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基本は「低金利で借りて長期で返す」

住宅ローンは何年で返済するのがベストか

牧野寿和牧野寿和

2016/01/04

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一般的には35年返済が最長

 家計におけるローン返済の負担を小さくしたいならば、返済回数を増やすことで毎月のローン返済額を抑えられます。返済回数を増やすというのは、つまり返済期間を長くするということですが、返済期間が長すぎると貸す側の金融機関にとってもリスクになるので限度があります。

 まず、一般的には35年返済が最長です。ただし条件があり、(金融機関によって前後しますが)だいたい75~80歳を上限とした期間しか借りられません。

 たとえば「80歳まで」という制限がある金融機関で、できる限り長い期間で返済するプランで組もうと考えた場合、30歳の人は35年ローンが組めます。同じ金融機関で50歳の人がローンを組むと、35年後には85歳になってしまうので最長でも29年のローンしか組めません(50歳の誕生日を過ぎてしまうと51歳として計算されてしまうため)。

フラット50なら最長50年のローンを組むこともできる

 しかし、これは基本の話で、例外はあります。フラット35よりさらに長いフラット50や、民間の金融機関が提供するローン商品の一部などでは条件を満たして審査を通れば36年以上のローンを組むことが可能になります。

 フラット50とは、フラット35と同じく民間金融機関と住宅金融支援機構が提携した長期固定金利住宅ローンです。利用するには大まかにいえばフラット35と同じような条件を満たしていることが条件になっています。フラット50とフラット35では、貸し出しの上限額や金利も違うのですが、一番わかりやすい差はフラット35で対応していない36年以上の貸し出しをしている点でしょう。

 フラット50は最長で50年まで返済期間が取れます。しかしこれにも80歳までの年齢制限があり、満44歳未満の人しか利用することができません。

長めの返済期間を取っておくことが必要

 家計への月々の負担を減らし、余裕のある生活をするためには、ある程度長めに返済期間を取っておくことが必要です。

 ただ、一般的に考えれば、返済期間を長く取ると、利息をそれだけ多く支払うということになり、総支払い金額が増えるというデメリットもあります。また、ローンを借りている期間が長くなれば、保証料などの諸費用も多くかかるので、そちらの支払い額も大きくなります。

 たしかに、住宅ローンのような大きなローンを残したままでいると、不安を感じることもあるでしょうし、早く返せるのならそれに越したことはありません。しかし、それはローンを返済してもなお、資金に余裕のある人の話です。

 現在は歴史的な低金利時代です。しかも、かつてのように長期にわたって安定した雇用も収入も約束されてはいません。もしも、病気になってしまったり、親の介護やリストラによってやむなく職を離れることになったりといった事態に陥った時、住宅ローンより低金利でお金を貸してくれるところはありません。

 そう考えると、無理に繰上げ返済をするよりも、手元にお金を残しておいたほうがよいことはおわかりいただけるでしょう。さらにいえば、現在のような低金利であれば、借入利率よりも高い利率で資金を運用することはそうむずかしいことではありません。

 企業経営では、低金利で長期の融資を受けることが資金繰りを安定させることにつながるというのは常識になっているのですが、家計の話になるとなぜかこの常識が通じず、「できるだけ早く繰上げ返済する」ということが推奨されてしまいます。

 しかし、あくまでも借り入れの基本は低金利で借りて長期で返済すること。それがキャッシュフローをよくすること、つまり家計の安定につながります。これは企業であっても個人の家計でも同じことです。

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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