固定金利型と変動金利型、おすすめの金利タイプは?
牧野寿和
2016/01/04
「変動金利型」、「固定金利型」とは?
金利タイプには「変動金利型」と「固定金利型」のふたつのタイプがあります。変動金利型は固定金利型に比べて(現時点では)金利が低く、当面の返済額を抑えることができます。しかし今後、金利が上昇した場合は返済額が増えるリスクがあります。
一方、固定金利型は、金利が上昇しても最初に決めた固定金利の期間中は返済額が変わりません。「全期間固定金利型」なら完済するまでの金利が固定されて変わることがないので、その点は安心できます。
このふたつの金利タイプを基本として、いろいろなバリエーションの金利タイプで住宅ローン商品がつくられています。変動金利型、固定金利型について、もう少し丁寧に説明していきましょう。
変動金利型はリスクが大きい
変動金利型の場合、民間住宅ローンでは金利が半年ごとに変動しますが、返済額の見直しは5年に1回だけ行なわれるのが一般的です。見直しの際には、これまでの返済額の125パーセントを上限にするという決まりがありますので、返済額がそれより急激に上がることはありません。
近年の民間金融機関では、変動金利型を扱うことが多くなっています。なぜ金融機関が固定金利型よりも変動金利型を扱いたがるかといえば、それは固定金利型は金融機関がリスクを背負う商品で、変動金利型は顧客がリスクを背負う商品だからです。
では、変動金利型にはどんなリスクがあるのでしょうか。
まず、変動金利型のメリットとしては、現時点では低金利なので、当面は金利負担を抑えることができます。半面、金利が上昇した場合、将来の返済額が増える可能性があります。そうなると、当然、家計への影響が出てきます。
返済額の見直しの際には、これまでの返済額の125パーセントを上限とするとご説明しましたが、25パーセントというのはとても大きい数字です。もしもこれだけの返済額が増加してしまったら…。上限まで増えないにしても、月々の負担が増えれば生活設計を変えなければなりません。これは非常に大きなリスクです。
また、金利の変動によって返済額が変わるということは、総返済額が確定していないということです。すなわち、人生最大の買い物である住宅を、いったいいくらで購入するのかを把握しないまま買ってしてしまうことを意味していることも忘れてはいけません。
豊富な手元資金を持っている人で、金利の動向を常にチェックしながら、金利が上がったら適切なタイミングで繰り上げ返済するなどの対応が取れる人であれば、変動金利型を選択しても問題ないとはいえます。
しかし、そもそも繰り上げ返済はおすすめできるものではありません( http://sumai-u.com/?p=1252 )。それに、現在のような低金利の状況では、金利が上がったらすぐに繰り上げ返済できるような資金的な余裕があったとしても、変動金利型を選択するメリットはほとんどないといえますし、むしろリスクのほうが大きいといえるでしょう。
おすすめは全期間固定金利型です
住宅ローンは数十年をかけて返済していくのが一般的ですから、この長い期間中には当然、金利の上下があることも予想されます。ですが、全期間固定金利型の場合、返済の開始時から完済するまでの金利が一定なので、返済額も変わることがありません。
メリットは返済計画が立てやすいことと、将来の返済額が増える不安を感じずにすむことです。今後、金利が大幅に上がったとしても、このタイプを選んでおけば安心感があります。総返済額が確定している、つまり住宅をいくらで買うのかが明確になるのも大切なポイントといえるでしょう。
デメリットとしては、変動金利型に比べて金利が高いことがあげられますが、現在のような超低金利時代であれば、全期間固定金利型を選んでも低金利の恩恵を十分に受けることができます。
この先もずっと低金利が続くのであれば、変動金利型を選択してもよいのですが、先のことは誰にもわかりません。むしろ、現状では金利の上昇局面を考慮して、全期間固定金利型を選択することをおすすめします。
固定期間選択型の選択は慎重に
固定期間選択型は、一定の期間で区切って固定金利を選択する金利タイプです。その期間中は金利が固定されて返済額が一定になります。固定期間が終了した後は変動金利型を選ぶか、または再び期間区切りで固定金利を選ぶかの選択をすることになります。
メリットは、固定期間中は金利が変動しないので返済額が変わらないことです。一方、デメリットとしては、固定期間が終了した時点で金利が大幅に上がっていると、それに伴って返済額も大幅に上がる恐れがあることです。再度固定金利を選んだ場合も、その時点の金利に合わせて新しい返済額が決められます。
固定期間選択型の選択は、慎重に考えるべきでしょう。将来、確実に金利が下がっていることがわかっていればいいのですが、そんなことは誰にもわからないからです。自分で集めた情報を元に、金利の動向を予想して固定期間を選ぶことになりますが、金融のプロであっても予測が必ず的中するわけではありません。ですから、そのようなリスクを背負う商品をおすすめすることはできません。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。