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新型コロナウイルスの影響による納税猶予の特例の活用方法

野田洋介野田洋介

2020/06/03

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〇はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、事業されている方の多くが収入減等により手元資金に影響が出ているかと思います。その現状により、特例措置として法人税、所得税、消費税などあらゆる国税を対象に、無担保・延滞税なしで1年間、納税猶予ができることになっています。

納税猶予の特例を適用するための要件

納税猶予の特例を適用するためには次の要件のいずれも満たす方です。なお、この要件には個人・法人は問いません。また、担保の提供は不要で、延滞税もかかりません。

・新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1カ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること

・一時に納付することが困難であること

なお、少なくとも向こう半年間の事業資金を考慮に入れるなど、申請者の置かれた状況に配慮して適切に対応することとされています。「事業等に係る収入」とは、法人の売上高のほか、個人の経常的な収入(事業収入、給与収入、不動産賃料収入等)のことをいいます。損益については関係なく、対象期間が黒字であっても、収入減少などの要件を満たせば特例を利用することができます。
次のような方も、収入減少等の要件を満たせば、納税猶予の特例を使用することができます。

・フリーランスを含む事業所得者

・確定申告により納税を行う給与所得者(パート・アルバイト含む)

・白色申告により確定申告されている方

国税と同様に固定資産税などの地方税や社会保険料についても同様の特例措置が設けられています。

対象の税金及び時期

特例の対象となる国税は、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する所得税・法人税・消費税等ほぼすべての税目です(印紙で納付するもの等は除く)。
また、納税猶予の特例は次のような場合においても利用することができます。

・すでに納期限が過ぎてしまっている未納の国税について、遡って利用することができます。
・すでに延滞税がかかる他の納税猶予を受けている場合に、特例に切り替えることによって、はじめから延滞税がないものとして猶予を受けることができます。(延滞税を納付済みの場合は還付を受けられます)
 
申請の手続き及び必要書類

納税猶予の特例を利用するには、現況(令和2年5月末時点)の法令では、令和2年6月30日と納期限のいずれか遅い日までに税務署への申請の手続きが必要です。
申請には、「納税猶予の申請書㊕」のほか、売上帳や現金出納帳、預金通帳のコピーなど「収入や現預金の状況が分かる資料」の提出が必要です。猶予期間は、納付忘れ防止のためにも1年として提出するのが有効です。猶予期間内の納付や分割納付など、事業の状況に併せて納付することは可能です。

〇おわりに

手元資金を確保するうえで、納税猶予の特例を利用することは有効的に思います。法人税や、所得税、消費税については前期(前年)の納付実績の基づいた予定納税が発生します。新型コロナウイルスの影響で当期の業績が芳しくない場合、予定納税を支払うことで年間の確定納税額として支払が過大となることもあるので、納税猶予を利用し手元資金を確保することは有効です。


納税猶予は、あくまで猶予ですので猶予期間を1年とした場合、1年後に支払期限が到来します。その間に金融機関からの融資や業績回復などで納税資金を確保する資金繰り計画を策定することが必要になってきます。

 

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この記事を書いた人

税理士

昭和58年8月石川県金沢市生まれ。 平成18年3月法政大学工学部を卒業しその後会計事務所に就職。 平成24年12月に税理士試験を合格し平成25年4月税理士登録。 平成29年7月に株式会社アグラデッソ会計事務所、野田洋介税理士事務所開業。 開業後も法人・個人事業者の会計、税務顧問によりタックスプランニングや資金繰りコンサルティングを行う。その他、相続対策・事業承継・組織再編・IPO支援等中小企業や個人のコンサルティングを行っている。

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