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諸費用やリフォーム費用まで借りられる!

「頭金なし」の人にも金融機関は住宅ローンを貸したがっている!その理由とは?

牧野寿和牧野寿和

2016/04/19

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リフォーム費用も込みで借りられるケースも

住宅を購入するためには、一般に物件価格の2〜3割の頭金が必要だといわれています。「物件価格の2〜3割を頭金として用意しないと融資が受けられない」というのが、その主な理由です。
たしかに以前は、住宅金融支援機構などで住宅ローンを借りる場合、借り入れ可能額が購入金額の8割までと決まっていたため、残りの2割は現金で準備しなければなりませんでした。また、中古物件も多くの場合、物件価格の8割程度までしか融資してもらえませんでした。

しかし、これらは一昔前の話で、収入面の基準さえクリアできれば、現在では頭金ゼロでも、ほとんどの金融機関で借り入れが可能になっています。それどころか、契約などにかかる諸費用、金融機関によってはリフォームやリノベーション費用も込みで融資を受けられるケースも増えているのです。

なぜ金融機関はそれほどに貸したがっているのか

なぜ金融機関はこれほど貸し出しに積極的なのでしょうか。

「預貸率」という言葉をご存知でしょうか?
これは銀行が集めた預金をどれだけ融資に回しているかを示す指標のことです。東京商工リサーチの調査によると、2015年3月期決算 の国内銀行114行の預貸率は6年連続で低下しています。その理由は、企業への融資がむずかしくなっているからです。

大企業はバブル崩壊の教訓から、利益が出ても慎重な経営を続けています。仮に設備投資等で大きな資金が必要な場合も、金融機関を頼る前に、市場から直接調達するケースが増えています。一方、中小企業への融資は高いリスクが伴います。特に景気の先行きが読めない現在はなおさらです。

こうした事情から金融機関は、競って住宅ローンの貸し出しに力を入れているのです。個人を相手にする住宅ローンは、企業への融資に比べて利幅は薄いものの安全です。
住まいは誰にとっても必要不可欠な生活基盤ですから、ちょっとやそっとのことで返済を延滞しません。 仮に返済不能に陥った場合でも、購入した住宅を担保に押さえているため、住宅ローンは金融機関にとってはきわめてリスクの低い商品なのです。

【フラット35】も頭金ゼロで借りられる

住宅ローンの貸し出し競争のおかげで審査基準も緩和され、頭金ゼロ、すなわち100%ローン(フルローン)も当たり前になってきています。過度の競争を危ぶむ声も聞かれますが、当分の間は国としても静観するしかないでしょう。

なぜなら、景気のテコ入れに個人消費の回復は欠かせないからです。
マイホームを買う人がいれば、それに伴って新しい家具や自動車、電化製品なども購入することが多いため、消費全般に影響します。また、マイホームを供給する側のハウスメーカーやデベロッパー、さらにその下請け企業や設備メーカーも潤います。そのため、住宅着工戸数(=床面積10㎡以上の住宅の着工数)は景気動向の先行指標のひとつとなっています。

これら消費を刺激するカギを握っているのが住宅ローンなのです。
実際、民間金融機関と住宅金融支援機構が共同で提供している長期固定金利の住宅ローン【フラット35】も、スタート当初は、物件価格の20%を頭金として用意することが必要でしたが、2006年12月には10%へ、さらに2009年6月には、経済危機対策に基づく補正予算の成立に伴い、頭金ゼロが認められるようになりました。

住宅金融支援機構は、国土交通省と財務省が所轄する独立行政法人ですから、頭金ゼロはまさに国の方針による緩和策ともいえるものなのです。その緩和策が高いリスクを伴うことは、通常は考えにくいことです。破たんされてしまったら、余計に消費が落ち込むことになるからです。

頭金に不安がある人こそチャンス

住宅金融支援機構が全国の金融機関308行に対して実施した『2015年度 民間住宅ローンの貸出動向調査』によれば、〝住宅ローンについて懸念するリスク〟の上位3つは「金利競争を伴う利鞘縮小」(95.4%)、「他機関への借り換え」(59.8%)、「中長期的な採算性の悪化」(56.5%)で、いずれも収益性に伴うものとなっています。

その一方で、「 金 利 上 昇 局 面 に お け る 延 滞 増 加 」(38.9%)、「 景 気 低 迷 に よ る 延 滞 増 加 」 (34.0%)など、返済の延滞に伴うリスクを心配する声は半数にも及んでいません。

このことからも、金融機関は現在の住宅ローンの審査基準における返済リスクについて、特別懸念を抱いているわけではないことがうかがえると思います。むしろ、頭金に不安を抱える人こそ、どの金融機関も貸し出しに積極的ないまがチャンスなのです。

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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