終の棲家の条件とは? 定年後「家」をつくるための4つのポイント
小川 純
2019/12/17
イメージ/©︎123RF
衣食住のなかで、生活の根幹にあるのが「家」、住むところをどうするかということです。なかでも老後、どこに住むか、どんな家に住むかは肉体的、精神的な健康を維持するためにはとても大切です。
そこで重要になるのは、老後を過ごす〝終の棲家〟対する考え方をしっかり持つことです。そのポイントはおおまかに4つあります。
1つ目は、「夫婦2人だけで暮らす」ということ
老後は子どもが同居するとは限らず、むしろ、いなくなることを前提に夫婦2人にとって快適な空間をどうつくるか、子どもが家を出たあとの部屋をどう活用するかを考えておく。
2つ目は、夫婦世帯であれば「2人でゆったりとくつろげるスペースをつくる」こと
家の中心になるのはリビングになることでしょう。そこでリビングは介護が必要になったときためのベッドを置けるスペースをつくっておく。あるいは、そうなったときにはどうするかを考えておきます。というのも、夫婦のどちらかがベッドから離れられなって、いつも寝室にこもりきりでは、気分も暗くなってしまいます。そこで寝たきりになっても元気なときと同じように生活することがとても重要だからです。
3つ目は、「コンパクトに移動できる」ようにしておくこと
ベッドから離れられなくなってリビングで過ごすといっても、やはりゆっくりと休みたいときもあるものです。そのためにはベッドごと簡単に移動できるようにしておくと、とても便利です。具体的には、リビングと寝室は並べた間取りにして、壁ではなく可動式の間仕切りパネルで区切るなどすれば、ベッドごとリビングと寝室を容易に移動し、ゆっくりと休める空間をつくることができます。
4つ目は、「空間に余裕をもたせるということ
たとえば、都心のマンショなどは廊下や扉は半間(約90センチ)が基本になっています。しかも、その廊下に手すりなどを付けてしまうと、車いすでは通りづらくなってしまいます。そこで120センチにできれば理想ですが、無理なようであれば移動がスムーズにできるスペースを確保できるように考えましょう。また、扉は引き戸にできればベストです。
最後に+αとして、2階建ての戸建て住宅の場合は、生活空間を1階にまとめるということもポイントです。これは高齢になると階段の上り下りが億劫になってくるもの。そのため2階が生活空間の中心になると、どうしても部屋にこもりがちになってしまいます。そして、外に出歩くことがなくなり、家から外に出なくなって、日々の生活に変化がなくなり、引いてはそれが認知症の原因にもなりかねません。
バリアフリー住宅へのリフォームの目安
高齢者に合わせた住宅というと、バリアフリー住宅が思い浮かびます。
バリアフリー住宅というと、床の段差をなくす、手すりを付ける……ということがイメージされますが、具体的な工事となるとわからないことも多いのではないでしょうか。
しかし、バイアフリーだから手すりを付ければそれでよいとはなりません。手すりを付ける位置にしても、使いやすい、使いにくいという差が大きく出るものです。そのためこうした工事は頼む際は、その業者が慣れているかの見極めが必要です
またバリアフリー工事の参考になるのが、住宅支援機構が出しているバリアフリー住宅へのリフォーム融資への工事基準です。
基準工事の内容は、
①床の段差の解消、
②廊下及び居室の出入り口の拡幅、
③浴室及び階段の手すり設置
の3つに分け、その内容の説明もされています。
一方、気になるのはその費用。住んでいる地域や家の状態や業者によって違いがありますが、1つの目安としては、戸建て住宅を丸ごとリフォームする場合は900万~1000万円。
個別工事ではバスルームのリフォームで100万~150万円、手すりを付けるだけなら数万円でできる工事と、かかる費用もさまざまです。
もちろん、元気うちに準備しておくのもよいですが、要介護認定で「要支援1・2」または「要介護1~5」の認定を受けたあとになれば、住宅改修でも介護保険制度の活用も可能になります。介護保険を使うとなると、その手続きも必要になりますが、出費をなるべく抑えるのであれば、必要になってからという考え方もあります。
この記事を書いた人
編集者・ライター
週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。