本当に快適な照明とは?――DIYでできる「あかりのデザイン」
内村恵梨
2021/08/04
イメージ/©︎vladimirfloyd・123RF
照明は家具などのインテリアや、壁床などの内装材と同様に、お部屋の印象を大きく左右する要素の一つです。それだけでなく、照明は色や明るさによって、人に心理的な効果を与えます。今回は、お部屋をより過ごしやすくリラックスできる空間にするためには欠かせない、照明の基礎知識についてお話します。
「あかりをデザイン」するとはどういうことか
まずはその空間がどんな目的で、誰が使うのか、どんな空間にしたいのかを考えてみましょう。空間の使い方によって、照明器具の場所や、あかりの色味、必要な明るさなどが変わってくるはずです。
例えばキッチンは、手元が充分に明るくなるように照明を考えます。
リビングやダイニングは、そこで過ごす家族の人数なども考え、夫婦二人なら照明の数や色味を工夫してシックな雰囲気をつくる、子どももいて家族団らんの時間が多いなら全体を明るくなど、そこで暮らす人が快適に過ごせるかどうかをイメージします。
寝室は、寝る前に目や体をリラックスさせたいので、強い光ではなく、暖色系のやわらかい照明を取り入れると、快適な睡眠にもつながります。
ただ、寝室やリビングで仕事や勉強をするといった、一つの部屋を複数の目的で使用することもあるかと思います。その場合は、必要なときには明るく、リラックスタイムには暖色系のあかりに切り替えられるような、調色機能のついた電球を使用するという方法もあります。もしくは、手元を明るく照らせるようなスタンドライトを用意しておくのもいいでしょう。
具体的にはどうすればよいか。今、お部屋で使っている照明を次の
ら考えてみてください。
1)皆さんのご自宅にはどんな照明がついていますか?
2)現在シーリングライトがついている部屋は、生活シーンの全て
3)その他の部屋の照明の明るさは快適ですか? 明るさが十分でな
4)現在ついている照明は、部屋のインテリアとして考えたとき、
照明器具6種――それぞれの特徴
最初に、現在ついている照明器具の種類を見直してみましょう。ここでは、代表的な6種類の照明器具を紹介します。
●シーリングライト
天井に直付けするタイプの照明です。メイン照明として使われます。現在の日本の住宅はほとんど、シーリングライトを取り付ける想定で作られています。なかでも、丸く乳白色のシーリングライトが定番です。リーズナブルで、部屋全体をまんべんなく照らしてくれるシーリングライトですが、あまりデザインの選択肢がないことと、影ができないのでメリハリのない雰囲気になりがちです。
天井直付け照明にはほかにも、照明の上にファンの付いた「シーリングファン」や、スポットライトがついているような形の「4灯シーリングライト」など、意匠性の高いものもあります。
●ペンダントライト
天井から紐で吊り下げるタイプの照明です。提灯のような丸い形のものなど、和風デザインのものも多くあるので、和室で使用している方も多いのではないでしょうか。ダイニングテーブルの上に付けて、レストランやカフェのように食卓をおしゃれに演出するためにも使われます。
ペンダントライトのデメリットは、背の高い人は頭をぶつけてしまうなど、天井が低く狭い空間にはやや不向きなことです。そして、デザインや用途が幅広いので、お部屋の広さや必要な明るさに合わせて慎重に選ばないと、失敗する可能性があります。
例えば、電球1灯のみのペンダントライトの場合、明るさが充分でないため、それだけで広い部屋を照らすことはできません。ダウンライトなどほかの照明と組み合わせる必要があります。
●ブラケット
壁に直付けするタイプの照明です。アクセントや間接照明的な使い方で、空間に立体感を与えます。
●ダウンライト
天井に埋め込まれているタイプの照明です。最近の新築では、この照明の割合が増えています。天井面にフラットに付いているので、空間がすっきりと洗練された雰囲気になります。
●スタンドライト
床置きタイプやテーブル置きタイプの照明です。お部屋のコーナーなど、暗く沈みがちなところに置いたり、ベッドルームの補助的なあかりとして使ったりします。デザインの種類が多く、インテリアのアクセントにもなります。
●スポットライト
ダクトレールに複数付けられるタイプの照明です。指向性のある光なので、壁にかけられた写真や絵などを強調したり、空間にメリハリをつけることができます。
お部屋の用途に合わせた光源の選び方
次に、現在使用している電球を見直してみましょう。住宅で使われる電球は主に、白熱電球・蛍光灯・LEDの3つです。
●白熱電球
昔から使われている電球です。価格が一番安く、暖かく柔らかい光が特徴です。ただ、電球の寿命が短く、電気代も高くつきます。現在では、省エネルギー対策とCO2排出削減のため、先進国を中心に白熱電球を廃止する動きがあります。
日本でも白熱電球の生産は減ってはいますが、強すぎない柔らかな光が好まれ、いまだ根強い人気があります。電球自体もおしゃれなものが多いので、電球そのものを見せるような照明を取り付け、空間演出として使用されることもあります。
●蛍光灯
白熱電球より省エネで、影が出にくいので、特にオフィスで活躍してきました。近年では蛍光灯型のLEDもあるので、活躍の場は減ってきています。
●LED
LEDは、価格自体は一番高いですが、消費電力が低く寿命が長いので、電気代が抑えられるとともに、電球取り換えの手間が減ります。
少し前までは、LEDは昼白色など白っぽく明るい光しかなかったので、電球色(オレンジ寄りの色)の照明を付けたい場合は、白熱球が選ばれていました。
しかし、最近ではLEDがどんどん進化し、白熱球のような見た目と色味を再現できるようになってきています。電球色のものや、調光(専用のスイッチを用いて、明るさを段階的に調節する)ができるものも増えてきました。
現在では、世の中の照明はほとんどがLED化してきています。しかし、人によっては光が強すぎると感じる人もいますし、就寝前の時間帯には明るすぎると感じる人もいるでしょう。その場合は、調光できるタイプを選んだり、光源を隠して直接目に入らないようにするなど、工夫が必要です。
つけっぱなしにすることの多い部分はLED、自分のリラックスタイムにだけ点灯する間接照明は白熱球にするなど、使い分けてみるのも一つの方法です。
あかりの色味から照明を見直してみる
続いて、あかりの色味にも意識を向けてみましょう。
あかりの色味のことを、「色温度」と呼びます。単位はケルビン(k)といい、正午の太陽光は5500k、ろうそくのあかりは2000k程です。
市販されている電球には、「電球色」「温白色」「昼白色」「昼光色」など、光色のタイプが記載されています。
リラックスをしたい場所や落ち着いた雰囲気にしたい部屋は、「電球色」「温白色」など、低めの色温度を選びます。リビング、和室、寝室、トイレ、浴室などに使用したり、間接照明にもおすすめです。
反対に、仕事や勉強をする部屋などは、電球色は適しません。仕事などの作業をする空間には、「昼白色」以上の明るさを選ぶと、活動的でさわやかな雰囲気になり、集中して作業をしやすくなります。「昼白色」は太陽光に最も近い自然な光の色のため、スタンダードといえます。
服を選ぶ部屋やお化粧をする部屋なども、電球色だと本来の服の色と違って見えることがあるため、「昼白色」がおすすめです。
いかがでしたか? 照明は、普段はあまり考えることは少ないかもしれませんが、実は生活に大きく影響するものです。今暮らしている空間のあかりを今一度見直し、生活をより豊かなものに変えていきましょう。
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この記事を書いた人
匠アカデミージャパン 事務局長 (運営:株式会社イマジンネクスト)
匠アカデミージャパンは2016年に開校した内装リノベーションのスクール。 単にDIYのノウハウを教えるスクールではなく「人生100年時代の大人の学び直し」の場として、副業やセカンドキャリア、定年後の生き生きとしたライフスタイルに生かせる技術を身につけることを提唱している。 講習内容は、クロスや床材の張り替えや、賃貸住宅大家さん向けワンルームの原状回復コースなど、まったくの経験のない方に対してDIYを超えた職人の技を伝授。照明プランニングや内装コーディネートのセミナーなども開催中。 http://www.takumi-ac.jp/