築100年以上で現役! パリのアパートの「古いからこそ」の魅力とは?
桑田 唯
2016/01/12
新築が多い日本との違い
家を買うとなると、日本では家を新しく建てる場合が多いですよね。また、各地で毎年新しいマンションも建設されます。しかし、パリ市内では新しくマンションやアパートを建てるのはめずらしく、基本的には昔からある建物をずっと使用しています。
私の住むアパートも、大家さんいわく築100年以上なのだとか。今回は、アパート全体の様子をご紹介したいと思います!
築100年以上のアパート
築100年以上というと、1900年初期よりも前に建てられたことになり、日本だと大正時代よりも前ということになります。私の住むアパートは8階建て(日本式)なのですが、100年以上も前に比較的高層のアパートが建てられ、いまも残っているということに最初とても驚きました。
建てられたのは100年以上前ですが、室内やエントランスなどは奇麗にリフォームされている部分が多く、そこまで古さは感じませんでした。しかし、水道の配管などはまとめて一新というのはむずかしいようで、ところどころつぎはぎの修理の跡があったり、まさに水漏れしているパイプなどもありました。
実際に、パリのアパートでは水漏れによる部屋の浸水被害などが多いようで、住宅保険でも水漏れへの対策がしっかりと取られているようです。
各階の構成は、1階〜7階までは各3部屋ずつ、最上階の8階は屋根裏部屋になっており、8階には7部屋あります。
ちょっと変わったエントランス
私のアパートの造りは少し変わっていて、エントランスに入ったあと階段を上り、中庭(庭というか、広場のような感じです)に出て、中庭にあるもうひとつのエントランスに入ります。どういう経緯でこのような造りになったのかはわかりませんが、私はこの中庭の雰囲気が気に入っています。
写真は、中庭部分からふたつめのエントランスを眺めた様子です。手前にある黒い網の部分は、下の階の天窓になっています。
木でできた廊下、階段には赤いマット
廊下、階段は木でできていますが、ペルシャ絨毯のような柄の赤いマットが敷かれています。壁が薄く、隣の部屋の音もよく聞こえるアパートなのですが、このおかげで足音に関しては、そこまで大きく響き渡らずにすんでいます。
各部屋の前にも同じ柄のドアマットが敷かれています。
昔ながらのエレベーター
8階建ての建物なので、当然エレベーターも備えつけられています。エレベーターもかなり古く、扉はこのような金網になっています。映画タイタニックに出てくるようなエレベーターにちょっぴり似ているな、と思いました。
また、エレベーターのなかも狭くて、入居する際に大きなスーツケースを持って大家さんとエレベーターに乗ったのですが、かなりギリギリで大家さんとの距離が近くて少し気まずかったです。
ちゃんと動くのかな? と少し心配でしたが、特に問題は起きず、スムーズに使えました。また、金網の扉の内側にはもうひとつ透明の自動式の扉がついており、エレベーターが運転している最中も安全な仕様になっています。
また、金網の扉が開いているときにはエレベーターは動かず、エレベーターが動いているときには金網の扉が開かないようになっており、安全面にもちゃんと配慮されていました。
古いものを大切にするフランス人
フランス人の気質として、古いものを大切にするとよくいわれていますが、それはフランス人は新しいものを買うことにはあまりお金をかけず、バカンスや趣味に使うから、ともいわれています。古い家具や雑貨などが売られる蚤の市が盛んだったり、自分でつくるDIYが盛んだったりするのもそういった背景の現れなんだろうと思います。
また、スマートフォンなども、日本では最新の機種が出たら買い替える人が多いですが、フランスではまだ使えるのに買い替える、という人は日本と比べるとかなり少ないようです。
そのような精神が根底にあるので、100年以上も前に建てられたアパートがたくさん存在するんでしょうね。そしてそれは、日本で新しい建物がどんどん建つのが当たり前であるように、フランス人にとっては当たり前のことなのでしょう。
日本の建築事情とフランスの建築事情、どちらもある意味贅沢ですよね。
フランスの建物は、日本の建物のように新しくてきれいで便利というわけではありませんが、これまでの歴史の重みを感じられ、古いものならではのあたたかみがあるのが、とても心地よく感じました。
この記事を書いた人
インテリアコーディネーター
大学時代に建築を学び、雑貨バイヤーなどを経てインテリアコーディネーターの資格を取得。海外のインテリアや家具、その国ごとのライフスタイルや歴史に興味を持ち探求中。ワーキングホリデーでパリに滞在する。理想の住まいは、木や石などの自然な素材で作られた、秘密基地のような家。