超低金利時代の住宅ローンは、【フラット35】がおすすめです
牧野寿和
2016/07/26
住宅ローンは「フラット35」と「民間ローン」に分けられる
住宅ローンの商品を大きく分けると、「フラット35」と「民間ローン」があります。「フラット35」とは、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して、住宅購入資金を貸し出す商品です。
金利や手数料は取り扱う金融機関によって異なりますが、最長35年の長期にわたり、全期間固定金利で提供されることが特徴です。また、長期固定ローンとしては金利も最低水準にあるといえます。
「フラット35」は現在、最大で購入する物件価格の100%の融資を受けることができるため、頭金ゼロで全期間固定金利を希望する人には魅力的な選択肢となります。ただし、過去には、借入可能額が90%に引き下げられた時期もあり、制度の変更には注意が必要です。
「フラット35」の金利は、融資額が90%以上の場合は高くなり、借入期間が20年以下の場合は金利が低くなります。さらに、省エネルギー性、耐震性などに優れた住宅を取得する場合に、金利を一定期間引き下げる「フラット35S」という商品があることも見逃せません。
「フラット35」のメリットとは?
民間ローンと比べた場合、「フラット35」の最大のメリットは申込要件が緩やかな点です。
まず年収については、返済負担率は定められていますが(年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下)、雇用形態や勤続年数を問われることはありません。そのため、転職したばかりの人や自営業の人などでも申し込みやすいといえます。
さらに民間ローンでは必須の団体信用生命保険への加入が任意のため、健康に問題を抱える人でも申し込みできます。万が一に備える場合は、住宅金融支援機構が用意している「機構団信」に別途加入し、借入残高に応じた特約料を年払いするシステムとなっています。特約料については、住宅金融支援機構のホームページでシミュレーションすることができます。
機構団信特約料シミュレーション
http://www.flat35.com/simulation_danshin/index.php
また、保証料が不要という金銭的なメリットもあります。保証人を保証会社ではなく、住宅金融支援機構が担うためです。
繰り上げ返済時の手数料が不要なこともメリットですが、返済の最低金額はインターネット経由で10万円から、金融機関の窓口経由で100万円からとなっています。民間ローンでは1万円程度から繰り上げ返済できるところが増えているため、この点はデメリットといえます。
「フラット35」を利用するには?
「フラット35」を利用するためには、対象となる建物にも条件があり、住宅金融支援機構が独自に定める技術基準に適合した物件であることを証明しなければなりません。
一戸建て新築の場合は、建築基準法に基づく検査済証の確認とともに、第三者である適合証明検査機関(または中古の場合は適合証明検査者も可)による物件検査を経て、交付される適合証明書が必要になります。検査費用は申込者が負担することになり、検査期間によって異なりますが、新築住宅の場合は2万〜3万円、中古住宅の場合で4万〜6万円くらいが目安です。
全国の適合証明検査機関は、「フラット35」のホームページで検索も可能です。独自に検査を依頼することもできますし、金融機関から斡旋を受けることもできます。
マンションの場合は、新築、中古にかかわらず、技術基準の適合証明書(=フラット登録マンション)を取得している建物なら、個人での適合証明書の手続きは必要ありません。新築マンションの場合は、販売会社に問い合わせればすぐにわかります。中古マンションの場合は、仲介をしている不動産会社の担当者に相談するか、住宅金融支援機構のホームページ内の「中古マンションらくらくフラット35」で検索することもできます。
中古マンションらくらくフラット35
http://www.flat35.com/f35ums/
民間住宅ローンのいろいろ
一方、民間ローンにはいろいろな商品があります。民間ローンを利用するのであれば、審査の通りやすさを優先するなら提携ローンを、金利や手数料などにこだわるなら非提携ローンのなかから、自分の条件に合ったものを探し出す努力を惜しまないことです。
いずれにしても、民間の住宅ローンは、変動金利型と固定期間選択型が中心となります。固定期間選択型には、固定期間が1年から30年のものまでありますが、低金利の対象となるのは、1〜3年といった短期固定の商品です。これらは借りたときは金利を低く抑えられても、固定金利の期間が過ぎれば、その時点の金利が適用されます。現在の金利を考えれば、将来、金利がこれ以上下がる可能性は低く、逆に上がる可能性のほうが高いと考えられるため、リスクが高い商品といえるでしょう。
将来の金利上昇リスクをヘッジし、返済負担を抑える手段として、金利ミックス型ローンを利用することもできます。金利ミックス型ローンとは、たとえば3000万円の住宅ローンを借りる場合に、2000万円を固定金利で、残りの1000万円を変動金利で借りるといったものです。
変動金利部分を早期に返済できる見込みが高いのであれば一考の価値はありますが、病気や怪我で働けなくなるリスク、想定外の出来事に大きな出費が必要になるリスクがあるなど、返済に絶対はありませんので、慎重な選択が望まれます。
そのほか、長期固定金利のフラットと民間ローンの固定期間選択型、変動金利型を併用する「フラット35パッケージ」という商品もあります。取り扱い金融機関によって細かな内容は異なりますが、物件価格の最大100%まで借り入れが可能になっています。また、併用する住宅ローンについても、フラット35と同様、職業、勤続年数などによる申込要件が設けられていない点はメリットです。
いずれにしろ、史上空前の低金利の恩恵を最大限に受けるには、全期間固定金利型の「フラット35」がいちばんのおすすめといえるでしょう。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。