「頭金」「手付金」「諸費用」を正しく理解しておこう
牧野寿和
2016/04/26
そもそも「頭金」とは?
突然ですが、みなさんに改めてお聞きします。
「頭金」とは何でしょうか?
また、「手付金」「諸費用」とはどんな費用なのでしょうか?
実は、この質問に自信を持って答えられる人は少ないのではないでしょうか。
頭金とは、自己資金(不動産購入に際して自分で用意できる現金)のうち、物件価格にあてられる部分のことです。つまり、「頭金=物件価格−住宅ローンによる借入金」という関係になります。
同じ3000万円の物件購入でも、500万円を頭金にする人もいれば、300万円を頭金にする人もいます。このことからもわかるように、基本的には「頭金がいくら必要」というルールはありません。頭金の額は絶対条件ではないのです。
頭金には、マイホームを購入する際にかかる諸費用は含めません。諸費用とは、不動産登記や住宅ローンを借りるための手続きなどにかかる費用のことです。
ここまでの話をまとめると、
「マイホームの購入費用=物件価格+手続きにかかる費用=頭金+諸費用+住宅ローン」
ということになります。
頭金と手付金は何が違うのか
また「マイホームを買うには、手付金が必要」だと耳にしている人も多いのではないでしょうか。手付金とは、売買契約の際に契約の成立を示す証拠金のようなもので、物件価格の一部を先払いするものです。
マイホームの購入は大まかに、「売買契約」→「住宅ローン審査」→「決済」の順に進んでいきます。この間、およそ2週間〜1カ月ほどかかります。
その間に、買い主に心変わりされてしまっては、売り主は困ってしまいます。そのため、買い主の都合で契約を解除する場合、手付金は解約金扱いとなり、全額が売り主の手に渡ります。
ただし、契約時に「ローン特約」をつけておくことで、住宅ローンの審査に通らなかったため契約できなかった場合には、買い主に全額返金される場合もあります。
契約に「ローン特約」が盛り込まれているかどうか、必ず確認しておいてください。
逆に売り主側もこの手付金によって、たとえばもっと好条件で物件を買いたいという買い主が別に現れても、手付金を支払った相手との契約を優先することになります。もし、売り主の都合で契約を破棄する場合は、買い主に手付金の倍額を支払わなければなりません。
何ごともなく契約に至った場合は、 手付金はそのまま購入費用にあてられます。つまり、最終的には頭金の一部となります。手付金は諸費用と違って、物件価格の支払いに加えて別途必要なお金ではありません。
諸費用も融資してくれる金融機関が増えている
マイホームの購入にあたって必要となる現金は、以上の「頭金」「諸費用」「手付金」の 3つです(厳密には、新居に必要な家具や電化製品の購入費用、引っ越し費用なども必要です)。
頭金については、前述のように必要額は決まっていませんから、住宅ローンで全額を賄えるならば、ゼロ円でも問題ありません。
諸費用の額は、物件の内容や借入金の額によって左右されますが、新築物件で物件価格の3〜7%、中古物件で6〜10%が目安です。諸費用は自己資金で用意するのが一般的ですが、住宅ローンに含めて融資してくれる金融機関も最近では増えています。
諸費用の内容については、別の記事(「FPが教える! 住宅購入の際にかかる物件価格以外の『諸費用』リスト」 http://sumai-u.com/?p=6558 )に詳しくまとめましたので、参考にしてください。
手付金だけは、解約金の意味合いがあるため、自己資金として用意する必要があります。相場は物件価格の10〜20%(宅建業法で上限20%以内)。
とはいえ、あくまで売り主と買い主の間での取り決めのため、売り主との交渉によっては30万円程度ですむ場合もめずらしくありません。特に中古物件では、売り主が個人のこともあるため、交渉の余地はあります。
前回の記事「『頭金ゼロ』でも金融機関は住宅ローンを貸したがっている」でお話ししたように、現在、金融機関は住宅ローンの貸し出しに積極的です。昨今の経済状況を考えると、当分の間、金利も極端に上がる可能性は低いでしょう。わずかな自己資金で、誰もがマイホームを安全に手にするチャンスが訪れているのです。
(参考記事)
「3000万円の中古住宅を購入、諸費用を100万円安くする方法とは?」
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。