2022年の株式相場は「セル・イン・メイ」――その理由とは?
望月 純夫
2021/12/07
イメージ/©︎blueone・123RF
「寅千里を走る」の寅年は意外や1勝5敗、パフォーマンス1.8%
干支による相場では、「辰巳天井(2024・25年)、午うま尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄(20年)、丑つまずき(21年)、寅千里を走る(22年)、卯は跳ねる(23年)」といわれている。
子年(20年)相場では、日経平均は大発会の2万3319円の始値からコロナショックによる3月19日の年初来安値1万6358円を挟み、大納会は2万7444円の終値へと上昇。
丑年である今年はどうか。大発会の始値が2万7575円であることから、12月7日現在の2万8455円の水準でも、地合いからみて「掉尾(とうび)の一振(年末に向けた株価上昇)」は、期待できにくいものがある。
ちなみに「丑つまずきの年」は、干支のなかではブービーのパフォーマンスで戦後勝率では3勝2敗、平均では0.1%程度のマイナスとなっている。
では、来年(22年)の「寅千里を走る年」は、どうであろうか。意外にも千里を走る程の数値とはなっていない。1勝5敗で平均パフォーマンスは1.8%のプラスである。
22年は米国FRBによる金利引き上げの第1弾が6月頃、第2弾が秋、そして、秋に予定されている米中間選挙と後半にかけては上がりにくい状態が想定される。来年の想定は前半高の後半安パターンになる可能性が強い。
古くからの相場格言に「セル・イン・メイ」がある。これは5月か6月頃から株安となる傾向があるため、5月に売り抜けるのがよいという意味である。
米中間選挙の年の年間パフォーマンスは1~3月がプラスで、4~6月がマイナス、7~9月はマイナス、選挙終了後にプラスに転じるパターンもイメージしておくことが大切だ。繰り返すが過去の寅年は+1.8%の1勝5敗、十二支のなかでは最低の勝率である。
25年の大阪万博の年が巳年にあたり卯、辰と上昇が加速することに――。ちなみに卯年の平均上昇率は16.4%で第4位、辰年は28%で第1位である。
電池関連関連、推奨5銘柄
さて、注目の銘柄としては、カーボンニュートラルが求められるなかでは、やはり蓄電池といえる。
リチウムイオン電池の主要部材には、正極材、負極材、セパレーター、電解液、電解質がある。コスト的に見ると正極材が一番高い。
その正極材メーカーには、田中化学研究所(4080)、戸田工業(4100)、住友金属鉱山(5713)、三菱ケミカル(4188)、新日本電工(5563)などがある。
トヨタにリチウムイオン電池を供給するのはパナソニックで、同社に正極材を供給するのが田中化学研究所と住友金属鉱山など。
田中化学研究所
負極材メーカーには、昭和電工(4004)、クレハ(4023)、チタン工業(4098)、日本カーボン(5302)三菱ケミカルがある。ちなみに大手の負極材メーカーの日立化成は昭和電工に買収された。
昭和電工
セパレーターメーカーには、ニッポン高度紙(3891)、東レ(3402)、住友化学(4005)など。電解液メーカーには三菱ケミカルや宇部興産(4208)などがある。電解質はステラケミファ(4109)で、他社向けの電解質メーカーには関東電化工業(4047)がある。
ニッポン高度紙
日立造船(7004)は2021年3月5日に世界最大級の全個体電池を開発するということで話題となった。
元日産で電池開発をしていた堀江英明氏が考案した全樹脂電池の量産体制が出来た三洋化成(4471)は、21年には量産体制(トヨタ向け)入りか。三櫻工業(6584)は米社に出資し全個体電池を開発に携わる。三井金属(5706)は次世代向け電池(全個体電池)の正極・負極材の開発に力を入れている。
三洋化成
三井金属
このほか日本電解はリチウムイオン電池用電解銅箔、ヒラノテクシード(6245)はリチウムイオン電池向けの電極塗工装置や薄膜成形装置を開発販売、トレックス・セミコンダクター(6616)は全個体電池用充電ICの量産体制に入っている。
投資信託は海外ファンド強し なぜか毎月分配も人気
少し古いデータであるが、21年9月末現在、公募投資の純資産額は160兆4088億円と過去最高を更新した。公募投信への年間純資金流入額は過去最長となる17年連続の資金流入である。20年も1年間に9兆8790億円の資金が投信に流入している。
この1年間では、上位10ファンドのうち8本が海外株ファンドで、うち6本がテーマ型ファンドで、そのうちの3本が毎月分配型である。
1年間の資金流出入ランキングの1位は、アライアンス・バースタインの米国成長株式投信Dで6078億円、2位はアセットマネジメントONEのグローバルESGハイクオリティ成長株で4691億円、3位は日興アセットマネジメントのデジタル・トランスフォーメーションで3769億円。
純資産額残高ランキングでも、第1位はアライアンス・バースタイン米国成長株投信Dで1兆3734億円、第2位はグローバルESGハイクオリティ成長株で1兆2063億円、第3位は日興アセットのグローバル・プロスペクティブファンドの9241億円。
以前、投資効率が悪いと問題になったにもかかわらず、相変わらず毎月分配型ファンドの人気が強い現象が続いている。投資信託は分配型で受け取らなくても、いつでも自分の好きな分だけ解約できるだけに、基本を知らないのか、判断するのを放棄しているのか、日本ならでは不思議な現象といえる。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。