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サブリース業者等の「法令違反」率が増加。国交省が一斉立入検査

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187社に立入検査、127社に対し是正指導

この5月半ば、国土交通省が「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者への全国一斉立入検査結果」令和6年度(2024年度)分を公表している。

なお、特定転貸事業者とは、いわゆるサブリース業者をいう。これを含む賃貸住宅の管理等を行う事業者について、法に基づいた正しい業務が行われているかどうかを国交省の職員が立ち入り検査し、確かめたということだ。

法とは「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」を指す。「賃貸住宅管理業法」と通称されるものだ。21年6月に全面施行された。比較的新しい法律となる。

国交省のリリースから抜粋する。

「全国187社に対して立入検査を行うとともに、127社に対して是正指導を行いました。是正指導の割合は令和5年度より増加し、一部の賃貸住宅管理業者等において法に対する理解不足がみられる結果となりました」

法令違反を指摘され、指導を受けた業者のパーセンテージが上がってしまったというわけだ。残念な結果になっている。

今回の立入検査対象事業者の業態別の内訳は、以下のとおりとなる。

賃貸住宅管理業のみを行っている事業者 87社
賃貸住宅管理業を行い、かつサブリース業者でもある事業者 96社
賃貸住宅管理業を行っていないサブリース業者 4社

(サブリース業者は計100社となる)

「法施行後間もない」の甘えはもう許されない

今回と前回、前々回、過去3年度分の数字を並べてみよう。

令和6年度(24年度・今回) 立入検査対象業者数 187社 検査実施期間 24年6月~25年3月
法令違反が認められ是正指導された業者 127社(67.9%)
延べ指導件数 291件
令和5年度(23年度) 立入検査対象業者数 179社 検査実施期間 23年6月~24年3月
法令違反が認められ是正指導された業者 106社(59.2%)
延べ指導件数 228件
令和4年度(22年度・賃貸住宅管理業法の施行後初めての実施) 立入検査対象業者数 97社 検査実施期間 23年1月~2月
法令違反が認められ是正指導された業者 59社(60.8%)
延べ指導件数 113件

このとおり、今回の是正指導割合67.9%という数字は、前回を8.7ポイント上回るものとなる。前々回と比べては7.1ポイントのプラスだ。

なお、この点について、昨年度まではこんな声が業界内外から聞かれることもあった。

「法施行後、まだ日が浅い。過去より長期にわたって賃貸住宅の管理やサブリースを手がけていた業者の場合、法に合わせて書類を改変したり、業務の手順を見直したりといったプロセスが進んでいないところも多いだろう。次回の立ち入り検査からは、その辺が改まり、指導の割合はおそらく下がるのではないか」

しかしながら、結果として状況は悪化している。そのため、このような温かい声をかけてくれる人は、今回は多分現れないだろう。

業界挙げて、気を引き締めてもらいたい。

「当局の検査が入ればその対象となったうちの7割近い業者に法令違反が指摘され、指導を受ける」―――。いかにも惨めではないか。

微罪(?)と重罪

賃貸住宅管理業法の条項ごとの指導件数が公表されている。挙げていこう。

  1. 管理受託契約の締結前の書面の交付(重要事項説明)義務違反(法第13条関係)
    ……35件(前年度26件)
  2. 管理受託契約の締結時の書面の交付義務違反(法第14条関係)
    ……60件(前年度57件)
  3. 賃貸住宅管理業者の財産の分別管理義務違反(法第16条関係)
    ……7件(前年度2件)
  4. 賃貸住宅管理業者の従業者証明書の携帯等義務違反(法第17条関係)
    ……42件(前年度22件)
  5. 賃貸住宅管理業者の帳簿の備付け等義務違反(法第18条関係)
    ……41件(前年度37件)
  6. 賃貸住宅管理業者の標識の掲示義務違反(法第19条関係)
    ……22件(前年度13件)
  7. 賃貸住宅管理業者の委託者への定期報告義務違反(法第20条関係)
    ……20件(前年度16件)
  8. 特定転貸事業者等の誇大広告等の禁止義務違反(法第28条関係)
    ……6件(前年度7件)
  9. 特定賃貸借契約の締結前の書面の交付(重要事項説明)義務違反(法第30条)
    ……13件(前年度7件)
  10. 特定賃貸借契約の締結時の書面の交付義務違反(法第31条関係)
    ……19件(前年度17件)
  11. 特定転貸事業者の書類の閲覧義務違反(法第32条関係)
    ……26件(前年度24件)

