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25周年を迎えたハンガリー最大級の祭典

世界遺産「ブダ城」で開催される「ブダペスト・ワインフェスティバル」から世界三大貴腐ワインのひとつを試飲レポート

パップ英子パップ英子

2016/09/25

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ハンガリーで最も大規模なワインの祭典


(c)FinoMagazin ( http://www.finomagazin.com/ )

食欲の秋、美味しい食事とお酒を楽しみたい季節となりましたね。

そこで今回と次回の2回にわたって、この時季にふさわしいイベントについてのレポートをお届けします。お届けするのは、ブダペストで毎年行なわれる『BUDAPEST BORFESTIVAL(ブダペスト・ワインフェスティバル)』(*1)。今年で25周年を迎えた、ハンガリーで最も大規模なワインの祭典です。

今年のワインフェスティバルは、9月8日〜11日の4日間にわたって開催されました。会期中はハンガリー全土から選出された優良なワイナリーの銘醸ワインはもちろん、フランスやオーストリアなど、ほかのEU諸国のワインも試飲が楽しめます。

また、それらの素晴らしいワインだけでなく、美味しいハンガリーのオリジナル・グルメが堪能できることも大きな魅力です。このワインフェスティバルは海外からの観光客にも大人気のイベントなのです。

会場となるのは、世界遺産のお城である『ブダ王宮』。まさに『食欲の秋』を堪能できるこのイベントは、多くのワイン愛好家から親しまれており、毎年、ヨーロッパをはじめ世界中からたくさんの人々が会場となるブダ王宮を訪れます。

以前、本コラムでは「Rossalia」という、ロゼ&シャンパンワインのフェスティバルについて取り上げました。(「Rossalia」についてはこちらをご覧ください: http://sumai-u.com/?p=5298 )そこでも簡単にハンガリーのトカイ産ワインに触れていますが、今回はさらに詳しく、同地方のワインについて取り上げていきます。

ハンガリーのトカイ・ワインが世界中のワイン愛好家に人気がある理由とは何でしょうか。それは、実はトカイのワインには、世界の三大貴腐ワインのひとつと讃えられるほど、甘美かつ極上な風味を楽しめる白ワインがあるからです。

(*1)『BUDAPEST BORFESTIVAL』の「BOR」とは、ハンガリー語でワインを意味します。

最終日に行なわれる収穫を祝うパレードも見どころ満載!


(c)FinoMagazin ( http://www.finomagazin.com/ )

筆者がワインフェスティバルを訪れたのは、最終日である9月11日の昼下がりでした。

地下鉄(メトロ)、トラム、バスと公共交通機関がすべてそろうブダ側の大きな駅、セール・カールマンテールからから16番バスに乗ってブダ王宮へと向かいます。最寄りのバス停で降りて会場へ向かって歩いていると、とても賑やかな音楽が聴こえてきました。

曲が聴こえるほうへ近づくと、トランペットやホルン、ギター、ドラムなどの男性メンバーで構成された音楽隊が、上の写真のように仮装しながらパレードしていたのです。

音楽隊に続いてやってきたのは、グルーンとレッドの、まるでクリスマスのようなヴェルベットの衣装に身を包んだ、中世の貴族のような装いの『ワイン騎士団』たちです。


(c)FinoMagazin ( http://www.finomagazin.com/ )

パレードはさらに続きます。音楽隊を先頭に、ワイン騎士団に続いて、ハンガリーの伝統的な民族衣装に身を包んだ人たちがやってきました。そのなかには可愛らしい少女の姿まで。

写真に映る女性の衣装をごらんください。この衣装に施されているのは、ハンガリーの名産品として知られる、フォークロアな花柄とレース仕立てが愛らしい「カロチャ刺繍」です。

このパレードは、ワインの原料である葡萄が無事に収穫できたことを祝うための『Harvest Parade』というものです。今年の収穫を感謝し、来年もまた豊穣へと祈りを捧げるために行なわれる貴重なセレモニーです。参加者たちはゆっくりと歩きながら、とても長い行列をつくっていました。

広い会場内には、165ものブースが並ぶ


(c)FinoMagazin ( http://www.finomagazin.com/ )

パレードの後についていくと、ブダペスト・ワインフェスティバルの会場となるブダ王宮の入り口が見えてきました。

まず、このエントランスの脇にあるチケット売り場で入場券を購入します。入場料は3,000フォリント、日本円に換算すると1,100円程度です。

入場料を払うと、スタッフが「Festipay Card」(*2)とワイングラス1脚、グラス収納するための小さな布製バッグ、そして会場マップを手渡してくれました。

「Festipay Card」はSuicaのようなICカードで、会場内の各ブースでワインや料理をオーダーする際、現金ではなくこのカードを読み取り機械にタッチして支払う仕組みになっています。そのため、受付で入場料を支払う際に、カード内にもある程度のお金をチャージしておきます。

会場となったブダ王宮は一国の居城なだけあってとても(敷地が)広いので、フードコーナーも含めて総勢165ものブースが出店しています。そこで、まずはマップを念入りにチェック。時間はあっという間に過ぎてしまうと考えた筆者は、一番試飲してみたいコーナーから廻ることにしました。

ワイン界の有名人、ヒュー・ジョンソン氏が携わる「ロイヤル・トカイ」を試飲


(c)FinoMagazin ( http://www.finomagazin.com/ )

