世界遺産「ブダ城」で開催される「ブダペスト・ワインフェスティバル」から世界三大貴腐ワインのひとつを試飲レポート(2/3ページ)
パップ英子
2016/09/25
広い会場内には、165ものブースが並ぶ
(c)FinoMagazin ( http://www.finomagazin.com/ )
パレードの後についていくと、ブダペスト・ワインフェスティバルの会場となるブダ王宮の入り口が見えてきました。
まず、このエントランスの脇にあるチケット売り場で入場券を購入します。入場料は3,000フォリント、日本円に換算すると1,100円程度です。
入場料を払うと、スタッフが「Festipay Card」(*2)とワイングラス1脚、グラス収納するための小さな布製バッグ、そして会場マップを手渡してくれました。
「Festipay Card」はSuicaのようなICカードで、会場内の各ブースでワインや料理をオーダーする際、現金ではなくこのカードを読み取り機械にタッチして支払う仕組みになっています。そのため、受付で入場料を支払う際に、カード内にもある程度のお金をチャージしておきます。
会場となったブダ王宮は一国の居城なだけあってとても(敷地が)広いので、フードコーナーも含めて総勢165ものブースが出店しています。そこで、まずはマップを念入りにチェック。時間はあっという間に過ぎてしまうと考えた筆者は、一番試飲してみたいコーナーから廻ることにしました。
ワイン界の有名人、ヒュー・ジョンソン氏が携わる「ロイヤル・トカイ」を試飲
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まず目に止まったのが、パンフレットの会場マップに記載されていた「Tokaji Udvar(トカイ・ウドヴァル)」。そこはトカイの中庭という意味のコーナーです。お目当てのトカイ産ワイナリーが数多く出店しているその中庭に向かうと、「Royal Tokaji(ロイヤル・トカイ)」(*2)のブースが目にとまりました。
(*2)ロイヤル・トカイの正式名称は「The Royal Tokaji Wine Company(ザ・ロイヤル・トカイ・ワインカンパニー)」。以下、RTWCと略します。
RTWCは1990年、トカイ地方にある約60もの葡萄の栽培農家と国内外からの投資家たちがとともに立ち上げた、トカイ初のワインカンパニーです。このワイナリーを設立するために最も尽力し、自身も経常者のひとりとして同ワインを世界的な名声を得るまでに押し上げた著名な人物がいます。
その人物は、世界で最も有名なイギリスのワイン評論家、ヒュー・ジョンソン氏です。
ワイン評論家であるヒュー・ジョンソン氏は、世界のワイン業界、もちろん日本のワインマーケットにも多大な影響を与え、今日もなおワイン界に貢献し続けています。また、彼は、『ポケット・ワインブック』というベストセラーの書籍を毎年、出版し続けていることでも有名です。
ちなみに、若い頃、ワインアドバイザー資格取得のための試験勉強を続けていた筆者にとって、同氏のポケット・ワインブックはかかせない参考書であり、いまもなお、バイブルのような存在です。
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ヒュー・ジョンソン氏が経営に関わるRTWCは、世界的にもかなり評価が高いワイナリーとして知られています。
筆者がRTWCのブースでオーダーしたのは、葡萄の糖度がかなり高くて甘い「貴腐ワイン」です。
貴腐ワインについて、読者の皆さんはご存知でしょうか? 日本では今日、世界中からさまざまな貴腐ワインが輸入されているので、貴腐ワイン=甘いデザートワインと認識がある方も多そうです。
そう、甘くて美味しい貴腐ワインは名前の通り、貴腐葡萄からつくられるワインのこと。馥郁とした香りと甘美な風味で希少価値がとても高いワインであることから、「ワインの帝王・帝王のワイン」と讃えられています。
この貴腐葡萄とは、完熟した葡萄に貴腐菌(ボトリティス・シネレア)が付着してできる特殊な葡萄のことです。この貴腐菌が葡萄の果皮にあるロウ質を壊すことで、葡萄果汁の中の水分が蒸発します。それにより葡萄の糖度がとても濃縮され、木になったままで乾葡萄のような状態になるのですね。
トカイ地方の貴腐ワインはフルミント種といって、遅積みの葡萄を原料に使用しています。トカイ・フルミント種から生まれる極上の貴腐ワインは、フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼとともに、世界三大貴腐ワインと呼ばれるほど、世界中のワイン愛好家たちに親しまれているのです。
この記事を書いた人
“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)
ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/