子どもからは何も奪わない、離婚後は夫婦から新しい家族へ
しばはし聡子
2021/03/15
イメージ/123RF
離婚後も両親で子育てする共同養育を実践しているママのインタビュー。今回は別居後もお相手と「家族」のかたちを壊さず共同養育を続けているママにインタビューしました。
■結婚から離婚までの経緯を教えてください。
2015年にマッチングアプリで出会って結婚に至りました。当時から独身女性のサポートをしていましたが、アナログな生徒さんが多くマッチングアプリをおすすめしてもなかなか実際にやってくださる方がほとんどいなかったのです。そこで、私自身、自分の仕事上のリサーチも兼ねて1月から3カ月間、期間を決めてやってみたのがきっかけです。その間104人の男性とデートすることができ、そのなかのひとりが元夫でした。
3月に出会い5月で交際に発展、そして12月には結婚。当時、私の仕事がとても忙しく、「誰か手伝って!」と思っていたところだったので、元夫は会社をやめてビジネスパートナーにもなってくれました。
その後、17年に40歳で娘を出産しましたが、私自身体調と心境に大きな変化がありました。高齢出産だったためか、バセドウ病になってしまったのです。それを機に仕事に対する気持ちにも変化が出てきました。
それまではいかにビジネスを拡大するか?に目を向けていたのですが、もっと目の前の生徒さんに時間をかけてゆっくり向き合いたいと思うようになっていったのです。規模を縮小すると比例して仕事量も減るので、私ひとりで十分になりました。
元夫は結婚後に起業していたのですが業績は低迷していました。私が稼いでいたこともあってか彼は本気にならなかったのですよね。そんななか、意見の行き違いがあって「この人は地獄をみないと人生に本気にならない」と思い離婚を決意しました。
■その後、お相手はどうなったのでしょうか。
彼はどん底を経験しました。離婚した後も住む場所がなかったので、家賃や食費を私に払いながら1年ほど一緒に住んでいました。
彼が変わるきっかけになったのは、娘と八百屋にいったときのこと。娘が「苺を食べたい」と言ったそうなんですが、そのとき自分はかわいい娘に500円のいちごを買うことができなかった、と。そこから奮起して変わりました。今は私以上に稼いでいます。
私がいま彼と親同士の関係を再構築できているのは、人として尊敬できる部分があるからです。離婚しなかったらこうはならなかったと思います。娘を失うかも、と思ったときが一番恐怖だったみたいですね。離婚した今の方が、断然いいお父さんになりました。娘も父親のことが大好きです。
■具体的にどんなかたちで共同養育をされていますか。
私と娘の家の近くに元夫が住んでいます。週2回は彼が保育園のお迎えから夜の寝かしつけをやるルールで、その日は元夫は泊まって家族で川の字で寝ます。
私はその間、勉強したり友達と会ったりして、娘が寝付いてから帰るというスタイルでしたね。いまはコロナ禍で飲食店がやっていないので、家族3人で一緒に食事をする機会も増えました。ちなみに、公正証書には面会は月2回と書かれていますが、それより全然来ています。娘に会いたくなったら急に家に来たりしていますよ。
お風呂も3人で入ります。これは、誰に話してもびっくりされるのですが、男女ではなく家族なので違和感がないのです。強いていうなら実家でお風呂に入る感覚です。子どもが喜ぶので一緒に入ってます。
しょっちゅう会っているし、まわりから見ても普通に仲のいい家族なこともあって、実はまだ娘に離婚したことを伝えていないのです。あと1,2年したら「パパとママは夫婦は卒業したけれど今も変わらずママとパパだよ」って伝えようと考えています。
■離婚後、相手との関わりで心がけていることは?
最低限の礼儀は気を付けます。例えば依存しない、甘えないということ。こちらも期待通りの反応や行動がなくても怒ったりはしません。また、元夫が家に泊まるときは一泊1000円払ってもらっています。家での食費は私が払い、外食は元夫が払うと決めました。元夫も遠慮なく来られるし大きなトラブルもないですね。
それから、毎月1回、元夫の祖父母の家にも娘ひとりで泊まっています。元夫は一人っ子なので、義母も孫である娘を本当に可愛がってくれるのです。子どもにとって関わる大人は多ければ多い方がいいと思うのです。そこは減らさないように意識していますね。娘からは何も奪わないようにしています。
私にもしものことがあったら……と思うと、子どもを愛する大人が沢山いることはセーフティネットになると思います。
■元パートナーとの復縁や今後の家族の形についてはどのようにしていきたいですか?
再び元夫と籍を入れることで娘のメリットがあれば考えなくもないですが、いまのところその可能性は限りなく低いですね。
離婚した直後は、婚活して彼氏がいたこともありますが、今は、「娘と一緒に過ごしたい、仕事や勉強もしたい」という思いが強く、異性に対して優先順位は低くなりました。異性は5位か6位ですね。いまの家族のかたちにほかの男性が入ってくることは娘にとって最善ではないと思うのですよね。
これからは多様な家族のあり方が増えると思います。夫婦や家族は、本人たちが幸せであればどんな形でもいいですね。
■離婚後、新たな相手とのパートナーシップを築いていくための心得はありますか?
まず、精神的、経済的に自立していることです。精神的な自立というのは、一人でいるのが寂しいからといって、他人やその寂しさから逃げないこと。ひとりでもきちんと自分を幸せにできる人じゃないとほかの人を幸せにできないと思います。
また、パートナーと意見が折り合わなかったり衝突し合うこともあるでしょう。他人だから価値観が違って当たり前。言わなくても分かってくれることなどあり得ません。きちんと伝えて話し合うことが大切です。
話し合いのポイントは、感情のぶつけ合いではなく、関係をより良くするためだと意識するとよいですね。察してほしいなんていうのは甘えですし、自分の意思を伝える権利を放棄しています。パートナーシップを築くには自分自身の伝える努力が必須です。
■離婚後の人生に悩んでいる方にメッセージをお願いします。
大切なことは、「一日を自分がご機嫌で過ごせるか」です。人間ってほぼ考えなくていいことで考えて悩んでいると思うのです。例えば今考えなくていい過去と未来のこと。過去と未来にとらわれていると一番大切な今が空っぽになっちゃいます。
そして、「いくら考えても真実は分からない」ことは考えないということです。例えば、人の気持ち。あの人は何を考えているのか?なんて本人しか分からないことです。勝手に憶測しても不安になるだけ。考えることをやめて、そのエネルギーと時間を自分に使うだけでご機嫌の時間が増えると思いますよ。
余計なことを考えず相手を責めずに、きちんと自分の意見を伝えていくことは大人の義務です。同居中にそれができれば離婚にならずに済むかもしれないですよね。
離婚という選択をすることは決して悪いことではないと思います。私の場合は、離婚したことで元夫との関係がよくなりました。
恋愛、結婚、離婚はこれからいつだってできる。結婚・離婚していてもしていなくても生き方はいろいろあります。人生一度きり。今はこの生活を思い切りを楽しみたいと思っています。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️