元金均等返済なら将来の収入減に備えられる?
牧野寿和
2016/02/26
元金均等返済にするか元利金等返済にするか
35歳のJさんは、これからマイホーム購入のために住宅ローンを借りようとしています。現在は共働きで家計に余裕があるけれど、子どもが産まれたら共働きをやめる予定なので、将来の年収が減ることが予想されるので、その前提で返済計画を立てようと考えています。
Jさんが迷っているのは返済方法についてで、元金均等返済にするか元利金等返済にするかを決めかねています。
ほかの項目でも説明したように、それぞれの返済方法について一言でいうと、元利均等返済は「毎月一定額を返済するよう調整された返済方法」で、元金均等返済は「毎回の返済時点での借入残高から利息の額を計算して、返済する元金に利息を加算する返済方法」です。
元金均等返済とは?
もう少し詳しく説明しましょう。元金均等返済は、「元金を支払い月で均等に分けて返済」していく返済方法です。ただ元金を返済すればいいだけではなく、当然、利息も支払うことになります。支払い月での借入金残高から算出された利息を元金の支払い額へ加算し、合計した金額が返済する金額です。
返済開始時の返済額がいちばん大きく、月々の返済額はだんだん小さくなっていきます。元金が毎月減っていくので、完済までに元金にかかってくる利息の総額も小さくできます。
ただ、返済開始時の返済額の負担が大きいので、現在の家計にそれほど余裕がない場合、元金均等返済を選ぶことは家計を圧迫するリスクにもなります。
元利金等返済とは?
一方、元利均等返済は、先ほど述べたように毎回返済する「元金と利息の合計額(=毎回の返済額)が均等になる返済方法」です。毎回の返済額が同じ金額になるように元金と利息の割合を調整しているので、毎月の一定額を返済すればよいため、家計は安定しやすいといえるでしょう。
ちなみに、財形住宅融資やフラット35などでは元金均等返済を利用できますが、多くの銀行では元利均等返済が主流で、元金均等返済を扱っていない銀行も少なくありません。
金利、借り入れ額、返済期間が同じなら、ふたつの返済方法を比べると、支払う利息が少なくてすむのは元金均等返済のほうです。たとえば、借入額3000万円を金利2.5パーセント、返済期間35年で返済すると、元金均等返済の場合、初回の返済額は13万3929円、総返済額は約4315万円です。
一方、元利均等返済の場合、月々の返済額は10万7248円、総返済額は約4504万円となります。ただし、現在は歴史的な低金利の状態ですから、元金均等返済はそれほど有利にはなりません。
元金均等返済を検討したいときは…
Jさんの場合、子どもができたら共働きをやめる予定なので、最初からその予定を織り込んでおき、Jさんだけの収入でも無理なく返済できる額を、毎月一定額ずつ返していくことをおすすめします。これほどの低金利ですから、全期間固定金利型で元利金等返済を選択するのがよいでしょう。
ただ、現在の家計にだいぶ余裕があり、元金均等返済の返済開始当初の返済額を負担してもなお貯蓄ができるくらいの余裕があるのであれば、元金均等返済を選択することもひとつの選択肢といえるでしょう。共働きをやめるまでの期間も考慮にいれて、Jさんひとりの収入になったときでも無理なく返済を続けられるかどうかをシミュレーションしたうえで判断してください。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。