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改正民法

特別受益と遺言証書のポイント(1/2ページ)

井上裕貴井上裕貴

2019/02/20

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イメージ/123RF

「夫から居住用マンションをもらっていたのに、何で、夫が死んだあとに売らなきゃいけないの?」
もしかすると、こんな体験をされた方がいらっしゃるかもしれません。

今回は、夫からマンションを生前贈与されていたのに、遺産分割の結果として、マンションを売却せざるを得なくなるケース及び改正民法903条4項(特別受益の持戻し免除の意思表示の推定)並びに改正民法968条2項(自筆証書遺言の方式の緩和)について説明していきましょう。

1 生前贈与されたマンションを売らなくてはならない理由

夫と妻は、婚姻後、30年以上、夫の所有するマンションで生活していました。夫には連れ子が一人いましたが、妻とは関係が良くなく、20年以上、交流はありませんでした。
夫は、妻に対し、「自分が死んだ後は、このマンションに住み続けて欲しい」と述べ、3000万円相当のマンションを生前贈与しました。
その直後、夫は交通事故で即死しました。
夫は、遺言書を残していませんでした。
夫の財産としては、預貯金1000万円だけ残っています。

この事例の場合、夫の相続人は、妻と、夫の子の2名です。
死亡時の夫の財産は、預貯金1000万円だけですが、遺産分割の際、夫の妻に対する3000万円相当のマンションの生前贈与は、特別受益に該当するため、相続財産に持戻して計算されます。
すなわち、法定相続分に従うと、4000万円(預貯金1000万円+マンション3000万円)を、妻2分の1、夫の子2分の1で分割することになるため、それぞれ、2000万円ずつ、遺産を分けてもらえるということになります。

しかし、預貯金は1000万円しかありませんから、3000万円相当のマンションをもらっている妻は、夫の子に対し、1000万円の金銭を支払う必要があり、これを調達することができない場合には、マンションを売却せざるを得ないこともあります。

そこで、従来は、持戻し免除条項のある遺言書を、夫にあらかじめ作成しておいてもらい、妻にマンションが残るよう対処していました。
具体的には、マンションについて持戻し免除の条項を入れるとともに、夫の子の遺留分に配慮し、預貯金を夫の子に相続させる等です。

次ページ ▶︎ | 改正民法903条4項(特別受益の持戻し免除の意思表示の推定)

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士。1976年生まれ、東京都出身。 明治高校、明治大学、獨協法科大学院 卒業/都内法律事務所を経て、佐久間法律事務所所属。取り扱い案件は、保険法関係、知的財産関係、介護相続関係など。モットーは「トラブルの火種は放置せずに事前対策と早期対応」

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