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ほんとうは怖い「住まい」にまつわる漢字の秘密

「家」・「屋」・「室」・「宅」・「居」の意味することとは(2/2ページ)

正木 晃正木 晃

2019/10/27

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この件に関連して、「屋」は、もともとは葬儀をいとなむために、板を並べて建てられた建築(板屋)を意味していたともいう。同じように、「室」も、死者を祀る場所を意味していたようだ。

「宅」もよく似た由来が指摘されている。現代では、「宅」といえば、「住宅」のことで、人が住む場所を意味するが、古代中国ではそうではなかった。「宅」は人が居るべき場所ではなく、神霊が宿る場所であった。「宅」には、巫祝(ふしゅく)といって、特別な霊能をもつ者(シャーマン)が、身を清めてから入り、神霊をお迎えして、いわゆる神懸かりし、神意をお伺いする場所だったのである。

「居」も同類だ。祖先の霊を祀る祭祀のとき、一家の主が、死者に代わって、倚子に腰掛けている姿に由来する。

では、「住まい」にまつわる漢字がこのように宗教的な由来や意味をもっているのは、なぜか。その理由は、次のように考えられる。

古代においては、屋根や柱や板壁や複数の室を備えた立派な「住まい」は、神殿のような宗教関連の施設か王侯貴族のような政治権力者が居住する宮殿くらいしかなかった。しかも、そのころの政治は宗教と切っても切れない関係にあり、多くの場合、王や貴族は神官でもあった。それを思えば、「住まい」にまつわる漢字が宗教的な由来をもつのも、無理からぬ成り行きだったといっていい。

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この記事を書いた人

宗教学者

1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。

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