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住宅取得資金の贈与を賢く受ける方法(5/6)

ケースに応じて有利な特例を選択するための考え方

土屋裕昭土屋裕昭

2016/01/31

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相続時精算課税制度が得な場合

 相続時精算課税制度は、「相続財産の前渡し」という発想から創設された特例なので、贈与税ではなく相続税が課されることになります。相続時精算課税制度で贈与した金額は、その贈与した人が亡くなったときに相続財産に合算され、相続税の対象になるというわけです。

 そのような観点から、この相続時精算課税制度が得になる場合は、一般贈与の住宅取得等資金の贈与の非課税限度額を超える贈与であり、かつ相続税の心配がほとんどない場合となります。

一般贈与の住宅取得等資金の贈与の非課税が得な場合

 相続時精算課税制度に対して、一般贈与の住宅取得等資金の贈与の非課税の特例は、将来的に相続税がかかる可能性がある人にとって、相続税対策となるものです。

 また、相続税の算出では、相続される側が相続する側から受けていた「相続開始前3年以内の贈与財産」については合算されてしまうのですが、住宅取得等資金の贈与の非課税の特例はこの条項から外れるので、3年以内の贈与であっても相続財産に合算されることはありません。

 つまり、住宅取得等資金の贈与の非課税の特例は、資産家にとっての相続対策としては有効な制度なのです。

配偶者に関する贈与税の特例

 これまでは、直系卑属の贈与税の特例について紹介してきましたが、実は「贈与税の配偶者控除の特例」も存在します。これは、婚姻期間が20年以上の配偶者から家屋・土地やそれらを所得するための資金贈与を受けた場合、2000万円の控除が受けられるという制度です。

 贈与税にはもともと110万円の基礎控除額が設定されているので、実質的には2110万円までの贈与については贈与税対象外となります。

配偶者控除を受けるためのポイント

 それでは、この贈与税の配偶者控除の特例を受けるためにはどうすればいいのでしょうか?

 まず、婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与であることが条件です。婚姻届を提出した日から贈与のあった日までの期間が20年以上という規定ですので、内縁関係の場合には適用されません。

 また、居住用不動産の贈与に関しては建物のみ・敷地のみでも構わないのですが、敷地のみの場合に限り、その敷地の上の建物の所有者が贈与を受けた配偶者か同居する親族でなければいけないという規定があります。そして、贈与を受けた翌年の3月15日まで住み続け、その後も住み続ける予定であることも条件です。

 この特例は一度しか使えないので、過去に同じ配偶者から控除の適用を受けている場合は対象外とされます。

 これらの条件に合致する場合は、2110万円以下の贈与であっても確定申告が必要になります。

現金と不動産、どっちが得なのか

 婚姻関係が20年以上ある夫婦が、これまで夫名義だった家を売却し、新たに家を建てるにあたり妻の名義を多くする場合、どうすれば一番得になるのでしょうか?

 この場合、「購入するときに現金を贈与して共有持分を設定する方法」と「夫名義で購入後、しばらくしてから建物・土地を妻に贈与する方法」の2パターンが考えられます。

 たとえば、購入資金が5000万円だとしたら、贈与税の配偶者控除の特例における非課税額は2110万円ですので、前者の場合、贈与税のかからない持分は「2110/5000」となります。それに対し、後者の場合は、不動産の評価額が少し下がってからの贈与になるので、評価額が4000万円だとすると「2110/4000」が妻名義で贈与税のかからないラインとなります。

 一見、後者が得のように思えますが、不動産の名義変更には登録免許税・不動産取得税などがかかるので、これらを踏まえたうえで検討しましょう。

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この記事を書いた人

税理士

CFP、宅地建物取引士 米国アラスカ出身。一般企業勤務を経て簿記知識ゼロから3年で税理士試験合格。著書に「いちばんわかりやすい確定申告の書き方」(ダイヤモンド社)など多数。HP「相続税申告のツチヤ」にはお客様の声50件超掲載。

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