「住居費」を抑えてデュアルライフ実現に向けた一歩を!
馬場未織
2016/01/05
住居費にいくらまで出せる?
デュアルライフを考えるとき、仕事の都合はなんとかつくとしても、現実的に負担が大きいのは住居費が2倍になることです。都市部に住んでいる人であれば、現在の家賃や住宅ローンがかなりの額に上るケースもあるでしょう。そのうえ、郊外や地方にもう1軒分の住居を確保するなんて! と思うかもしれません。住居費をいかに安く抑えるか、そのヒントを考えてみます。
そもそもいまは、家賃やローンに年間いくら当てているでしょうか。ごく一般的には、手取りの収入の25パーセント、どんなに高くても30パーセント以下に抑えるべきといわれます。
たとえば年収が500万円の場合、25パーセントに抑えるなら、月額の家賃やローンは10万4000円までが妥当です。あまりに住居費が高いと、家計を圧迫したり、将来に向けた貯蓄が一切できなくなったり、何かと支障が出てきます。
この計算で少し余裕があるなら、その分をデュアルライフ先の住居費にあてても大丈夫という考え方ができます。もしギリギリだけどデュアルライフに本気で挑戦したいなら、現在の暮らし自体をダウンサイズするという選択肢も考えるべきでしょう。家財道具を整理して、もう少しコンパクトな部屋を探すとか、多少駅から遠くなっても、家賃の安いエリアを探すのが一案です。
また、デュアルライフ先の住居については、現在の住まいと同じ利便性や快適さを求めると、必然的に住居費が高くなりがちです。都市部からのアクセス、家の広さ、給湯や冷暖房など設備の新しさなど、自分が大事にしたい優先順位を見極め、目をつぶってもいい要素を明らかにしておく必要があります。
むしろ「同じような暮らしをわざわざ2カ所でしなくてもいい」と割り切り、それぞれの家に求める要素を絞ることで、メリハリのついたライフスタイルをつくりあげていくことできます。
デュアルライフ初期に特にオススメのAirbnb
いちばん住居費の下げ幅が大きい要素は、「住居=固定費」という固定概念を捨てることです。「自分だけ場所」という考えを手放しましょう。現在さまざまな分野で「シェア」が流行っていますが、住居についてもシェアの考え方を取り入れることで、グンとコストを下げることができます。
その手段のひとつとして有望なのが話題のAirbnb (エアビーアンドビー)。Airbnbとは米国生まれのウェブサービスで、「地元の家で、暮らすように旅をしよう」というキャッチフレーズのもと、家や部屋を一定期間貸したい人と借りたい人を結ぶマッチングサービスです。日本でも着々とユーザー数が増えています。
主には短期の滞在を想定しているようですが、たとえばデュアルライフを始めて間もない人や、仕事の繁忙期を避けて毎月中旬の数日間だけ使いたいといったニーズであれば、まずはAirbnbで十分かもしれません。
「それなら旅館やホテルでも?」と思うかもしれませんが、旅行者向けのサービスでは、どうしても「暮らす」という実感がわきにくいのが現実。Airbnbなら、ごく一般の住宅を利用できるので、生活者目線で地域を眺められるのは意外に見逃せないメリットです。
今はまださまざまな規制がかかっていますが、2016年4月にはAirbnbが全国で解禁になるという話もあります。知らない土地で「家」に泊まるというスタイルが定着すれば、“泊まる”と“暮らす”の体感差が限りなく縮まるかもしれません。
デュアル率が低いならシェアハウス
Airbnbの欠点は、当然ながら借りる都度、予約をしないといけない点です。もう少し腰を据えて地域の暮らしを楽しむには、いつでも「ただいま」と帰れる家がほしいところ。そこで有力候補となるのがシェアハウスです。
都市部では、若い人の間ですっかり市民権を得た感のシェアハウス。デュアルライフを考え始めると、実に合理的なスタイルであることに改めて気づきます。
シェアハウスを探すポータルサイトはいろいろとありますが、たとえば「コリッシュ」というサイト(https://colish.net)には、趣味や目的を共有した仲間と集うシェアハウスが多数紹介され、もちろん地域別に検索できます。こだわりを持ってデュアルライフや移住を考えている人には、住居ばかりかユニークな同好の士と出会うきっかけになるかもしれません。
新しいデュアルライフという暮らしを実現するには、「家」とか「住む」ということに関する発想の転換が必要です。固定概念にとらわれず、ぜひ自分らしい新しいライフスタイルを見つけてください。
この記事を書いた人
NPO法人南房総リパブリック理事長
1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。