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貴金属、宝石、書画、骨董……高価な財産に補償を付ける「明記物件」活用のポイント

平野 敦之平野 敦之

2020/06/22

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イメージ/©︎123RF

専用住宅で火災保険を契約する場合、保険の対象になるのは主に建物や家財です。店舗併用住宅であれば設備什器や商品なども対象にすることもありますが、専用住宅であれば一般的にこの2つが中心となります。

建物と家財の火災保険の契約を一つにする場合でも別々にする場合でも、それぞれを分けて契約金額を設定する必要があります。家財というと家具や家電、衣服などまで含みますが、何もしないと家財に含まれないことがあるのが「明記物件」と呼ばれるものです。明記物件に該当するものがある場合、家財一式とは別の火災保険の対象として契約金額を設定しなければならないのです。

■火災保険の「明記物件」とは?

火災保険の明記物件とは、一般的に「1個または1組の価額が30万円超の貴金属、宝玉および宝石ならびに書画、骨董、彫刻物その他の美術品、稿本や設計書など」をいいます。これらの明記物件と呼ばれるものは、契約の際に申告して家財と別に明記しなければ補償の対象とはならないのです(契約は一つの契約でよい)。火災保険も多様化しているので、損害保険会社によって明記物件の1事故あたりに補償する上限額をこれまでより引き上げているケースなどもあります。

火災保険において家財は、年齢や家族構成などから契約するための評価額を一定の幅で算出して、家財一式としてひとまとめにして契約をします。明記物件の場合には、ひとまとめではなく、この貴金属、あの絵画などというように個別に明記物件として指定して申告します。30万円超というとプラズマテレビなどの比較的高額な家電や高い家具があるなどという人もいますが、こうしたものは通常の家財に含まれていますので特に明記する必要はありません。いずれにしても明記物件と思われるものがある場合には、契約先の損害保険会社にどのような取り扱いになるのか確認するようにしてください。

■なぜ明記物件は個別に申告する必要があるのか?

家財は個別にどのような家財があるかではなく、契約段階では家財一式としてざっくりとひとまとめにして契約するにも関わらず、明記物件は個別に申告します。

なぜ明記物件はわざわざ別に申告するのかというと、金額の鑑定評価が難しいものを対象にしているためです。例えば家電製品などは一般的に流通している金額があって事故や災害などがあった際、どこのメーカーのどんな型式のものをいつ頃買っているかで、具体的に金額の評価が可能です。これに対して明記物件と呼ばれる書画や骨董品などの美術品は金額の評価がはっきりしないものも珍しくありません。駆け出しの画家が描いた書画に誰も金額をつけないこともあれば、その画家が評価されるようになって人気になれば一般の人にはとても手が出ないような金額になることもあるからです。

明記物件に該当するものは、金額の評価が困難なものが多いため、火災保険の契約上は家財一式という枠組みの中に安易に入れるわけにはいかないのです。自分で明記物件に該当するものを所有していなくても、例えば親の財産を相続した場合に明記物件に該当するものが含まれているケースもあります。そうしたことを忘れて火災保険の更新手続きしてしまうと、明記物件が補償されていないこともありえるのです。

■明記物件については、こちらから話を向けること

明記物件を契約する際に大切なことは、通常は申告する必要などがあることです。家財の火災保険の話をすると、明記物件の話なども契約する側の損害保険会社・保険代理店などからでてくるでしょうが、明記物件についてはこちらからも内容を聞くようにしてください。金額の評価が難しいものという話をしましたが、鑑定書や領収書などの根拠資料の提出を求められたりもします。

■地震保険では補償対象とはならない

火災保険では、家財と別に自分で明記物件について申告することで補償対象にすることができるとお話しました。しかし地震保険については、明記物件を申告する、しないに関わらず補償対象とはなりません。地震保険は火災保険とセットで契約します。火災保険に明記物件の申告をしたことで、地震などにおける補償もついていると考えがちですが、そもそも対象になりませんので間違えないようにしてください。

■幅広くカバーするなら、火災保険と切り離すのもあり

火災や災害などで明記物件が損害を受けた場合、たいていの損害保険会社では時価を基準にして明記物件となっている物を評価して補償します。明記物件の全額を常に補償するわけでもなく、例えば1回の事故につき100万円を限度などのように上限を設けて保険金の支払いをするのが一般的です。

明記物件の補償で心配な場合には、火災保険よりも範囲の広い補償をカバーする別の保険で備える必要もあります。明記物件に該当するものがどのくらいあるかなどの状況にもよりますが、数が多いようなら火災保険と切り離して別の保険に加入した方がいいケースもあります。予算もあるでしょうが、実態に応じて対応するようにしてください。

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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