9カ月にわたる日経平均の不自然な動き 梅雨明けには明るい兆しか? 注目銘柄はバイオネット燃料など脱炭素、新エネルギー関連6銘柄
望月 純夫
2021/06/07
イメージ/©︎blueone・123RF
外国人の利益確定売りと動きを止めた日銀
東京市場は、2020年9月の月末以降不自然な動きが続いている。それは月末になると株価(日経平均)が大きく下がるのだ。
具体的には20年9月30日は353円安、10月30日は354円安、11月30日は211円安、12月30日は123円安、21年1月29日は534円安、2月26日は1,202円安、3月31日は253円安、4月30日は241円安、5月31日は289円安と9カ月連続月末安を記録している。
20年9月から21年2月末までは上昇トレンドであったが、ここ3カ月は3月31日が29,178円、4月30日は28,812円、5月31日は28,860円と29,000円を挟んでの攻防である。20年10月の時点では、ピーク時に1株当たり利益率(PER)は26倍まで買われ、5月31日現在はPER14倍割れまで売り込まれている。
この間に1株当たり利益は1,053円(2021年3月期予想)が5月中旬には1,613円まで上昇し、前期比25.8%増(1,282円)となった。22年3月期予想は2,018円と前期比25.1%増と2期連続の増益が予想されている。これだけの好業績であれば、上値を買う動き出てもおかしくない。
考えられることは、前期の利益の伸びはソフトバンクGによるものが大きく、前期比に対してほとんど横ばいと言ってよい。多くはまだ本格的な回復といえない状態にある。GDP(1~3月)はマイナス成長、引き続きGDP(4~6月)はマイナスの恐れがある。OECDの予測でも回復基調に入った米中と異なり、21年の成長予測を0.1%下方修正し2.6%としている。
4月26日から再発出された緊急事態宣言が、6月20日まで延長されたことでさらに消費の回復は遅れそうである。
景気の回復を見込んで買い越してきた外国人投資家も5月に入り、利益確定売りを進めている。
加えて、日銀も投資スタンスを変え、4月に一度TOPIXが2%超えの下落をした際には1度買いを入れた。しかし、5月は1度も買いを入れていない。今後は市場の有力なプレーヤーになることはないと言える。
今後は、東京五輪の観客者入りの実施に持ち込めるまで感染者数が減少できるかにかかっている。6月の市場の梅雨が明ける頃には、明るさを取り戻すことになろう。
脱炭素、新エネルギーで注目の6銘柄
5月20~21日に開かれた主要7カ国(G7)の気候・環境相会合は、産業革命前に比べた気温上昇を1.5度以下に抑えることで合意した。地球温暖化対策の枠組「パリ協定」での1.5度に抑制する努力目標から一歩踏み込んだかたちで、これを実現するためには二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組みを加速させる必要がある。
問題視されているのがCO2排出量の多い航空機分野で、「フライト・シェイム(飛び恥)」という言葉も広がっている。この汚名返上のカギを握るのがバイオマス原料をもとに製造される「バイオネット燃料」である。
これを受けてANA(9202)、日本航空(9201)は50年度末までにCO2排出量実質ゼロを実現すると発表した。米航空機製造大手のボーイングもすべての民間航空機を30年までにCO2排出量を大幅に削減出来る航空機用燃料SAF(持続可能な航空機燃料)で飛行することを目指すとしている。
SAFの製造技術にはさまざまなものがあるが、最も有望視されているのが微細藻類由来の燃料のユーグレナ(2931)で、今年3月に、微細藻類の一種であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)を用いて生産したバイオジェット燃料が、外部検査機関によって国際規格への適合が認められた。燃料の開発は米石油大手のシェブロンと共同で行っている。
ユーグレナ(2931)
年内のフライト実現に向けて航空運送業者や航空局と最終調整中。IHI(7013)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NED)と、ボツリオコッカスという微細藻類を使ってバイオジェット燃料を安定生産する研究に取り組んでいる。J-POWER(9513)は、20年10月に、「海洋ケイ藻のオープン/クローズ型ハイブリッド培養技術」が前記NEDに認められている。
J-POWER(9513)
バイオベンチャー群のちとせグループは4月から、藻類を活用した新産業をつくる日本発の企業連携型プロジェクト「MATURI(まつり)」始動した。
このプロジェクトには、三菱ケミカル(4188)、花王(4452)、ENEOS(5020)、ホンダ(7267)等が参加し、燃料だけでなくプラスチック、食品、化粧品の製品開発を行う予定である。
三菱ケミカル(4188)
ホンダ(7267)
25年に世界最大級の藻類培養設備建設予定である。東洋エンジニアリング(6330)は今年2月に、再生可能燃料の製造技術分野での商業化に向けて米ベロシスと包括的業務協力を定める協定書を締結している。トヨタ(7203)は、富士4時間耐久レースに水素エンジン搭載の「カローラスポーツ」をベースにしたレーシングカーを出場させ、変革する姿を見せている。
東洋エンジニアリング(6330)
トヨタ(7203)
コロナ後の投資信託は、外国株ファンドからの考え直しか
新型コロナウイルによる世界的な株価下落から1年が経過した。
コロナ感染が拡大する局面では、世界的に金融緩和や財政出動が実施され、経済活動の再開などを受け株式相場は米国を中心に大きく反発し、各国の株式市場は歴史的な水準にある。そのような局面の中、レバレッジ型、ブル型ファンドのパフォーマンスが上位を独占した。
第1位は楽天日本株4.3倍ブル、第2位がSBI日本株4.3倍ブル。この2ファンドの1年間の上昇率は400%を超えた。第3位が大和ブル3倍型日本株ポートフォリオV、第4位が楽天日本株トリプル・ブルで、この2ファンドの上昇率は200%を超えた。
レバレッジ型ブルファンドを除くと、三菱UFJ国際のeMAXIS Neoの自動運転とバーチャルリアリティの2ファンドが200%を超え、eMAXIS Neoのナノテクノロジーも200%に近いパフォーマンスを上げている。
国内で高い評価を受けているのはアセット・マネジメントOneが運用する「厳選ジャパン」で、主として我が国の金融商品取引所に上場する株式から、今後高い利益成長率が期待出来る20銘柄に厳選して投資を行っている。
銘柄選定にあたっては、優れた経営者の質・ビジョン、新しいビジネスモデルや付加価値の高い商品に着目し、徹底した企業分析、銘柄調査に基づき、組み入れ銘柄を選定している。同ファンドの設定は17年9月で、信託期間は無期限だ。
コロナ後の上昇局面では、純資産を伸ばしてきたバランス型から外国株ファンドへのシフトが目立っているが、資産形成は流行に付くことではないと、考え直すタイミングかもしれない。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。