「元利均等返済」と「元金均等返済」、どちらが得なの?
牧野寿和
2016/01/04
それぞれのメリット、デメリットは?
フラット35などの住宅ローンでは、元利均等返済と元金均等返済、どちらも選べるようになっています。このような場合はどちらを選べばいいのか迷うこともあるでしょう。ここでは、元利均等返済と元金均等返済を事例も交えて比較します。メリットとデメリットを確認して、どちらがよりお得になるのかを考えていきましょう。
前の項目でも触れましたが、元利均等返済では、返済開始時の返済額を元金均等返済よりも低く抑えることができます。デメリットは元金均等返済よりも利息が大きく、総返済額が高額になってしまうことです。
一方、元金均等返済では、返済開始時の返済額が多くなりますが、元利均等返済よりも利息が少なく、総返済額が安く抑えられることがメリットです。試算の段階で、元利均等返済での税込み年収に対する年間返済額が20パーセント以下だった場合は、元金均等返済を選ぶことも検討してみましょう。
総返済額にはどれくらいの差が出るのか
たとえば、借入額3000万円を金利2.5パーセント、返済期間35年で返済するケースで考えてみましょう。
元金均等返済の場合、初回の返済額は13万3929円、総返済額は約4315万円です。
元利均等返済の場合、月々の返済額は10万7248円、総返済額は約4504万円です。
200万円近くも差がありますから、なかなか大きな違いになってきますね。
ここで注意すべきなのは、上記のメリット、デメリットは「借入額と返済期間と金利が同じだった場合の比較である」ということです。今は金利も低いですし、その分、元金均等返済のメリットも小さくなっています。扱っている銀行の多い元利均等返済を、なんとか上手に活用する方法はないでしょうか?
総返済額を抑えることを考えるなら
元利均等返済を有利に利用するキーワードは、「繰り上げ返済」と「返済期間の見直し」です。ただし、現在の低金利下では基本的には繰り上げ返済も返済期間の短縮もおすすめしません。低金利で借りて、長期で返すことがいちばん家計を安定させるからです。ここでは、あくまでも「総返済額を減らす」という視点で解説していることを念頭に置いて読み進めてください。
元利均等返済の場合、早めに繰り上げ返済をすれば、元金均等返済よりも利息軽減効果・期間短縮効果が大きくなります。これは早期であればあるほど効果的です。
また、もうひとつの方法として「返済期間の見直し」が考えられます。先ほどの借入額3000万円を金利2.5パーセント、返済期間35年で返済するケースで考えてみましょう。
元金均等返済の初回返済額である13万3929円を支払っても家計に余裕のある人で、今後も家計の事情が大きく変わらないなら、「元利均等返済で返済期間を25年にする」という選択肢があります。毎回の返済額は13万4585円となり、元金均等返済の初回返済額とあまり変わりませんが、この方法なら利息を大幅に少なくすることができるので、総返済額は約4037万円となります。返済期間を10年も短縮できるうえに、300万円近くも総返済額を抑えることができますね。
返済方法は、返済途中でも変更できる場合があります。民間住宅ローンの場合は、元利均等返済が主流なので基本的には変更できません(変更が認められるケースもまれにあります)が、もともと元金均等返済を選択できるフラット35なら条件を変更できます。また、元利均等返済のままで毎月の返済額を変更するなどの方法も、総返済額軽減のための選択肢として考えられます。
ここまで、総返済額の損得について比較してきましたが、実際に返済方法を考えるときは、支払い金額の大小だけでなく、ご家庭の将来に合わせて決めることも重要です。もし現在の家計に余裕があっても、数年後には共働きのご夫婦どちらかが退職する予定があるといった場合は、元金均等返済を選択して、将来の負担を軽くすることも検討してみましょう。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。