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60代がもっとも多い孤独死

原状回復にはいくらかかる?

平野 敦之平野 敦之

2019/06/28

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アパート・マンションオーナーである家主が所有する物件には、さまざまリスクがあります。近年は自然災害にスポットが当たっていますが、単に入居者が決まらない空室リスクなども頭が痛い問題です。核家族化や高齢化が進んでいることや生涯シングルの人が増える中で新たに浮上しているのが、孤独死のリスクです。

アパート・マンションオーナーが抱えるリスク

家主が抱えるリスクについて保険の観点から洗い出しをしてみましょう。

・物的なリスク:建物の火災や自然災害、漏水事故など
・損害賠償リスク:建物の所有や使用などにかかる第三者への損害賠償リスク
・その他のリスク:火災などの突発的な事案が原因の家賃保証、孤独死による損害

一般的に家主が火災保険(及び地震保険)に加入する際には物的なリスクや損害賠償リスクに対する補償は加入しますし、勧められることも多いでしょう。

その他のリスクで挙げた事故や災害を原因とする家賃保証や孤独死に対するリスクについても単身世帯の増加とともに増えていくことが予想されます。

実際に孤独死が所有する物件で発生すると、主に次のコスト負担が新たに発生します。
・物件の消臭や清掃費用
・残った遺品の処理費用
・家賃の減少

身内などに連絡がつかないと遺品整理も含めて諸々の手続きに時間を取られます。人が亡くなっているので、風評被害などがあるとその後の入居者の募集にも少なからず影響があるでしょう。自然災害とはまた違った側面での問題が多いのが孤独死リスクの特徴です。

孤独死の現状

孤独死というと単身の高齢世帯をイメージするケースが多いでしょうが、実態は必ずしもそうとは言い切れません。「第4回孤独死現状レポート 一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会(2019年公表)※」によると孤独死における死亡時の平均年齢は男性が61.4歳、女性が61.0歳で、男女の比率は8:2と男性が中心です。

孤独死した人で男性の場合、60代の割合が32.9%、70代は23.4%と半数を超えています。80代以降は一桁台となり、50歳代以下(20~50歳代)でも全体の40%弱と低い数字ではありません。

女性の場合、平均寿命が長いこともありますが、80代以降は17.5%、60代・70代までの2つの年代を足して41.1%です。50歳代以下は40%くらいです。

誤解されがちなことですが、孤独死は必ずしも高齢者に限った話ではないということです。高齢者に限らず単身世帯の場合、病気で容体が急変した際、自分で救急車を呼べないことや自殺などもあります。

孤独死による損害額

火災や自然災害などとは違うため、孤独死が発生することで建物が消失するリスクなどはありませんが、修理すれば済むという話でもありません。先ほどと同じ統計から、孤独死の発生によって負担のあった金額を確認すると次のようになっています(千円未満切り捨て)。

・残存物処理費用
平均損害額214千円 最大損害額1,781千円 最小損害額 1千円

・現状回復費用
平均損害額361千円 最大損害額4,158千円 最小損害額 5千円

なお家賃保証費用については損害額の平均や最大・最小のデータは出されていませんが、支払われた保険金の平均は321千円になっています。

最大値と最小値を比べるとかなりばらつきがありますが、孤独死の場合は発見が遅れるとどうしても被害が拡大します。事故の発生が夏の暑い時期か冬かなど季節的な要因も被害の大きさに関係してきます。

孤独死のリスクに備える孤独死保険とは?

孤独死保険の主な補償は消臭や清掃などによる原状回復費用や遺品などの残存物処理の費用、そして孤独死から発生する家賃保証などが中心です。孤独死保険は少額短期保険が単体の保険として家主向けに販売したのがはじまりですが、現在では加入パターンとして次の2つがあります。

・家主が単体の保険として加入
・入居者が家財保険に加入する際に特約として補償を付帯

少額短期保険では上記のいずれかのパターンが一般的ですが、家主が単体の保険として加入するのが数社、数が多いのは入居者の家財保険に付帯するケースです。但し、補償内容や補償金額の限度などは個々のプランによってかなり違いがあるので、加入に際しては内容の確認が必要なのは他の保険と同じです。

また損害保険会社でも家主向けの火災保険の中に孤独死保険と同じような補償を組み込む動きがでてきています。

損害保険会社の火災保険の特約では、「孤独死保険」などという名称にしていないことがほとんどです。保険会社によって名称に違いがあることがありますが、「家主費用」などというような名称で火災保険の特約にして販売しています。

どこで加入するにしても家主として孤独死のリスクに備えることを考えるなら保険の付帯も選択肢の一つとして検討してみるといいでしょう。また見守りサービスなども家主向けに提供するビジネスも増えています。

行政でも孤独死対策の取り組みがはじまっています。保険の加入は備えの一つではあるものの、孤独死が防げればそれが一番です。コミュニティの形成や地域・行政との連携、見守りサービスとの組み合わせなどで複合的に備えることが大切です。

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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