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スウェーデンで生まれた世界遺産の生みの親

スカンジナビア・デザインの巨匠「エリック・グンナール・アスプルンド」

パップ英子パップ英子

2016/04/10

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出所:Cassina (カッシーナ) 501 GOTEBORG1 ヨーテボリ,1 チェア(http://www.cassina-ixc.jp/shop/g/g27021935/)

偉大な建築家はスカンジナビア・デザイン最大の功労者だった!?

最近はスウェーデン家具と聞くと、購入者自身で組み立てられるリーズナブルなIKEAの家具を連想される方も多いのではないでしょうか? 今回は、北欧スウェーデンで生まれ、20世紀初頭の建築やインテリアを牽引した、偉大な建築家であり、名作椅子を残した、ひとりの巨匠について特集したいと思います。

その巨匠の名は、「エリック・グンナール・アスプルンド」。前回、ご紹介した“スウェーデン家具の父”カール・マルムステンと同様に、アスプルンドもまたスウェーデンが誇る、いえ、スカンジナビア・デザインを代表する巨匠として知られる人物です。


出所:(c)Erik Gunnar Asplund Biography - Infos - Art Market(http://www.erik-gunnar-asplund.com/)

1885年、スウェーデンのストックホルムで生まれたエリック・グンナール・アスプルンド。

アスプルンドは北欧建築の祖といわれる偉大な建築家ですが、彼は建築のみならず、その後の北欧デザイン界に多大な影響を与えた“ヨーテボリの椅子”をはじめ、未来を見据えたようなモダンで美しい家具も製作したことで有名です。

彼の代表的な名作家具は現在、カッシーナ(*)のイ・マエストリコレクションでも復刻販売されています。

(*)カッシーナ:モダンファーニチャーの最高峰と名高く、世界中のインテリア・ファンの憧れでもあるイタリアの最高級家具ブランド。

20世紀初頭から活躍した偉大な建築家として知られるアスプルンドですが、彼は少年時代、最初は画家を目指していたそうです。ですが、実の父と絵の先生に絵画の道を反対されたため、アスプルンドはスウェーデン王立工科大学で建築を学びます。

その後、彼は王立芸術大学に進学しましたが、大学の教育方針と自身の求めるものが合わず中退し、自ら私設学校「クララ・スクール」を立ち上げ、そこで、北欧で一流の建築家たちを招いて教えを請うたそうです。

世界遺産の「森の墓地」は、アスプルンドの代表作


出所:(c)Heritage - Skogskyrkogården(http://skogskyrkogarden.stockholm.se/in-english/heritage/)

1915年、エリック・グンナール・アスプルンドは、“ストックホル厶南墓地国際コンペ”で1等を獲得します。ここは後に「森の墓地」(スクーグスチルコゴーデン Skogskyrkogården)と呼ばれ、20世紀以降、墓地としては最初に世界遺産に登録された大変有名な場所です。

アスプルンドがもうひとりの建築家、シーグルド・レーヴェレンツ(Sigurd Lewerentz)とともに、1900年代初期に完成させたスクーグスチルコゴーデン。この墓地は、墓地の概念そのものを覆すようなユニークな設計で、当時の人々をとても驚かせました。


出所:skogskyrkogarden_2012_ja.pdf(http://fika10.com/dl/skogskyrkogarden_2012_ja.pdf)

自然と調和した美しいランドスケープを一目見たいと、国内外からの観光客が後を絶たない不思議な墓地。

スウェーデンの人々は、「死者は森へ還る」という死生観を持つそうです。そう、彼らにとって森は「故郷」であり、安らぎの場所。“森の墓地”は、スウェーデン人の死生観を表現しながら、自然とモダンな美しさが調和した“聖地”として、スウェーデン国民に深く愛されています。

上の画像は、森の墓地=スクーグスチルコゴーデンの内部マップ。少し字が見えにくいですが、ご覧いただくとさまざまな施設があることがわかると思います。


出所:http://skogskyrkogarden.stockholm.se/in-english/architecture/

左の写真は、1920年にアスプルンドが“森の墓地”の中に完成させた「森の礼拝堂」。

この礼拝堂や、1928年の「ストックホル厶市立図書館」など、自身の代表作を次々と生み出していったアスプルンド。

アスプルンドの自然と調和した、ぶれないモダンな世界観は、あのデザイン界の巨匠、アルネ・ヤコブセンや、最近、取り上げた“アルヴァ・アアルト”が後に生み出す傑作家具にも、かなり強い影響を与えていたそうですよ。

アスプルンドが手がけた名作チェア、「ヨーテボリ」


出所:ヨーテボリ(Goteborg)【東京インテリアショップガイド】家具・照明・雑貨(http://www.03interior.com/furniture_full_eid00075.html)

ここまで、アスプルンドが設計した素晴らしい建築物を見てきましたが、この先は、彼がデザインした椅子について、その美しいデザインで、後進に多大な影響を与えた名作チェアをご紹介します。

記事冒頭の写真に映る白い座面の椅子は、「ヨーテボリ」という名前の椅子です。このチェアもまた、アスプルンドが自身で設計した「イェーテボリ裁判所の増築」の際に、その施設に合うものをと考え、デザインしたものでした。

現在、あのカッシーナから「ヨーテボリ,1」としてリリースされていますが、アスプルンドが最初に手がけたオリジナルは、1937年にデザインされたものです。

写真をご覧いただくと、背もたれの曲線が自然で、ゆるやかにカーブのついた脚のデザインがとても上品で美しいですよね。いまでは見慣れた形状かもしれませんが、当時としてはとても新しく、モダンな印象のデザインだったそうです。

座面はほどよい固さで、小ぶりなサイズでありながらもその背もたれの曲線的な設計からか、ゆったりとした座り心地に包まれる、機能的にも素晴らしい椅子です。

彼が手がけた“世界遺産”や家具に宿った、その洗練されたモダンな世界は、今日の家具デザインや製作工程にとても大きな影響を与えています。

北欧スウェーデンを旅する時は、“森の墓地”やストックホルム市立図書館など、アスプルンドが私達に残してくれた美しい場所は、インテリア・ファンであれば、ぜひ訪れてみたいものですね。

今回はインテリアよりもスウェーデンの建築にフィーチャーした内容でしたが、いかがでしたか?

このインテリア連載で最初に取り上げた“アルネ・ヤコブセン”にも、とても大きな影響を与えた北欧建築の巨匠、エリック・グンナール・アスプルンド。前回のカール・マルムステンと同様に、20世紀を代表する名作を生み出した、アスプルンドの名前もぜひ、覚えていてくださいね。

 

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この記事を書いた人

“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)

ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/

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