デジタル終活——データやSNSのアカウントはどうすればいいのか
田中 あさみ
2022/03/16
イメージ/©︎takasuu・123RF
終活にあたって「PCやスマホに残っているデータや、クラウド上にあるものはどうすればいいのか」「死後見られたくないデータがある、どうしよう……」と考える方は少なくありません。
生前にPC・スマホにあるデータやクラウド上のデータを整理しておくことを「デジタル終活」と言い、デジタル終活を促進する企業・団体は数多く存在します。
高齢者だけではなく、若年層でも急に事故や病気で亡くなってしまう可能性を想定すると、デジタル終活はインターネットを利用する全ての人に欠かせないものと言えるでしょう。
本記事ではスマホ・PC、インターネットの普及状況、死後に残しておくべきデータ、消去すべきデータ、無料でデータを削除できるツール、SNSのアカウント削除についてお伝えしていきます。
記事の都合上「死後」「故人」と言う単語が出てきますが、あらかじめご了承ください。
他人事ではないデジタル終活
総務省が2020年に世帯・企業などでの情報通信サービスの利用状況を調査した「通信利用動向調査」によると、スマホを持っている世帯の割合は全体の86.8%、PCがある世帯は70.1%と年々増加し、個人の保有割合も伸びています。
出典/総務省「令和2年通信利用動向調査」より
インターネット利用者は20年には13~59歳で9割超、60代で82.7%、70代で59.6%と多くの方が利用していることが分かります。80歳以上でも25.6%で、4人に1人はインターネットを利用しています。
出典/総務省「令和2年通信利用動向調査」より
もはや生活に欠かせないといえるスマホなどの通信機器・インターネットですが、携帯やPCの中に「見られたくない」というデータをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
不慮の事故や急な病気などで「終活」を行う間もなく亡くなってしまった場合、身近な人に見られたくないデータが見られてしまう可能性があります。
消去されて困るもの・消去されないと困るもの
自身が亡くなった後にPCやスマホ・クラウド上に残ったデータはどうなるのでしょうか?
ネット上に残っている預貯金や有価証券、仮想通貨などは「デジタル遺産」と呼ばれ相続の対象となります。
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デジタル遺産は遺産分割後に見つかると遺産分割をやり直さなくてはならず、相続税にも影響がある可能性が生じます。エンディングノートに記載する、遺言書と一緒に財産目録として残しておく、生前に家族と話し合っておくなど周知しておくよう心がけましょう。
一方で、SNSのアカウントやパーソナルで「見られたくないもの」の削除はどうしたらいいのでしょうか?
<デジタル終活1>PCのデータを自動削除できる無料ツール
PC内に見られたくないデータがある場合には、物理的にHDDを破壊する方法が確実といえます。
ただ「自分がいつ亡くなるのか」は誰にも分かりません。死後に削除したいデータを生きているうちに分けておきたい場合には、指定された日時に自動削除できる無料ツールを利用しましょう。
見られたくないデータを削除できるだけではなく、データの悪用を防ぐことができます。
Remove Timer
対応OS:Windows 7/8/8.1/10
あらかじめ指定したファイルを、指定された日時又は指定された日数が経過した後に削除する自動削除ツールです。設定した日時に自身がPCを利用できる環境であるときは、日時を指定し直すことができます。
終活ソフト
対応OS:Windows 7/8.1/10
一定の期間PCを利用しないと、Windows ログオンパスワードの開示やテキストファイルでのメッセージの表示、指定されたフォルダの削除を自動で行うことができます。パスワード開示までは0~180日まで設定できます。PCを定期的に利用する方におすすめのツールです。
編みノート
自身が亡くなった後に残された方にメッセージを表示する「デジタルエンディングノート」です。
個人情報の入力設定で、葬儀とお墓・遺影・公共料金・年金などの情報や意向を残すことができます。遺影の項では、使ってほしい写真のアップロード、預貯金の項では銀行名や口座番号・通帳・印鑑の保管場所などを記しておくことができます。
ただエンディングノートと違い、PCが壊れた場合にはインストールし再び入力する必要があります。
<デジタル終活2>Google・Appleアカウントはどうすればいい?
