持病があっても大丈夫 「引受基準緩和型保険」加入の際に気を付けたいポイント
平野 敦之
2021/05/12
イメージ/©︎akkamulator・123RF
生命保険や医療保険などでは各保険会社がさまざまな商品を販売していますが、販売するターゲットを分けて商品構成を組んでいるケースがよくあります。比較的多いのが基本的な商品のほかに女性を対象にしたもの、ほかには持病のある人を対象にした保険商品です。
保険の種類を問わず持病のある人は、そうでない人よりも契約の引き受けリスクが高いため、一般的には保険契約の引き受けになんらかの制限などを設けるか契約そのものを断るなどの対応をとります。その一方で、持病のある人に保険のニーズが高いのも事実ですから、そうした人を対象に各社さまざまな対応を行っているのです。
持病のある人でも加入しやすい引受基準緩和型保険とは
持病のある人でも、通常の保険よりも加入しやすい保険を「引受基準緩和型保険」といいます。死亡保障や医療保障などさまざまな種類の保険で商品がでています。
生命保険などの契約をする際、その人の健康状態について医師の診査や告知などをしてもらうことで保険契約の引き受けをします。医師の診査は健康状態を細かくみます。告知扱いはこれよりも簡易ではあるものの、過去5年ほどの病気の治療や投薬歴などがあれば具体的な内容について細かく記載が必要です。
病歴などは意図的に記載しないと告知義務違反になりますから、持病のある人には面倒なことです。引受基準緩和型の保険は、こうした保険契約における告知項目などの加入の基準を緩くして(緩和)加入しやすくしている保険のことです。
保険会社や商品によって違いはあるものの、引受基準緩和型保険の告知項目はたいてい2~5つ程度です。これらの告知項目に該当しなければ加入することができます。
加入の際に求められる告知内容とは
商品の内容以前に持病のある人には、保険加入ができるかどうかは大きな課題の一つです。告知項目は2~5つといいましたが、いくつか具体的な告知の内容をみておきましょう。
<引受基準緩和型保険の主な告知内容の例>
オリックス生命 引受基準緩和型医療保険「CURE Support Plus」の場合
出典/オリックス生命HPより(2021年5月1日現在)
保険会社によって多少異なりますが、主にこれらの内容が中心で場合によってはこれらを違うかたちに分割したり統合したりして告知内容を聞いてきます。
疾病にかかる期間でみると、「3カ月」「2年(会社によって1年)」「5年」です。ちなみに医師から検査をすすめられたというのは、健康診断や人間ドック、医療機関を受診した結果、診断確定のための再検査・精密検査をすすめられたことをいいます。
健康診断の結果に要精密検査などと書かれているが、医師に直接言われていないから関係ないなどと判断しないようにしてください。いずれにしても持病のある人にとって告知基準が明確に分かることは加入を検討する判断基準にはなります。
「引受基準緩和型保険」のメリットとデメリット
引受基準緩和型保険の特徴を踏まえたうえで、その良し悪しについて確認してみましょう。
一番のメリットは告知項目が簡素化されていることです。
持病はもちろん入院や手術、通院、投薬歴などがあるとその内容や期間などかなり詳細な記載が通常の保険では求められます。お薬手帳があれば別ですが、その場の記憶だけでは思い出せないことも多いですし、持病以外でも治療歴などがあれば記載が必要なのでかなり手間です。
最近の保険は引受基準緩和型保険に限らず、保険に付帯サービスがあるものが増えています。医療相談や医師の紹介、セカンドオピニオンなどに対応しているものもあります。生活習慣病の重症化予防のサポートなどもあったりするので、持病のある人にとっては、給付金をもらう以前にこれらは結構役に立つことが多いサービスです。
一方で、引受基準が緩和されているだけ保険料が高くなることが注意点です。医師の診査や告知が手間かもしれませんが、通常の保険に加入することができるならまずはこちらが先です。持病があるから引受基準緩和型保険ありきではないのです。
本当に保険が必要か 保険加入の見極めを
死亡保障でも医療保障などでも、どのくらいの期間、いくらくらいの保障が必要かはそれぞれ異なります。医療保障などは単に医療費だけであれば、預貯金でカバーできるケースもあります。
保険料の支払いを続けられるか、10年、20年と保険料を支払うと総額でいくらになるか、受け取る保険金や給付金に見合うかなど、付帯サービスなども含めて保険加入で得られるものと支払う保険料のバランスから落としどころをみて検討するといいでしょう。
この記事を書いた人
平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp