アフターコロナの働き方「ワーケーション」の本当の良さを知るために必要なこと
川久保文佳
2020/11/16
苦境下のホテル 民泊が始めたポストコロナへの動き
日本での新型コロナウイルスの広がりは、2020年1月16日、中国湖北省武漢市に滞在し、日本に帰国した神奈川県在住の30代男性が発症したのが始まりでした。それ以後、3月中旬から一気に広がり、緊急事態宣言によって沈静化しましたが、その後第2派、11月には第3派といわれるように、感染者が増えてきています。
この新型コロナウイルスによって、働き方は在宅勤務、会議はWEBに変わりました。自宅が経済活動の拠点となり、世の中の経済活動形態が一変しました。
一方で、通信の世界は今や5G(5th Generation)「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」の商用サービスがスタートし、2019年、アメリカ、韓国、イギリスなど世界19カ国が商用サービスをスタートさせました。日本でも2020年の春から利用が開始されています。
新型コロナウイルスが拡大していくのと時期を同じく、図らずして、「ヒト」と身の回りの「モノ」がスムーズに繋がるIoT(Internet of Things)時代になって来ています。
しかしながら、この新型コロナウイルスで大打撃を受けたのが、観光、飲食産業です。中でも、観光産業は順調に伸びてきた外国人観光客を背景に、売上を伸ばしてきました。しかし、新型コロナウイルスによって、4月から10月までの外国人観光客は前年同月比90%以上ダウンしています。
観光産業への影響は甚大で、帝国データバンクによると、今年度上半期(4~9月)のホテル・旅館経営業者の倒産(負債1千万円以上の法的整理)は67件で、前年同期比139.3%増加(39件増)しています。もちろん、民泊も同様です。
新型コロナウイルスの影響で事業廃止が増えて緊急事態宣言以前は3692件だった廃業数が、10月には7292件と倍増しています。
観光産業や飲食業の支援としてGoToトラベルやGoToイートがはじまりましたが、その恩恵は民泊に及んでいないというのが現状です。
こうしたことを受けて民泊やゲストハウスでもたんなる宿泊だけでなく、ワーケーションの場として活用してもらおうとさまざまな試みを行っています。
空き家・保養所のワーケーション施設への活用
ワーケーションとは働くの「Work」と休暇の「Vacation」の造語で、10年以上前からアメリカで使われるようになったようです。
アメリカでは、休暇は長期間を取得する当たり前。そのため日本のように皆が同じタイミングで長期休暇はとれません。しかし、休暇中とはいえ、重要な仕事のミーティングなどには参加しなくてはなりません。そこで休暇(Vacation)中にも仕事をする、そんななスタイルから「ワーケーション」という言葉一般化したといいます。
日本でもこのコロナ禍において、場所に依存しない働き方として、ワーケーションが注目されてきたというわけです。
こうした新たな試みを見学しようと、初秋、東京都心や伊豆高原など多拠点ライフを実践している大津山訓男さん主催の「伊豆リゾートワケーションの体験GoToトラベル活用」に参加しました。
参加者は四国、大阪、河口湖など全国から総勢10名ほど。主催者の大津山さんはアットマークベンチャー株式会社代表。日本IBMでのキャリアを元に上場支援や海外進出を支援しながら、インバウンド業界でも積極的にコミュニケーショングループを作り、地域活性化をテーマに活動しています。
参加者たちは集まってそれぞれの考えを話す
今回は、大津山さんの静岡県賀茂郡東伊豆町にある標高1500メートル、伊豆湾を臨むビラでワークとリゾート体験。ワークスタイルの変化についての解説や、リゾート地での解放感の中でのリモートワーク体験など、これからのコロナ禍でも過ごせる時代のヒント、取り組みについてお話をされました。
さらに、実際の保養施設や伊豆ホテルリゾート&スパなどのホテルなども見学。伊豆高原の保養施設の成り立ちやエリアで異なるリゾート環境のお話、モニターでのWEB会議、モビリティ体験、BBQ、温泉などを体験しました。
現場で大津山さんの話を聞く参加者
今回の体験で再認識したのが、人と会うとこでの心の回復です。人の事業に対する想いを聞くことが出来たり、雑談などから様々な事業ヒントを得たり、感動や納得、笑いなどを共有しました。そして共感できる仲間がいるということを実感できました。
空き家宿泊施設を利用したリモートワーク施設活用の流れ
2020年に開催されるはずだった東京オリンピックとパラリンピック、インバウンドにおける訪日観光客4000万人を目指して、多くの企業や個人が政府指針に沿って宿泊施設を整備して来ました。
しかし、新型コロナウイルスによってインバウンドにおける消費はほぼゼロになっています。
現在、インバウンド旅行客が減り、日本人観光客の移動がGoToトラベルキャンペーンで進められていますが、全体の数をカバーするには難しい数字です。
こういった使われない施設を活用する手段として、長期の環境を変えて仕事ができるワーケーションの場として注目されます。
心と体の健康を保ちながら仕事ができるワーケーションですが、会社がワーケーションを企画してしまっては、会社で仕事をするのと変わりません。なぜなら、会社が決めた場所の与えた環境や時間設定がされてしまうからです。
こうなっては“合宿”みたいなもので、新しいこれからの時代にあった働き方は生まれません。新たな働き方は経験して、自分自身で自分にあって働き方を考え、そこから自分で選択していくことが大切です。
リゾートでは集中力も高まる
ここで注意が必要なのは、2泊3日、3泊4日といった短期間ではなかなかそれが見つけられないということです。リゾート地でのワーケーションは集中する環境を作る上で役立ちます。それを実感するには。短くても2週間は利用したいものです。
この記事を書いた人
一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事
一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。