政局相場に入った市場――総裁選絡みで低迷相場を一掃大転換も?
望月 純夫
2021/09/07
イメージ/©︎blueone・123RF
国民人気だけではない、河野行革相が期待されるもう1つの理由
9月1週は久しぶりの大幅となった。
これはジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長講演が米株の買い材料となったことから、週明け8月30日の日経平均は3桁の上昇。翌31日は月末安のジンクスを跳ね返しての大幅高となり、2万8000円台を回復した。
このことから基調の変化を感じさせ、9月相場に入ると一段と騰勢を強める展開に。2日には2万8500円を回復し、3日は菅首相の辞任報道で売り方の買い戻しを誘う動きが加速し、500円を超える上昇。9月第1週の週末値で2万9000円を上回り、週間では約1486円の上昇となり、週足では2週連続で陽線を形成した。
また、TOPIXも2000ポイント台に乗せて年初来高値を更新している。当面、自民党の総裁選絡みの新しい材料探しに夢中になり、今年の低迷相場を一掃する動きに大転換も予想される。
というのも、平成に入ってから過去の新政権で株式市場が中長期で変わったのは、小泉純一郎首相(59歳で就任)、安倍晋三首相(第2次内閣58歳で就任/第1次は52歳)である。
さらに平成に入ってからの与党自民党系の歴代首相を見ると、60歳未満で政権について海部俊樹首相(1次・2次)819日、橋本龍太郎首相(1次・2次)933日、小泉首相(第1次~第3次)1982日、安倍首相(第2次~第3次)2824日と第1次安倍内閣を除いていずれも3年以上の安定、長期政権になっている。
ちなみに60歳以上で与党・自民党系の歴代首相を見ると、平成最初首相の竹下登首相(63歳)576日、宮沢喜一首相(72歳)644日、村山富市首相(70歳)561日、小渕恵三首相(61歳)616日と2年未満。森喜朗首相(62歳)、福田康夫首相(71歳)、麻生太郎首相(68歳)は就任1年前後で首相を退任している。
平成以降の歴代総理大臣
出典/「首相官邸ホームページ」を基に作成
1980年代後半からの日経平均の推移 出典/TradingView
現在、名前の上がっている候補者の年齢を見ると、岸田文雄氏64歳、高市早苗氏60歳、野田聖子氏61歳、石破茂氏64歳と軒並み60歳以上である。
こうしたことからも市場の期待は河野太郎行革相(1963年生まれ、58歳)と想定される。しかしながら、菅政権のコロナ対応に国民の不信・不満が高まっているだけに、仮に河野行革相が新しいリーダーになったとしても、目新しい施策を打ち出す必要がある。
日経平均の初動の上昇場面では、まだ売りから入っていた投資家の買い戻しが上昇のエネルギーとなる。不安の裏返しの反動高で、踏み上げ相場的に移行。特に9月10日(金)は、メジャーSQにあたり、9月第2週は強い動き継続。
なお、総裁選の告示日(17日)から投開票日(29日)までは、楽観ムードが強まることも予想される。タイミング良く9月末の3月決算の配当取りにもあたり、活況相場を予想する。
テクニカル的には、先ずは2月20日の高値3万0714円の回復(全値戻し)、その後は、高値3万0714円と8月21日の安値2万6954円の下落幅の倍返しの3万4470円が目標値に。
この目標でもPERは15.92倍程度(現在の1株当たり利益は2165円)。今回のパターンは2012年12月19日に騰落レシオ(25日)が164.5%を記録したときに類似しており、新首相への期待相場に繋がるかが大きなポイントになりそうだ。
今月の注目株――半年間で業績見通し増額修正の半導体関連
世界各国の主な指数のなかで、日本、中国上海、香港の指数がさえない動きが続いている。
日本株は世界景気に敏感な製造が多く、日本の2大貿易相手国である米中冷戦による影響が読めず、国内外の投資家が日本株に前向きになれないこともある。しかし、ワクチン接種が加速し、経済が正常化するとともに、投資家は割安な日本株に取り組むことになろう。この半年間の間に、業績見通しを増額修正した企業も多く、日本株の投資魅力は高まりつつある。ここでは、半導体関連に注目したい。
世界の半導体市場が、17年が前年比22%増、18年が14%増と大幅に伸び、19年伸び鈍化、20年は19年比横ばい、21年は18年のピークを下回る予測であったが、20年12月の予測では21年は8.4%増の4694億円と8年のピークを若干上回る見通しに上方修正された。
しかし、2年後半以降、世界的に自動車生産が本格回復した後、車載半導体の供給不足が明らかになり、21年に入って大手自動車が生産計画に追い込まれている。
3月に発生したルネサスエレクトロニクスの那珂工場の火災も大きく影響している。コロナ禍でテレワークやEコマースが増大し、パソコンやタブレット端末の販売が想定以上に好調に推移し、5G通信による「IoT」進展に備えて、膨大化するデータ量を処理するためのデーターセンターの増強も、半導体ニーズが大きく高まる要因となっている。
WTSの予測では21年比は前年比19.7%増の5272億円、22年も同8.8%増の5734億円と拡大見通しとなっている。
半導体テスターのアドバンテスト(6857)は、22年3月期の売上高、営業利益を大幅に上方修正し、7月、8月も受注が積み上がり、衰える気配がないとしている。半導体製図装置の世界市場も3年連続で過去最高を更新する勢いであり、半導体材料も含め、長大なブームが続きそうである。
アドバンテスト 出典/TradingView
SUMCO(3436)は半導体用シリコンウエハの世界シェア2位の30%弱で、信越化学(30%強)に次いでいる。
SUMCO 出典/TradingView
東京応化工業(4186)は、EUV用フォトレジストで世界シェア5割弱、検査装置のプローバでは東京エレクトロンに続く2位の13%の東京精密(7729)、半導体露光装置用の光源の世界シェア80%、EV向けも期待出来るウシオ電機(6925)、車載用マイコンシェア1位のルネサスエレクトロニクス(6723)が注目される。
東京応化工業 出典/TradingView
東京精密 出典/TradingView
ウシオ電機 出典/TradingView
ルネサスエレクトロニクス 出典/TradingView
コロナが収束し、インド株ファンドに注目が集まる
国内公募の追加株式投資信託(上場投信=ETFは除く)のうち、2020年の1年間に召還したファンドは363本と過去10年で一番多かった。
20年1月~21年8月17日に償還した573本を対象に償還時の基準価格を見てみると、首位はJPモルガン・アセット・マネジメントが運用する「JPMチャイナ・アクティブ・オープン」の8万4239円で20年12月に満期償還した。04年1月に1万口あたり1万円で運用をスタートしたので、基準価格は8倍以上になったことになる。
一方、基準価格の1万を割り込むファンドも167本あり、最も低いものは「資源ツインσファンド(通貨選択型)ブラジルレアルコース」で、予定信託期間前に繰り上げ償還をしている。
個人投資家の関心は、海外株式型投資信託で、国内外の債券投資の人気は芳しくない。
新興国債券型の過去1年(2021年7月末)の資金流入で資金流入がプラスとなったのは8本で、積み立て型の資金流入が支えていたようだ。運用成績は5%を超えるものが多いが、海外株式投信はそれ以上に好調で、投資家の関心は向かいづらくなっている。
世界の市場を見ると、インドの株式市場が上昇基調で最高値を更新中である。
新型コロナウイルスの感染動向が改善し、回復の期待が高まっている。イーストスプリング・インド株オープン、HSBCインド株オープン、高成長インド・中型株式ファンド等があり、NFインド株(1678)のETFも投資魅力がある。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。