ドナウ川に浮かぶボートレストラン「Vogue」のインテリアと夜景をレポート
パップ英子
2016/08/28
“ドナウの真珠”を堪能できるボートレストラン
出所: (C)FinoMagazin( http://www.finomagazin.com/ )
ブダペストの街並は世界遺産に指定されるほど、美しいことで知られ、また、夜景の美しさから“ドナウの真珠”と讃えられています。ブダペストは、日々、世界中から多くの観光客が訪れる大人気の観光都市です。
今回、お邪魔したのは、ブダペストで話題のレストラン。宿泊もできるというそのお店は、実はドナウ川に浮かぶBoat(ボート)なんです。
ハンガリーの首都であるブダペストは、ドナウ川をはさんで、王宮がある山側の閑静な住宅エリアがブダ側、そして、ドナウ川に架かる橋を渡ると、商業地として栄えるペシュト側があります。日本語表記では「ブダペスト」ですが、実は正式な発音だとブダ“ペシュト”なんです(ハンガリーでは「S」を”エス”ではなく、正しくは“シュ”と発音します)。
筆者の自宅はブダ側にあるため、ペシュト側に移動できるNo.4-6のトラム(路面電車)に乗車し、目的地へと向かいました。トラムは“マルギット橋”というブダとペシュトを結ぶ、観光スポットとしても大人気の橋を通過し、ブダ側からペシュト側へ向かいます。
ペシュト側に入って最初のトラムの駅、「Jászai Mari tér(ヤサイ・マリテール)」で降車してドナウ川沿いを歩くこと約15分。白く清潔感のある船体が目を引く、大きなボートが見えてきました。
グーグルマップを頼りに、最寄りのトラムの駅から歩いて向かいましたが、案内画面に表示された徒歩時間より10分以上長く歩いた気がします。
入り口には「CAFÉ RESTAURANT VOGUE」という文字。ここが今回レポートするボートのレストランです。手前に見える桟橋を渡り、「Vogue」の店内へ入ったのは午後8時近く。その時間だと、日本ではおそらく、すでに陽が沈んで夜空に変わっていますよね。
北欧の白夜とはまた違いますが、中欧ハンガリーの夏は夕陽の沈む時間がかなり遅く、午後8時台でもまるで夕方のような気分で過ごせるのです。
木の温もりが心地よい、開放的なインテリア
出所: (C)FinoMagazin( http://www.finomagazin.com/ )
このボート・レストランの名前は「Vogue Hajó」。Hajó(ハヨー)はハンガリー語で「ボート」の意味です。“ドナウの真珠”と讃えられるほど、宝石のように美しい夜景も楽しめるため、地元では評判のレストランです。
桟橋を渡ってボートのなかに入ると、ドアのガラスに「Vogue」の可愛らしいロゴがあしらわれています。ディテールにもセンスのよさを感じながら、エントランスのドアを開けると、木の温もりが感じられる、開放的なインテリアのBar(バー)空間が広がっていました。
「Vogue」の1階はカフェ&バーとなっていて、カウンター席もあります。私たちはお店のスタッフに、上のデッキエリアをすすめられ、手前に見える階段を上がって、上のフロアへと移動しました。階段を上ると、船内の2階とその先に見えるデッキ部分までテーブル席がいくつもあります。
出所: (C)FinoMagazin( http://www.finomagazin.com/ )
さらに階段を上ると、いよいよ外の眺めを満喫できるデッキ(甲板)スペースに。これは甲板からボートのなかを撮影した様子です。
「Vogue」ではレストランとしてのサービスはもちろん、結婚式、披露宴としての人気も高く、またカジュアルなパーティーや、いわゆるハンガリーでの女子会(のようなもの)、ビジネス会議等々、この広々とした空間はさまざまな用途に活用されているそうです。
店員さんにすすめられて、デッキエリアでも一番船体の外側、つまり、ドナウ川とその周辺の美しい夜景を一望できるテーブル席に着き、人気のトカイワインのグラスワインをオーダーしてみました。
トカイワインについては、以前の“ロゼ&シャンパン、ワインの祭典”コラムでレポートしていますので、宜しければそちらでチェックしてみてください。
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「Vogue」は海外からの観光客が多いらしく、ハンガリーではめずらしく、このレストランの店員さんは全員、英語対応が完璧のようでした。筆者のハンガリー語はまだまだ発展途上のため、言葉の部分では安心感を覚えました。
筆者がブダペストで暮らして感じたのは、ハンガリーの地方都市や田舎よりはさすがに首都なので、英語を話せる人は一番多いものの、実際にスーパーや市場、パン屋さん等々、実際にお店へ足を運ぶと、英語が話せないスタッフが圧倒的に多いのです。
ハンガリー料理だけでなく地中海料理や南スラブ料理も提供
出所: (C)FinoMagazin( http://www.finomagazin.com/ )
メインディッシュには「VIENNA-PORT」という名前がつけられたチキン料理をオーダー。オーダーから15分以内には、スタッフがメインディッシュを運んできてくれました。手前がパン粉で揚げたチキンの胸肉です。お味は、さっぱりとしていて普通に美味しかったです。
