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増える日本の空き家

「あたりまえ」のものを見直す努力を

川久保文佳川久保文佳

2019/05/07

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空き家対策と地方創生

2018年4月26日に発表された住宅・土地統計調査によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合は前回調査の2013年を上回り、13.6%に達しました。戸数は最多の846万戸と、この数字はもちろん過去最多です。

空き家率が最も多い都道府県は山梨県で、21.3%、続いて、和歌山県、長野県、徳島県となりました。

最近、日本の過疎化が進むある地域において、地域の地図を広げて、①空き家になっている家、②5~10年後に空き家の可能性がある家と色分けしてみると、多くの部分を2つに色色分けでき、今から10年後の空き家の現状を再認識しました。

今回発表された数字はさらに右肩上がりに進んでいくことが予想されます。

近い将来、高齢化の進む地域において、機能しなくなる未来に危機感を感じます。空き家が増えていけば、地域の機能が衰え他の地域に分散し、地方創生の担い手が減っていきます。その一方で、それに気づいて対策をとっている自治体もあります。

① 岐阜県彦根市を訪ねて

4月、関西と北陸を訪ねました。東京から一筆書き切符(鉄道マニアの中では東京→京都→大阪→金沢→東京のお得な切符のことをこう呼んでいるようです。)で、大阪往復とほぼ同額でぐるっと一周してきました。

彦根市で、築20年ほどの家が、現在、空き家になっていて、利活用したいという相談を受けました。そこで、途中、岐阜県彦根市へ。

京都から琵琶湖線新快速で琵琶湖に沿って約50分です。

彦根市は彦根城と夢京橋キャッスルロード、ひこにゃん(ご当地キャラクター)などが、フックとなって、観光客を集めています。しかし、訪れるのは日本人が大半で、海外からの観光客の呼び込みは少ないように感じました。また、滞在型ではなく、日帰りが多く、街への長期滞在は少ないようです。滞在の宿泊費が旅行費用全体の約38%という統計からすると、滞留日数の拡大が地元の収益拡大へと繋がり、このあたりが課題のようです。


白峰にある古民家


キャッスルロード


琵琶湖湖畔の桜並木

彦根市は京都からの通勤圏内とあって、子ども連れの若い夫婦も多く、人口は約11万人。

2015年の統計によると生産年齢人口割合は62.4%。老年人口割合23.4%。街には、大型ショッピングセンターなどもあり、活気がありました。

近隣の近江八幡も含めて琵琶湖の側道には桜の木が並んで植えられていて、東京で見る桜とは趣が異なり、大海に桜を思わせる不思議で素敵な風景でした。桜を愛でながらサイクリングというのもおつなものです。琵琶湖はロードバイクに乗る人の間では、サイクリングロートとしても一目置かれていて、琵琶湖を一周することが「ビワイチ」と呼ばれ、親しまれています。琵琶湖一周が200キロとあって、かなり長い距離を走らなくてはならず、愛好者にとっては途中に休憩場所や宿泊施設が足りないことが不満になっているようです。

海外から来る観光客にとっては体験型の旅行や自然に親しむ旅行の割合が増えつつあり、彦根市での空き家の利活用に可能性を感じました。

実際、帰路で自転車を収納したバッグを抱えた旅行者が列車に乗り込んでいる姿もあり、まだまだできることがあると確信しました。

② 石川県白山市を訪ねて

彦根市の訪問を終え、京都に戻り、特別急行列車「サンダーバード」に乗って金沢へ。

金沢から白山市白山連峰へ。今回は、オーガナイザーと一緒に、不動産や地域創生、IOT、AIなど建物と街づくりとテクノロジーに関わるメンバー、約25人と一緒に白山連峰を訪れました。

白山市白峰地区は、自然のアクティビティにあふれる素晴らしい地域。手取川の水流には四季折々の木々がせり出し、渓谷と緑色の水脈には趣を感じさせてくれます。

石川県最大の河川手取川の流域で白山連峰から流れる水は雪解けの豊富な栄養を湛えて下流へと注いでいて、白山手取川ジオパークとしての認定も受けています。しかし、こんな素晴らしい地域でも過疎化は起きていて、リピーターの多い公益宿舎「白峰温泉御前荘」とコテージ5棟が地域予算削減の為、2019年3月閉鎖されてしまいました。

ここは、白山手取川ジオパークの拠点であり、白山市白峰伝統的建造物群保存地区の中心的な役割を果たしており、インバウンド向けのジオアクティビティにはなくてはない宿舎だと感じました。

魅力ある地域デザインへの構築が進む中、残すべき建物が利活用されないというのは、残念なことだと感じます。

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地域創生に必要なのは意外と日常の自然

日本にいると、平和ということに無頓着になります。また、山や里、海、湖など日本特有の自然があたりまえに感じられえて、素晴らしい価値を気付かないこともあります。

日本の家屋についても同様です。床の間や欄間、ふすま、障子、上がり框、縁側など日本家屋の魅力が「あたりまえ」として捉えられて、解体されていきます。

日本の四季や日本人が古の時から残してくれた資産は、海外からの利益をもたらします。その効果は利用者が増やし、地域の雇用も生み出します。

一方で、ゴミのポイ捨てや自然への影響などを懸念する人々もいます。観光地区として地域をデザインしていくためには、まずは、堅苦しくない、ルール作りも必要だと感じます。

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この記事を書いた人

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。

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