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【京都で愉しむセカンドライフ】坪庭、五山送り火、川床……暑い京都の夏を涼しく過ごす工夫を知る

奥村 彰太郎奥村 彰太郎

2020/07/31

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イメージ/tm373・写真AC

デュアルライフでは、夏は涼しいところ、冬は暖かいところで過ごすという考え方がある。季節に応じて暮らしやすい所に移動することで、できるだけストレスを減らすのは理想かもしれない。その視点では京都は真逆だ。京都は三方を山に囲まれている盆地、夏は暑く冬は寒いという気候風土だ。東京と比べて真夏と真冬の厳しさを実感するが、好き好んで京都を選ぶには理由がある。もちろん、今年はコロナ禍の影響で、祇園祭の山鉾巡行や神輿渡御など多くのイベントが中止や規模縮小になり楽しみは半減しているが、今回は例年の夏の京都の魅力を紹介したい。

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室礼で「涼」を感じる京町家

京都の夏はとにかく蒸し暑い。まとわりつく暑さという表現がピッタリくる。

伝統的な京町家では、クーラーや扇風機のない時代に涼を取るさまざまな工夫がなされてきた。6月になると部屋の建具を風通しの良い葦戸(よしど)や御簾(みす)にし、夏仕様に入れ替える。表通りに打ち水をすると奥にある坪庭との間に風が流れる工夫だ。


京町家の坪庭

また畳の上に網代(あじろ)の敷物を敷き涼しさを演出する。この風習を守っている町家も少なくなったようだが、典型的な商家であった吉田家住宅や杉本家住宅、長江家住宅などは、例年は祇園祭の一定期間に特別公開されていて、夏の室礼(しつらい)を見学できる。今年はコロナ禍で祇園祭の山鉾は建てられなかったが、新町通の吉田家では表通りの格子を外し「屏風祭」を公開、雅な屏風と貴重な絨毯、祇園祭の花である檜扇(ひおうぎ)を飾り、通りを行き交う人々を楽しませてくれた。


京町家の屏風祭

築百年以上の町家の建物を保全していくため、公益財団法人やNPO、大学、民間企業が協力して維持管理を行っている。町家に残るさまざまな風習は、訪れる者にとって心地よさを実感でき、いつまでも大切に守り続けて欲しいと願う。

幻想的な真夏の夜を過ごす「五山の送り火」

京都の夏の風物詩といえば、8月16日の「五山送り火」。お盆の精霊を送る伝統行事だ。京都盆地を囲む山々に「大文字」「妙・法」「船形」「左大文字」「鳥居形」の文字や形で火が焚かれる。東山の大文字は鴨川沿いなどかなり広範囲で見られる。我が家のベランダからも見えるが、斜めから見るのでアルファベットのKのような形だ。

一昨年は銀閣寺近くの橋本関雪記念館で食事をしながら鑑賞した。大文字からの至近距離にあり点火された炎が見える絶好の鑑賞スポットだ。店主から「盃の酒に大文字が映るようにして願いを込めて飲むと良い」と言われ試してみた。願いはともかく、朱塗りの盃に映る逆さ大文字を眺めていると雅な気分になれる。


盃に映る大文字 

昨年は「五山送り火」の4つを見ることができるスポットである西陣織会館の屋上で鑑賞する機会を得た。20時に東山の大文字山に「大」の文字が、その後5分おきに「妙・法」「船形」「左大文字」まで順番に火が焚かれ、夏の夜空に浮かび上がる。幻想的な真夏の夜を体験できた。


五山送り火(妙・法)


五山送り火(船形)

送り火は先祖の精霊を送る大切なお盆の行事だが、今年は送り火見学での三密を避けるため規模を縮小して行うことになった。文字の一部だけで点火するので、大文字は大の字にはならず6カ所の点だけ火が焚かれるとのこと。

御手洗祭で心身を清める


下鴨神社の御手洗祭

土用の丑の日の前後に下鴨神社では御手洗(みたらし)祭が行われる。神社の湧き水が出ている御手洗池に裸足で入り無病息災を祈る「足つけ神事」と呼ばれている。ロウソクを持って池を進み、祭壇に献灯し無病息災を祈る。湧き水は冷たく、池を進むにつれて大人の膝上までの深さがあり慣れるのに少し時間がかかるが、水から出ると爽快な気分になる。そして締めは、双葉葵が描かれた器に入れてくれる「ご神水」を飲む。心身共に清められた感覚になるから不思議だ。

御手洗池から湧き出る水泡を模したのが「みたらし団子」の起源になったとも言われている。下鴨神社の門前に「加茂みたらし茶屋」という老舗があり、みたらし団子が食べられる。

残念ながら、今年はコロナ禍の影響で御手洗祭は中止になった。

自然の中での納涼――川床で涼と味を愉しむ


貴船の川床

京都郊外の貴船や高尾の渓流沿いの料理屋で「川床」を楽しむこともできる。川の流れの上にスノコ状の桟敷が設けられ、その上で鮎料理を味わうという嗜好だ。渓流が床下を流れ、瀬音を聞きながら青紅葉の木陰で飲食を楽しむのは風情がある。昨年は舞妓さんと川床料理を楽しむ会に参加、一味違う川床を経験した。

気軽に行くなら、鴨川の西岸、二条から五条にかけて「納涼床」が90軒余りある。鴨川沿いの料理屋さんが仮設のテラスを設けて、夕涼みに鴨川の流れを見ながら屋外で飲食を楽しめる。日本料理はもちろん、中華、フレンチ、イタリアン、カフェなどさまざまな店が並んでいる。なお、現在のような高床形式の納涼床は明治以降らしい、江戸時代の絵図には、鴨川の河原や砂州に床机が置かれて飲食を楽しんでいる様子が描かれている。


鴨川納涼床

夏はクーラーの効いた室内にいるのも良いが、京都のさまざまな伝統行事や風俗習慣を見る機会を持つことで、夏の暑さを忘れ楽しむことができる。今年は三密を避けて、鴨川の河原を夕涼みで散歩するのも良いかもしれない。

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この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー&キャリア・カウンセラー

1953年東京生まれ、東京都立大学卒業、株式会社リクルートに入社。進学や住宅の情報誌の営業や企画・人事・総務などの管理職を務め、1995年マネー情報誌『あるじゃん』を創刊。発行人を務めた後、2004 年 ファイナンシャル・プランナー&キャリア・カウンセラーの資格を活かし、“キャリアとお金”のアドバイザーとして独立。企業研修の講師や個別相談を中心に活動中。大学の非常勤講師も務める。東京と京都のデュアルライフを実践中。

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