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意外と見落としがち?

相続の際の火災保険の名義変更

平野 敦之平野 敦之

2019/07/26

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相続が発生した際に見落としがちなことが火災保険の名義変更の手続きです。火災保険は本来その所有者しか保険をつけることができません。万が一のときに物件の所有者と火災保険の契約上の名義が一致していないと保険金の支払いに時間がかかることがあるのです。

意外と見落としがちな相続発生後の名義変更手続きについてみていきましょう。

物件の所有者と火災保険の名義の関係

火災保険は加入に際して次の人を指定します。

・契約者
・被保険者(保険の対象となる人。火災保険では所有者が該当)

生命保険ではこれらは必ず指定しますが、火災保険では被保険者を指定しないと契約者と同じ人になります。また住宅購入時に親子あるいは夫婦間で建物が共有名義になっていることが珍しくありません。こうしたケースでは被保険者欄に共有名義となっている人すべてが被保険者の欄に名前が入ります。但し契約者は一人だけです。

逆に所有者でもない人の名前が被保険者欄にあってはまずいのです。極端な話ですが、それが可能だと全くの第三者でも契約できてしまいます。その第三者が悪意の人であれば、保険料を払い続けるより、火災にでもなって保険金を貰った方がよくなってしまうからです。

建物などの物に保険をつける火災保険ではこのようなことがあるのです。なお、被保険者について共有者それぞれの持ち分割合についてまでは記載することはありません。契約者については夫婦共有名義なら夫か妻、どちらでも構いませんがいずれか一人です。火災保険の契約関係についてはこれを前提に考えてください。

火災保険は相続財産になるのか?

親の実家を相続した場合、親が契約していた火災保険契約に資産性があるなら相続財産になります。わかりやすいように2つに分けると積立型の火災保険か掛捨型の火災保険かで取り扱いが異なります。

・積立型の火災保険
積立型の火災保険は、資産性という観点からいうとほとんど貯蓄と変わりません。相続の発生に伴う解約返戻金相当額が相続財産になると考えてください。

実務的には、現在は各損害保険会社とも積立型の火災保険の販売はほとんどしていません。昨今の低金利の関係もありますが、掛捨型が主流になってかなり年数が経ちます。損害保険会社で積立型の火災保険に契約している人はかなり少ないはずです。

但し、例えばJA共済がメインで販売している「建物更生共済むてきプラス」は積立型です。こうした契約がある場合には少し手続きに手が掛かると考えてください。他の共済だとこくみん共済co-op(全労済)や県民共済などは、1年掛捨型なので基本は名義変更手続きだけで処理することになります。

・掛捨型の火災保険
掛捨型の火災保険については、お金が戻ってくる部分がなければ、相続財産にはほとんど関係ありません。例えば1年契約で保険料が月払いなら積立になる部分はありません。相続に伴ってやっておくことは、名義変更手続きだけです。

ただし、掛捨型の火災保険でも注意が必要なことがあります。具体的には長期契約で保険料を一括払いしているケースです。

現在火災保険の契約は10年間が最長です。しかし2015年9月末までは36年間の契約ができました。住宅ローンの借入期間に合わせて火災保険を長期契約、保険料を一括払いにすることが以前は一般的でした。特に親世代のマイホームの火災保険ならこのパターンは珍しくありません。保険料を長期間で先払いしているので、解約返金が発生するからです。

火災保険の名義変更手続き

火災保険の名義変更の手続きについては、資産性があるかどうかの有無で必要な書類が変わります。完全な掛捨型の火災保険なら損害保険会社所定の変更届出書の署名だけで済むケースもあります。

お金が戻ってくるタイプの場合には、除籍謄本や相続した人の戸籍謄本、遺産分割協議書、実印や印鑑証明などが求められます。掛捨型よりもちょっと手間がかかると考えておくといいでしょう。契約者や被保険者の死亡が発生したら、契約先の保険会社に連絡して必要な書類の確認をしてください。いずれにしても単純に手続きだけですので、そんなに重く考える必要はありません。

火災保険の相続手続きですること

最初にお話ししたように金融機関にある預貯金や株式、マイホームなどと違って、火災保険契約について相続に伴って手続きが必要というのは見落としがちなことです。

1年契約の火災保険なら忘れていても、最長1年経てば満期案内が来るので思い出すでしょう。最近は長期契約の場合でも一定の頻度で契約内容の確認案内を郵送しているので何とかなるかもしれません。相続した実家に誰も住んでおらず、且つ遠距離の場合、こうした郵便などの確認も遅れてしまうことがあるでしょうから忘れないようにしてください。

他にも名義変更の必要性がわかかっていても、遺産分割協議が長引くこともあるでしょう。その場合でも取り急ぎ火災保険を契約している損害保険会社に相続が発生した旨の連絡は早めにしておいてください。それをするだけで手続き前に災害や事故で保険金を請求しなければならない事案があったときでも、多少なりともスムーズです。

 

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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