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賃貸・家賃滞納は何カ月分まで許される?

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ひと月だって許されません

賃貸住宅に住んでいて、毎月払う家賃を滞納している。何カ月分まで許される―――?

答えを初めに言っておこう。

「最低の1カ月分であっても許されない」だ。

当たり前だ。

決まった期日までに家賃を全額きちんと支払う。それを継続することで、賃借人=入居者であるあなたは、その部屋(一戸建てならば建物)に住んでいられるのだ。

ゆえに、その約束を守らないのは当然契約違反だ。

「すぐに荷物をたたんで出て行ってくれ!」と言われても、本来、文句を返せる筋合いのものではない。

とはいえ、現実には、滞納が発生してからひと月も経たないうちに、入居者が住んでいる物件から「出て行け」と責められるような事例はまず無いだろう。

なぜだろうか?

そこには、「信頼関係破壊の法理」と呼ばれる、ある考え方が大きく影響している。

「信頼関係の破壊」が無ければ、滞納しても追い出されない?

賃貸住宅を借り、そこに住み続けるために家賃を払うこと。すなわち、入居者が背負う契約上の「債務」となる。

それを怠ること、イコール「債務不履行」だ。

すると、これを履行してもらいたい側は「催告」を行うことになる。家賃の場合、賃貸人=オーナー側は、

「期日に遅れてますよ。忘れてませんか? 〇〇日までに払ってください」

履行に必要な「相当の期間」を設定した上で、入居者へ請求することになるわけだ。

しかし、それでも家賃が払われないとする。

その場合、オーナーの側には、賃貸借契約そのものを解除する権利が発生する。

「あなたとの契約はもうやめます。部屋(建物)から出て行ってください」

入居者に退去を求めることができるようになるわけだ。

なお、以上の流れについては、民法541条に、まさにそのままの規定がある。

だが、わざわざ法律をひもとかずとも、一般常識的に考えても、以上は誰もが納得できる流れであり、理屈であるにちがいない。

ところがだ。こうした流れや理屈は、賃貸住宅の場合、通常は適用されないものとされている。

賃貸借契約を解除し、入居者に出て行ってもらうには、これだけでは足らず、さらなる理由がもうひとつ必要になってくる。

それが「信頼関係の破壊」だ。

たとえば、家賃滞納の場合、それが現に発生していることに加え、そのことによって入居者・オーナー間において「信頼関係の破壊」も生じているか否かが、契約解除が可能かどうかを判断するための重要なカギになってくる。

とはいえ、これはどうもおかしな話だ。

国の基本法である民法の規定をある意味“破壊”してはいまいか?

それでも、以上の考え方は、過去の判例等により、司法の世界では一般的な基準として確立している。すなわち「信頼関係破壊の法理」と呼ばれるものだ。

なお、この法理(法律とその運用の根底を成す原理)が認められる理由について、その分かりやすいひとつを挙げておくと、

「入居者にとって、住まいはもっとも重要な生活の基盤のひとつであるため、これを奪う結果につながる法律の運用については、ある程度の制限があって然るべき―――」

そんな考えになるだろう。

連続3カ月分の滞納で信頼関係は破壊?

では、家賃滞納によって、滞納の事実ばかりか、信頼関係の破壊までもが生じたと認められる状況というのは、どんな場合をいうのだろう。

よく出て来るのが「3カ月」というモノサシだ。

たとえば、1カ月分の滞納が、まず発生したとしよう。

「払って下さい。〇〇日までに」と、催告を受けた入居者。しかし、彼はこれを実行せず(あるいは実行できず)、2カ月目の期限が到来。

しかし、それも払わず、またも催告を受け、やがて3カ月目の期限日に。

ところが、入居者は三たびこれを払わず、計3カ月分が連続して溜まったところで―――

「入居者・オーナー間の信頼関係は破壊された」

「仮に訴訟となっても裁判所もそう認めるだろう。契約解除を迫ってもいい状況になったといえそうだ」

そう考えるのが、やはり過去の判例などから多くの認識となっている。

なので、ここでもう一度答えを出そう。冒頭の質問だ。

「賃貸住宅に住んでいて、毎月払う家賃を滞納している。何カ月分まで許される?」

道義的な答えはこうだ。

―――「1カ月分だって許されない」

判例等を踏まえた現実的な(かつ現状の)答えはこのようになる。

―――「2カ月分までは許される可能性が高いが、連続3カ月分以上となるとその可能性は低い。契約解除を突き付けられる可能性が高い」

以上、よく覚えておこう。

だが、注意もしておきたい。上記はあくまで基本中の基本的な考え方だ。滞納には、実際さまざまなケースがある。

たとえば、こんな状況はどうだろう。

「そもそも滞納が常態化していた入居者。半年以上前から、家賃はほぼ毎月、催告されてから遅れての入金となっていた。その上で、いよいよ先月以降はそうした入金も無くなり、現状2カ月分が未払いとなっている」

3カ月という“基準”が満たされなくとも、こんなかたちであれば、信頼関係の破壊が認められる確率は相応に上がることとなるだろう。

一方、こんなケースはどうか。

「部屋に雨漏りが発生し、入居者はオーナーに何度も対処を求めていた。ところが、その間一向に修繕が行われない。怒った入居者は『直してもらえるまで家賃は払わない』と宣言、支払いを停めた。それが連続3カ月分を超えた」

この場合、オーナーが賃貸人として負うべき義務を果たしていないと認められれば、滞納は事実であっても、その行為が信頼関係を破壊したとまでは認められないかもしれない。

滞納を発生させる前に動くべし

人生、色々なことがある。

順風満帆な日々を過ごしていたつもりが、病気や失職といったアクシデントに次々と見舞われ、意気消沈。再就職にも失敗し、無職無収入の状態が長期化。貯金も尽きて、いよいよ家賃を払えなくなった―――など、誰にも起こりうることだ。

そうした場合、賃貸住宅の入居者が決してやってはいけないのが、座して家賃滞納の日を迎えることだ。

その前に動こう。動かなければ、不幸の扉はさらにもうひとつ開いてしまうことになる。

滞納を発生させる前に、するべきはまず相談だ。

相談相手は契約のかたちによって、オーナー、管理会社、家賃債務保証会社などと分かれるが、家賃債務保証会社が関わっている場合は、これをまずは最優先の相談先としたい。

なぜなら、彼らはオーナーに対し、入居者の家賃債務を保証している。入居者が払えなくなった家賃を代わりにオーナーに支払う関係上、滞納の影響を直接、かつ全面的に被る立場にあるからだ。

支払いが困難になった(なりそうな)理由を説明し、対処を仰ごう。

家賃債務保証会社に相談するなんて「怖い」とのイメージもあるかもしれないが、いまは多くの会社がそうではない。

むしろ現状、彼らはピンチに陥った入居者を救う上での“プロ”の立場にあるといっていいだろう。

入居者の置かれた状況を把握したうえで、公的な支援などにどうつなげていけばよいかを考える―――そうした経験、ノウハウを彼らがたくさん持っていることをよく覚えておこう。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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