まず目に止まったのが、パンフレットの会場マップに記載されていた「Tokaji Udvar(トカイ・ウドヴァル)」。そこはトカイの中庭という意味のコーナーです。お目当てのトカイ産ワイナリーが数多く出店しているその中庭に向かうと、「Royal Tokaji(ロイヤル・トカイ)」(*2)のブースが目にとまりました。

(*2)ロイヤル・トカイの正式名称は「The Royal Tokaji Wine Company(ザ・ロイヤル・トカイ・ワインカンパニー)」。以下、RTWCと略します。

RTWCは1990年、トカイ地方にある約60もの葡萄の栽培農家と国内外からの投資家たちがとともに立ち上げた、トカイ初のワインカンパニーです。このワイナリーを設立するために最も尽力し、自身も経常者のひとりとして同ワインを世界的な名声を得るまでに押し上げた著名な人物がいます。

その人物は、世界で最も有名なイギリスのワイン評論家、ヒュー・ジョンソン氏です。

ワイン評論家であるヒュー・ジョンソン氏は、世界のワイン業界、もちろん日本のワインマーケットにも多大な影響を与え、今日もなおワイン界に貢献し続けています。また、彼は、『ポケット・ワインブック』というベストセラーの書籍を毎年、出版し続けていることでも有名です。

ちなみに、若い頃、ワインアドバイザー資格取得のための試験勉強を続けていた筆者にとって、同氏のポケット・ワインブックはかかせない参考書であり、いまもなお、バイブルのような存在です。


(c)FinoMagazin ( http://www.finomagazin.com/ )

ヒュー・ジョンソン氏が経営に関わるRTWCは、世界的にもかなり評価が高いワイナリーとして知られています。

筆者がRTWCのブースでオーダーしたのは、葡萄の糖度がかなり高くて甘い「貴腐ワイン」です。

貴腐ワインについて、読者の皆さんはご存知でしょうか? 日本では今日、世界中からさまざまな貴腐ワインが輸入されているので、貴腐ワイン=甘いデザートワインと認識がある方も多そうです。

そう、甘くて美味しい貴腐ワインは名前の通り、貴腐葡萄からつくられるワインのこと。馥郁とした香りと甘美な風味で希少価値がとても高いワインであることから、「ワインの帝王・帝王のワイン」と讃えられています。

この貴腐葡萄とは、完熟した葡萄に貴腐菌(ボトリティス・シネレア)が付着してできる特殊な葡萄のことです。この貴腐菌が葡萄の果皮にあるロウ質を壊すことで、葡萄果汁の中の水分が蒸発します。それにより葡萄の糖度がとても濃縮され、木になったままで乾葡萄のような状態になるのですね。

トカイ地方の貴腐ワインはフルミント種といって、遅積みの葡萄を原料に使用しています。トカイ・フルミント種から生まれる極上の貴腐ワインは、フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼとともに、世界三大貴腐ワインと呼ばれるほど、世界中のワイン愛好家たちに親しまれているのです。

「トカイ・フルミント」の貴腐ワインは、スイーツとの相性が抜群!

そんな遅摘みの葡萄品種「トカイ・フルミント」の、豊かな香りと甘く上品な味わいがする貴腐ワイン、「Royal Tokaji Blue Label 5 puttonyos Aszu」を最初に試飲しました。琥珀色の白ワインを口に含んだ途端、豊かな甘味とフルミントの爽やかなフレーヴァーが漂い、筆者はその大変贅沢な味わいに深く感動しました。

写真をご覧いただくと、ワイングラスに注がれたその葡萄酒は琥珀色のような色合いですよね。この色合いを見ても、樽でしっかりと熟成された上質なワインであることがわかります。

ちなみにワイン・テイスティングの作法については、以前、「Rossalia」をレポートした記事でご紹介していますので、そちらの記事もあわせてご覧ください( http://sumai-u.com/?p=5298 )。

トカイ・フルミント種から生まれる貴腐ワインは、ケーキやクッキーなど、スイーツとともにいただくのがとてもおすすです。

ワインの世界ではそれぞれのワインとともにいただくと、いっそう美味しさが増す料理があり、そんな相性の良いワインと料理を組み合わせることを「マリアージュ」と表現します(マリアージュはフランス語で結婚のこと)。

筆者がこの貴腐ワインのマリアージュとして選んだのは、ヨーロッパ最古のカフェとして知られる「ジェルボー」のイチゴのタルト。隣で出店していたブースが「ジェルボー」だったので、きっと主催者もマリアージュの観点から、意図的に隣り合わせにしていたのでしょう。

ちなみにジェルボーは現在、東京青山にも店舗があるので、よかったら足を運んでみてはいかがでしょうか。

少々話がそれてしまいましたが、テイスティングに話を戻しましょう。ほど良い甘さとイチゴの酸味が爽やかなジェルボーのタルトは、ロイヤル・トカイの貴腐ワインと相性抜群でした!

貴腐ワインは原料となる葡萄の糖度が高ければ高いほど、ワインとして価値が高く美味しいワインとみなされます。このワインは、ボトルのラベルに記載があった「5puttonyos(puttonyos=プットニョス)」の文字が、上質な貴腐ワインであることを物語っていました。プットニョスの意味については、これまた長くなるので後編でご紹介します。

後編のワインレポートも、どうぞお楽しみに!

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この記事を書いた人

“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)

ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/

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