Googleにはアカウント無効化管理ツールがあります。
Googleアカウントを選び「データとプライバシー」タブをクリックすると、「デジタル遺産に対する措置の計画」という項目があります。
あらかじめ設定した期間(3カ月・6カ月・12カ月・18カ月から選択可能)、Google アカウントが使用されていないとGメールと携帯電話のSMS を通じて連絡がきます。
通知する相手と公開するデータの選択、使用していない Google アカウントを削除するか否かの設定も行うことができます。設定はいつでも変更・解除できます。
Appleは21年12月13日にリリースされた「iOS/iPadOS 15.2」と「macOS 12.1 Monterey」に、所有者が亡くなった場合に身近な人が個人情報にアクセスできる機能を追加しました。
故人アカウント管理者として特定の人物の連絡先を設定することで、所有者が亡くなった後はApple IDアカウントや個人情報へのアクセス権が与えられます。旧バージョンの場合は所有者だけがアクセス可能です。
Apple アカウントに換金できるもの・データやサブスクリプション(定期契約)が残っている際にはデジタル遺産となりますので、財産目録を作成又はエンディングノートなどに記入しておきましょう。
見られたくないデータは、アクセス権を設定しないことで所有者以外は閲覧できません。
<デジタル終活3>SNSのアカウント
前述の調査によると、個人でSNSを利用する方も年々増加しており、70代で47.5%、80歳以上でも46.7%と半数近くの方がSNSを使っています。
出典/総務省「令和2年通信利用動向調査」より
自身が亡くなった後、管理権限を持つ人がアクションをとらない限りオンライン上にデータが残り続けてしまいます。SNSのアカウントを削除するためには一体どうすればよいのでしょうか?
Facebookではあらかじめ「追悼アカウント管理人」を設定することができます。
追悼アカウント管理人とは自身が亡くなった後のFacebookページを管理できる人で、プロフィールに投稿する、プロフィール写真やカバー写真を更新する、アカウントの削除をリクエストするなどの権限が与えられます。
ただ故人のアカウントにログインする、所有者へのメッセージを読む、友達を削除・新しい友達リクエストを送信は不可能です。
Facebookのアカウントを見られてもいい身近な人を生前に管理人としておくことにより、いざというときに備えることができます。
また、Facebookのヘルプセンターには、「亡くなった家族のFacebookアカウントについて削除をリクエストする場合にはどうすればよいですか」という項目があり、故人の死亡診断書のデータもしくは写真を送付されると削除できることが記されています。
もしくは故人と削除要請者が肉親であることを証明する書類を送る、生前委任されている場合には委任状などを送ることで削除が可能です。
Twitterで故人のアカウントを停止したいときには、「アカウント停止フォーム」から申請を行います。
アカウント停止フォームでは、氏名・メールアドレスと該当のアカウント名、アカウント所有者との関係などを記載し申請します。
Twitterから削除の手順として、故人の情報やリクエスト送信者の身分証明書のコピー、故人の死亡証明書のコピーなどを提出するよう連絡がきます。運営の判断によりアカウントが削除できます
デジタル遺産の相続は、相続人が遺産の存在を把握できていない場合が多く問題視されています。デジタル遺産対策に加え、死後にデータを見られてしまい名誉が傷つけられることの無いよう、デジタル終活を早めに行っておきましょう。
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この記事を書いた人
2級FP技能士・ライター
北海道在住。大学在学中に2級FP技能士を取得。 会社員を経てFP資格を活かし、ライターとして不動産・金融・相続・法律分野の記事を多数執筆する。「難しいことを分かりやすく」をモットーにライターとして活動中。