グルメレポーターのように気の利いたコメントを伝えるべきですが、グルメな国、しかも東京暮らしが長かったもので、どうしても正直な味の感想となってしまいました…。
ちなみに、ハンガリー料理は種類も豊富で、主にパプリカの粉をベースとしたメニューが多く、美味しいことで知られています。「Vogue」では海外のゲストが多いので、ハンガリーのオリジナル料理だけでなく、地中海料理や南スラブ料理(*)などもふるまわれています。
(*)南スラブ:バルカン半島周辺にいる旧ユーゴスラビアのセルビア、モンテネグロ、クロアチア、スロヴェニア、マケドニア、ブルガリアといった国々を指します。
出所: (C)FinoMagazin( http://www.finomagazin.com/ )
この日、一緒に来店した友人がオーダーしたのは、「DANUBE-DELTA」サーモンステーキのトマト添えといったシーフード料理です。
「Vogue」では、オーナーシェフがシーズン毎にメニューをすべて取り替え、旬の野菜や食材を使っているそうです。私がオーダーした「VIENNA-PORT」、友人がオーダーした「DANUBE-DELTA」といったように、どのメニューも船や景色にまつわるタイトルがつけられていて、そんなメニュー名にも粋なこだわりを感じました。
ちなみに、私がオーダーした“VIENNA-PORT”はメニューリストに英語で次のように表示されていました。
「Panko-crusted chicken breast with roasted potatoes and homemade pickled cucumber 2,990 HUF」
この「HUF」とは、ハンガリー通貨フォリントのことです。現在の通貨レートで日本円に換算すると、2,990.00 HUF = 1,093.83 JPY、約1000円ちょっとです。
きちんとしたレストランでメインディッシュが1,000円台なら安いと思うかも知れませんね。しかし、ハンガリーの人たちにとって2,990フォリントは、日本円の2990円と同じ感覚で、しかも料理だけでなく、この国で販売されているすべての商品には付加価値税といって日本の消費税に当たるものが27%も含まれています。
そう考えると決して安くない値段なのですが、日本から旅行に来られる方からすれば、そのような消費税が含まれていることは気にならず、物価が相当安いと感じるのでしょうね。
視線の先にはブダ王宮、“ドナウの真珠”も堪能できるディナー
出所: (C)FinoMagazin( http://www.finomagazin.com/ )
当コラムのタイトルにつけた“ドナウの真珠”。着席してから、しだいに夜空へと変わる頃、その言葉を体感できる時間がやってきました。
もう少しデッキ席からドナウ川全体を撮影できれば、もっと“ドナウの真珠”をご覧いただくことができるのですが、周りの席が他のゲストで埋まっていたので、自分のシートから撮影した様子がこの写真です。
写真中央に映るのは、手前にマルギット橋、その向こうに見える先端が尖っている建物、それがブダ王宮です。ブダ王宮についても以前のコラムでレポートしていますので、ぜひご覧ください。
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「Vogue」ではボート内での宿泊も可能
出所:(c)Vogue hajó / Facebook( https://www.facebook.com/voguehajo/photos )
そして、「Vogue」では、ボート内で宿泊も可能なんです。
レストランの入り口と反対側に、アパートの入り口があります。写真は、そのゲストルーム。やはり、木の温もりが心地よく、シックでセンスのよいインテリアですね。
「Vogue」にはアパート部分がふたつあり、1部屋で2〜4人まで宿泊が可能とのことでした。宿泊客には、ドナウ川クルーズや観光ツアーなどのブッキングサービスもしてくれるそうです。
ライトアップされたボートレストランも美しい夜景のひとつ
レストランのラストオーダーは午後11時とやや早めです。日付が変わる前に、Vogueを出て、帰路に就きました。
ボートを出て、桟橋の上から船体を撮影したのがこの写真。この丸いガラス窓を見ると、本当にボートのレストランであるのがわかりますよね。
「Vogue」自体はずっと停泊しているので、ドナウ川を周遊するクルーズレストランではありませんが、このようなボートのレストランがドナウ川沿いにたくさんあります。これらのライトアップされたボートレストランも、ドナウの真珠と呼ばれる美しい夜景を構成するひとつの要素なのです。
今回は、ブダペストの夏の風物詩ともいえる、ドナウ川での“船上ディナー”、現地暮らしの筆者オススメのボートレストラン「Vogue」の様子を、店内インテリアのポイントも交えてレポートしました。
首都ブダペストのみならず、ハンガリーにはまだまだ読者の皆様にご紹介したい素敵な観光スポットが満載です。現地からの取材レポートを今後もお届けしますので、どうぞお楽しみに!
この記事を書いた人
“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)
ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/