでしまった場合(定年退職後は、現役ほどの収入がないのに現役時代と同額の毎月の返済では苦しくなります)
・ケース5:教育費の負担
子どもが高校、大学と進むにつれて、私立に通うことになったなど、想定していた以上に教育費が必要となった場合(デフレの時代から教育費だけは、毎年0.7%前後で上昇し続けています)
・ケース6:管理費、修繕費等の負担
購入したマンションが老朽化し、住民の減少などによる管理費などの値上げがあった場合。また大規模修繕のための修繕積立金に不足が生じてしまい一時金の負担が必要となった場合
・ケース7:貯蓄ができない
貯蓄額を考えずに住宅ローンを組んでしまい、住宅購入前までは貯蓄に回していた額もローンの返済に消えてしまう場合
特にケース7は重要です。ケース1から6のような事態に陥っても、それまでにローン返済をしながら貯蓄を続けてきていれば、当面の返済を続けながら対策を考え、事態を乗り切れる場合は少なくありません。
しかし、貯蓄額を考えずに住宅ローンを組んでしまった場合には、住宅を購入するまでは貯蓄に回していた金額もローンの返済に組み込まれてしまい、貯蓄ができなくなってしまいます。
住宅を購入するまでは貯蓄ができていたわけですから、すでに貯蓄をする習慣をお持ちのはずです。ですから、貯蓄額は減っても、万が一、生活が苦しくなったときに備えるためにも貯蓄を続けていただきたいところです。
年収が高くても生活が苦しいのはなぜ?
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上述のケースを見ていただければおわかりかもしれませんが、ローンの返済で生活が苦しくなるかどうかは「返済負担率」が問題であって、年収の多い少ないはあまり関係ありません。
年収が高い人でも「返済負担率」が高ければ、当然、生活は苦しくなります。また、ローンの返済以外の支出が大きければ、やはり生活は苦しくなります。
実際、年収の高い人のなかでも生活が苦しいという話をよく聞きます。たとえば、年収1000万円の人は、年収500万円の人より手取り収入は多いのですが、年収が倍だからといって手取り収入が倍になるわけではありません。収入に応じた所得税や住民税の負担があるからです。
それにも関わらず、私が知る限りでは、年収1000万円くらいの家庭の中には、ブランド力のある高級住宅に住み、その環境に合わせて高級な車や家具、服を購入したり、子どもを義務教育の時期から私立の学校に通わせたりするなど、相当家計の支出に無理があり、貯蓄ができない家庭も少なくありません。
日常の生活に無理のある家庭で、20年、30年と長期間にわたり住宅ローンを払っていくこと自体に無理があることは一目瞭然ではないでしょうか。
一方、同じような収入があっても堅実な生活をされている人もいます。私のお客さまのなかには、年収は1000万円以上あっても、堅実に貯蓄をされて、年収500万円の人と同程度の支出額で生活をしている人もいらっしゃいます。
あるお客さまは、返済期間20年の住宅ローンを組んで住宅を購入されましたが、10年で完済されました。
年収が高い人はどうしても生活水準を上げてしまい、支出も大きくなりがちですが、堅実な生活水準を保つことの大切さをおわかりいただけるのではないでしょうか。
もし返済が苦しくなったらどうする? 相談先は?
では、もし返済が苦しくなったらどうしたらいいのでしょうか。その時には。躊躇することなく行動することが大切です。なぜなら時間が経つほどご自身にとって不利な立場に追い込まれてしまうからです。
まず、融資を受けている金融機関に相談をすることです。自宅を売却しなくてはならいないほど事態が深刻化した場合は、弁護士などの専門家に相談をすることも必要となりますから、そうなる前にまずは金融機関と相談することをおすすめします。
では具体的に、どのような解決策があるのでしょうか。金融機関により対応が異なりますし、ご自身の置かれた状況によって取るべき対策も違ってきますが、主に次の3つの方法があるとお考えください。
<方法1>融資先の金融機関に、一定期間ローンの返済額の軽減を交渉する
本人が病気やケガで収入が減ったり、家族の入院などで支出が増大したりする短期間のみ、月々の返済額を軽減してもらう方法です。軽減期間が終了した後は、従来の返済額に、「軽減期間中に軽減された額+金利」の返済が加わります。
<方法2>融資先の金融機関に、返済期間の延長を交渉する
現在の返済期間を、例えば残り15年から25年に延長してもらう方法です。毎月の返済額は少なくなりますが、返済期間が延びる分金利の負担総額は増えます。
<方法3>自宅を賃貸に出す
自宅を賃貸に出して、その家賃収入をローンの返済にあてる方法です。原則として住宅ローンが残っている自宅を賃貸に出すことはできませんが、融資を受けている金融機関に相談をして、自宅を貸すことができる場合もありますので、まずは相談をしてみてください。
そのほかにも、マイホームを手放すことにはなりますが、「任意売却」といって融資を受けている金融機関の許可を得て、ローンが返済できなくなり金融機関が強制的に「競売」かけるより高い金額で売却し、そのお金で残債を完済することも選択肢のひとつです
将来の不安をなくすためにやっておくべきこと
「なんとかなる」と安易に考えてしまい、将来、家族にとって必要なお金がどれくらいになるのか、資金計画を立てずに住宅を購入された方は、今のうちに手を打っておくことをおすすめします。
具体的には、早急にファイナンシャルプランナーなどの専門家に、返済期間中はもちろん、返済後の生活についても、安心して生活を送るために、いまのうちにやっておくべきことはないか、客観的なアドバイスを受けましょう。
また、住宅ローンの返済期間中は、
・今後の家計の支出全体の見直しや、節約の余地がないか
・現在の住宅ローンの残高と金利
・現在の住宅の資産としての市場価値
といった点を常に確認しておきましょう。
そうすることで、住宅ローンの返済中のリスクに備え、万が一のことがあったときにでも冷静に対応策を講じることができるはずです。
今一度、家計を見直して、必要があれば返済計画の見直してみてはいかがでしょうか。
情報提供元:アルヒマガジン( https://magazine.aruhi-corp.co.jp/ )
記事名:「住宅ローンで生活が苦しい! そんな時どうすればいい?」( https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-0766/ )/
(元記事公開日 2017/02/22)
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この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。