離婚or修復の両極ではない夫婦のカタチ
しばはし聡子
2020/11/30
イメージ/123RF
コロナ禍、自宅で夫と共に過ごす時間が増えると、日頃は忙しさで見過ごせていた夫の嫌な部分が浮き彫りになり、「離婚すれば幸せになれる、離婚すればすべてがリセットされ第二の人生を歩める」と離婚に幻想を描いてしまうことがあったりしませんか。
夫が不在の日が続いたり摩擦がないときには「このままもう少し様子を見ようかしら」と思える日もあれば、些細な口論が大事になり険悪な日が積み重なると「もう絶対に無理」とムクムクと離婚への意志が固くなり、まだ見ぬ離婚後の未来へ期待が高まる日もあったりして。
夫にとっては些細なことでも妻にとっての積み重ねは、足し算どころか掛け算になって不満が膨れ上がりいつしか飽和状態に。ギリギリで我慢している気持ちを、最終的に離婚へ後押しするのは、ほんのちょっとしたそれこそ夫にしてみたら記憶にないくらいの出来事だったりするのです。
事情はそれぞれではありますが、離婚と決めて動き出すとゴングが鳴ったかのように一気に始まっていきます。そして、自分の頭の中で考えているときは自分の思うがままの未来を描けますが、離婚は人を巻き込んでいくので、想定外の方向に進んでいくこともなきにしもあらず。迷っているときこそじっくり時間をかけて、自分の心の奥底に気持ちを整理していき後悔しない選択をすることが大切です。
◯選択肢を広げよう
離婚をして縁を切るか、または夫婦仲を改善して修復するか、ついこの二択で考えてしまって、「修復はできないから離婚だわ!」と決断をしてしまうのは要注意。とはいえ、「離婚はしないけれど夫婦仲を取り戻すことも難しい」と悩み続けるのもつらいですよね。答えは離婚 or 修復だけではありません。両極で考えるのではなく、いくつか選択肢を持っておくだけでも気持ちが楽になるものです。
・修復
「もうダメ」と見切りをつけるその前に、修復に向けてできることがまだ残っていないか、できるかぎりのことはやってみましょう。まずは、修復のための試みとして、あなたが思い詰めていることや求めていることを夫に伝え、夫がどう感じているかを聴くところから。夫の姿勢によって気持ちが整理できるかもしれません。
ますます惨めな想いをするかもしれないと思うと投げ出したくなりますが、「やれることはすべてやりきった」と思えると今後の決断に後悔がなくなります。一人で抱え込まずに心の専門家などの第三者に相談するのもひとつです。後に出てくる「相談相手選びは慎重に」を参考にしてください。
・継続
修復できるに越したことはありませんがハードルが高い場合は、修復にパワーを注ぐことはないけれど、同居生活を継続する方法です。子どものためやお金のためと割り切って、自分は自分で生活を楽しむ、できるだけ接点を子どものこと以外で持たない、口論もしないという、いわば快適に仮面夫婦を続けるという選択です。
離婚をするには経済的自立が必須です。自分自身で自活に向けた稼ぎの見通しが立てられない、子どもを育てながら働くことに自信がないという人は、感情だけで離婚へ先走るのではなく、いかに快適に仮面夫婦生活を過ごせるかを考えるのが建設的です。
夫婦関係の修復が困難な場合は、いずれ離婚の選択をできるように、同居中に資格を取ったり仕事をしたり、経済的自立をはかるようにしていきましょう。不思議と仕事などやりたいことが見つかると、夫への不満を考える時間がなくなり、また、視野が広がることで魅力的になると夫婦関係がよくなるといったこともあるかもしれません。選択肢を広げられるように準備しておくのもいいでしょう。
・別居
同居生活の継続が難しい場合の選択肢が「別居」です。どっちつかずでモヤモヤするのではないかと思う人もいるかもしれませんが、経過観察やいずれ選択するであろう離婚に向けた徐行運転という意味でも有効です。離れて暮らして精神的に安定するのか、逆に生活への不安などから気持ちが不安定になるのか、自分自身の気持ちを確かめる時間にもなります。
ただ、別居は当然のことながら、家賃や光熱費など費用がかかりますので経済的な見通しも立てたうえで行うのが理想です。また、修復の可能性も残しておきたいのであれば、別居をする際には夫に内緒である日突然夜逃げのように出ていくのではなく、きちんと話し合ったうえで別居をすることが賢明です。
そして、肝心なのが子どもの気持ち。子どもにとっては別居も離婚も親と離れることには違いがなく、別居の時点で大きなダメージを受けることになります。子どもを連れて別居を考えている場合は、学区を変えずに転校しなくて済むようにするなど、子どもの環境を極力変えないようにする配慮も必要です。遠方の実家へ引っ越すことなどを想定している場合は、子どもへのダメージをきちんと把握したうえで計画を立てましょう。
・離婚
最終的な選択肢が「離婚」です。夫婦関係を完全に解消することで夫との関わりから解放され、あらたな人生を歩み出すことができるため、精神的な解放感は大きいです。
ただ、離婚しても元夫とは子どもの親同士として関係が続いていくので、いかに争わずに離婚し、その後どうやってストレス少なく関わっていくかが離婚後の人生をハッピーにできるかどうかのキモになっていきます。
◯家族全員のダメージを最小限に
迷いがあるうちは、同居生活を継続しながら別居や離婚をシミュレーションしてみるとよいでしょう。また、選択ができるために経済的な自立をしておくことは必須です。仮に離婚を選択した後に待ち受けているのが貧困生活というのでは本末転倒。
また、離婚しても養育費や国から支援をもらって生活しようと楽観的に考えている人もいるかもしれませんが、養育費はあくまで子どもの養育にかけるものですから生活費は自分で稼がなくてはなりません。自活できる自信ができてから別居や離婚の選択をすることが望ましいです。
そして、なにより大事なことは自分だけではなく、子どものダメージを最小限にすること。いくら嫌いな夫でも子どもにとって父親であることは変わりません。つまり、たとえ離婚しても親同士の関係も続きます。
焦りは禁物。「離婚すればハッピーになれる」と感情で行動するのはなく、子どもの未来も見据えることが大切ですね。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️