住宅ローン審査では、申込者の収入と信用をどうチェックするのか
牧野寿和
2016/08/23
信用度はどう審査されるのか?
住宅ローンは、申込者本人の信用をメインに、物件の「担保価値」を考慮して審査が行なわれます。また、完済時に何歳になっている予定かという年齢の問題や、健康状態も重要です。これらのほかにも審査の成否を握る鍵はいくつかあります。
「頭金ゼロ」すなわち100%ローンに成功するには、貸す側の考え方やルールをよく理解し、できる限り減額の対象となる要素を事前に排除しておくことが大切です。
申込者本人の信用度はどのように審査されるのでしょうか。それは、一言でいってしまえば「収入の安定性」につきます。そのため、働き方の違いなどにより、審査基準や条件に違いがあります。
〈会社員など給与所得者〉
・同じ正社員であっても、勤務先の規模が大きいほうが、収入の安定性が高いと判断されて審査に有利です。転職直後は審査が厳しくなり、転職してから1〜3年以内の場合は認めない、もしくは3カ月以上の給与明細の提出等が必要なところもあります。歩合制の場合、歩合給の割合を確認されることがあるほか、確定申告を行なっている場合、自営業者扱いになることもあるので注意が必要です。
・契約社員や派遣社員の場合、勤続年数1〜3年以上であることなど、条件つきで認めている金融機関が多いようです。ただし、収入を年収の6〜8割として扱うところも少なくありません。
・パートやアルバイトは原則不可です(少数ですが認めている金融機関もあります)。
〈自営業者(個人事業主・フリーランス)〉
・事業開始から原則3年以上経過していること。
・判定基準は「収入」ではなく、経費を差し引いた後の「所得」です。そのため、節税対策が不利に働くこともあります。ただし、青色申告特別控除額や専従者給与額については所得に加算して判定されます。
・直近3年分の確定申告書(控)や納税証明書の提出が必要です。年度により収入の上下が激しい場合は、3年間の平均値、もしくは3年間で最も低い所得で判定されます。
〈会社経営者〉
・本人の収入のほか、会社の直近3期分の経営状態(決算書)により審査。3年間の平均値もしくは3年間の最低値で判定。仮に会社が赤字の場合、本人の年収から赤字分をマイナスするなどして、収入の実態とする。
転職や独立は住宅ローンを借りた後にする
以上のことからおわかりのように、もし現在、正社員として会社勤めをされているのであれば、通常は、転職や独立をする前に住宅ローンを組んでしまったほうが、審査に通りやすいといえます。
逆に給与収入がある程度あって、返済負担率をクリアしていても、勤務先の会社の経営状態がきわめて悪い場合、審査に通らないケースも実際にあります。複数の金融機関をあたってもダメな場合は、ある程度の頭金が用意できるまで待つか、早めに転職を決断するのも手です。
前述したように、転職後まもなくは審査に不利ですが、転職先が規模の大きな会社だったり、転職後の収入がアップしていたりする場合は有利に働くこともあります。
返せるローンは返しておく
もうひとつ審査のポイントとして気をつけたいのが、住宅ローン以外の借り入れです。ほかに借入額がどのくらいあるか、これまでの返済実績に問題がないかといったところが審査されます。
金融機関は住宅ローンの申し込みを受けると、信用調査機関に申込者のクレジットカードの返済状況や、カードローン、オートローンの利用状況を照会します。ほかからの借入額が多いと、住宅ローンの借入可能額を減額される可能性が高まります。ローン払いになっているものも含めて、返済できるものは返済してから審査に臨むようにしましょう。
なお、キャッシング枠は利用していなくても、「利用している」ものとして審査するところもあります。もし、普段使っていないクレジットカードがある場合は、解約しておくほうが無難でしょう。
また、過去5年間に返済延滞の事故情報があると、審査に通りません。事故情報とは、 最短で「返済日から61日以上、もしくは3カ月以上の支払いの遅延」があった場合です。 信用情報は個人でも「全国銀行個人信用情報センター」「シー・アイ・シー」「日本信用情報機構」などで照会できます(どこを窓口にしても同じです)。
ただし、照会回数があまりに多いと、何かトラブルを抱えているのではないかと疑われ、審査に悪影響を及ぼすことがあります。一度、照会すれば信用情報にキズがあるかどうかはわかるので、照会は最低限度の回数にとどめておきましょう。
このほか、個人情報には過去の勤務先も登録されています。勤続年数や転職歴もわかってしまうため、住宅ローンの申込書にはくれぐれも正しい情報を記入するようにしてください。
個人情報のキズに注意
ところで、こうした個人情報に、自分では気づかないうちにキズがついているケースもあります。
よくあるのは、以前契約していたけれど現在は使っていないクレジットカードの年会費などが、 メインバンクを変更したために、ほとんど残高のない通帳から引き落とされずに事故になっているケースです。
また、携帯電話料金の支払いも要注意です。多くの人は携帯端末の購入代金を、毎月の通話料とあわせて分割で支払う契約にしています。つまり、携帯端末の購入代金はローン契約になっているということです。そのため少額であっても滞納により、住宅ローンの審査に通らないというケースも実際に起きています。
思わぬところで不利な扱いを受けることのないよう注意してください。
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この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。