これらのうち、とりわけ重要な違反を挙げるとすれば、次の2つになるだろう。

  • 3.賃貸住宅管理業者の財産の分別管理義務違反 7件(前年度2件)
  • 8.特定転貸事業者等の誇大広告等の禁止義務違反 6件(前年度7件)

(他にも、たとえば1、2、9、10―――それぞれの書面交付義務違反といったなかに深刻な事例が個別に存在するかもしれないが、公表の限りにおいては明確ではない)

口座を別ける―――は、賃貸管理基本のモラル

重要な違反、まずは3だ。(賃貸住宅管理業者の財産の分別管理義務違反)

ここでは、

「管理業務において受領する家賃等の金銭を管理するための口座を自己の固有財産を管理するための口座と明確に区分していないなど」

と、国交省が例を挙げている。

要は、賃貸物件の所有者であるオーナーのものであるお金(入居者が支払った家賃等)と、自社のお金がきちんと分別されていないということになる。

これは、当該業者において、サブリースを含む賃貸住宅管理業を行う上でもっとも基本的、かつ大切なモラルが欠けていることを示すものだ。

他人の財布と自分の財布を一緒にしてはいけないのだ。

事業者としての姿勢が問われるとともに、(オーナーにとっての)実害に結びつきやすい火種をかかえているとの指摘も免れ得ない問題となる。

依然として無くならない、重要な説明・開示の不備

一方、8だ。(特定転貸事業者等の誇大広告等の禁止義務違反)

こちらでは、

「特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃の額等の賃貸の条件やその変更に関する事項、特定賃貸借契約の解除に関する事項の記載が無い(借地借家法に関する事項の未記載等)など」

と、例が挙げられている。

契約相手であるオーナーに対し、リスクを説明しようとしていないか、説明が不足しているのだ。

サブリースでは、賃貸オーナーは、物件の運営に関するあらゆる手間から解放される。この方法を選ぶもっとも大きなメリットがそこにある。

その代わりになるひとつとして、オーナーは重いリスクを背負う。主には借地借家法の規定により、家賃の設定や契約の継続に関わる主導権を業者に握られてしまうのだ。

(家賃の額を維持するか、入居者募集を容易にするため下げるか。契約を続けるか、やめるかといった、重要な判断が行われる場面では、業者は、借家人として上記法律の強力な保護を受けられるため、常に意志を通しやすい立場に立つ)

そして、このことは、場合によってはオーナーの人生における取り返しのつかない損害にもつながりかねない。

よって、知識に勝る業者側は、オーナーを募る広告の段階から、以上の点をしっかりと相手方に理解してもらわなければならないのだ。

ところが、そこに不備のある事例が、今回の立ち入り検査では6件見られたということだ。

数こそ少ないが、必ず0であるべきレベルのものと考えれば、前回の7件に引き続き、これは厳しい数字といえるだろう。

以上、今回の国交省による一斉立入検査の結果については、下記で内容をご確認いただける。

国土交通省 賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者への全国一斉立入検査結果(令和6年度)

サブリースとマスターリース

最後に添えておきたい。

「サブリース」「サブリース契約」というが、正しくは、オーナーがサブリース業者に物件を貸す契約行為は「マスターリース」となる。サブリースは、それを業者が入居者へ転貸する部分を指す。

よって、先ほど「サブリースでは、賃貸オーナーは、物件の運営に関するあらゆる手間から解放される」としたが、ここは本来「マスターリースでは―――」と、言わなければならないことになる。

さらに、このマスターリースを賃貸住宅管理業法は「特定賃貸借契約」とし、国交省のリリース等においてもそれに沿った記述がされている。

以上、知っておきたいポイントだ。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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