環境アレルギー対策で、さらに健康増進! 第3回「生活用品から揮発する化学物質」
加藤 美奈子
2020/04/15
化学物質からできている日用品
毎日の暮らしにかかせない日用品。これらは全て化学物質からできています。その中には揮発する有機化合物(VOC)があり、発生しやすいものは約200種類(※)あります。
今回は、様々な日用品のVOCが私達にどのように影響し、対策はどうしたらよいかをご紹介します。
ベンゼンを揮発する可能性もあるお香。写真はイメージ/123RF
まずお香ですが仏壇の使用や癒し効果で楽しむ方もいますが、ベンゼンなどを揮発する場合もありますし、蚊取り線香は、害虫退治に使いますが、煙から除虫菊に含まれているピレトリンという化学物質に似た成分を発生します。
次に暖房器具では、石油ストーブや石油ファンヒーターなどの開放型燃焼器具は熱とともに多量の燃焼生成物が放出し空気を汚染しますが、その物質は一酸化炭素や窒素酸化物、ホルムアルデヒドなどになります。
また家具は、合板や塗装部分でいろいろな化学物質(ホルムアルデヒド、スチレンなど)が発生する場合があります。
ネイルを落とす際の除光液にはアセトンという有機溶剤が入っていることも。写真はイメージ/123RF
さらにネイルを落とす除光液を使用する時、鼻がツーンとすることはありませんか?それは、アセトンという有機溶剤で、空気より重たい物質になります。
その他、新しい本からはインクや紙、接着剤などから化学物質を発生しますし、洗剤や柔軟剤では、最近、香料に持続性があるものが増えています。その影響で東京都生活文化局消費生活部生活安全課商品安全担当によれば、柔軟剤のにおいに関する相談が2013年(平成25年)から増加し、17年(平成29年)では、年間39件の相談があったということです。
日用品のVOCを長期間吸入することで過敏体質に
私たちは気づかないうちに日用品のVOCを吸入し、長期間浴び続けることで過敏な体質になってしまうこともあります。
今は無症状でも、ある日突然、化学物質過敏症という病気になることがあります。普通の人であれば何も問題のないVOC濃度レベルでも具合が悪くなる病態です。患者の原因物質はさまざまです。暮らしに対しとても苦労されていると患者会などで聞きます。
その背景には、昔の家は隙間が多いため換気が自然に行われることも多く、昨今は省エネのため高気密高断熱住宅のうえに換気量が不足していたり、害虫退治に強い毒性の薬剤を使用しているのも1つの原因です。
VOCをコントロール、簡単な工夫とは
私達の生活に、VOCが消えることはないと思いますが、コントロールすることはできます。まずは身近な室内から工夫してみるのはいかがでしょうか?
対策の一部をご紹介します。
①24時間換気ボタンがある人は、必ずONにします
②窓を開けられる時間帯は、しっかり開放します
③香りの出る用品は、成分を確認し、使う量を調整します。香りを長時間維持する香水、柔軟剤は人が密集する場所では控えましょう。室内で香料を付けて一人で過ごす場合は、時々換気をしましょう
④ネイルを落とす除光液を使用する時や、家具の組み立てで接着剤を使う時など、必ず換気をしながら作業をします。乳児がいるお宅では離れて作業しましょう
⑤蚊取り線香を使用する時は、寝る前に換気を行い片付けましょう
⑥灯油のストーブを使用する時は、時々換気をしましょう
⑦家具を選ぶ時、室内環境配慮マークの商品を選ぶのもお勧めです。家具に使用される合板や繊維版など、パーティクルボードおよび接着剤はF☆☆☆(エフスリースター)、またはF☆☆☆☆(エフフォースター)のもので、塗料はホルムアルデヒドを含まないものと定められています。ただ、決してホルムアルデヒドが放散されないものであるということではありません。
皆さん、対策はいかがでしょうか? できるところからチャレンジしてみてください。
次回のコラムは「はじめての食物アレルギー」です。お楽しみにしてくださいね。
参考資料
※環境省 かんたん化学物質ガイド 塗料・接着剤と化学物質
この記事を書いた人
春日井環境アレルギー対策センター 代表
子どもがアレルギー起因の喘息で入退院を繰り返した経験から、2011年にアレルギーをもつ子どもの育児をサポートする任意団体を設立。2018年、春日井環境アレルギー対策センターを設立し、健康住宅建築や既存建築物の空気質測定、室内空気環境品質検査認証などを中心に事業展開。アレルギー患者を一人でも減らすべく日々活動している。資格:看護師、環境アレルギーアドバイザー、シックハウス診断士