#10 ハワイで新バケーションレンタル法案が施行
中野亜紀
2019/08/21
2019年8月1日より新バケーションレンタル法案が施行
オーナーが物件を使用しない期間、その物件を他者に貸し出すバケーションレンタル。ハワイではこのバケーションレンタル(以下バケレン)について新たな動きがありました。
ハワイに不動産購入を考えられている方だけでなく、既に所有されている方、バケレンを利用されているハワイのリピーターの方にも大きな影響を与える非合法バケレンに対する規制法案(第89条例案)が6月17日ホノルル市議会で承認され、8月1日より施行されました。ハワイ不動産市場に大きく影響を与える法案ですので、今回取り上げたいと思います。
第89条例案とは?
市計画・許可局(以下DPP)の報告では、現在違法に運営されているバケレンは6,000〜8,000件に上るとみられ、合法に運営されているのはわずか816件のみとのことです。
2020年10月より約1700件の物件に対し新しいバケレン許可証を発行しますが、主たる居住所の控除申請(Home Exemption)をしている個人の物件に限られるうえ、物件所有者や管理責任者が住んでいる家の一部の部屋を貸し出すベッド・アンド・ブレックファースト(B&B)型のみ対象で、一軒家丸ごとの貸し出しもできません。DPPでは8月1日の本格施行の前に、7月末に既に約5,000件のウェブサイト上で非合法バケレンの募集を行っている所有者に対し通達文を送付しているとのことです。通達より7日以内に広告が取り下げられた場合、最初の違反に対しては、罰金は科されませんが7日以上経っても取り下げられない場合、$1,000〜$10,000/1日の罰金の対象になるとのことでかなり厳しい罰則を設けています。
合法的にバケレンができる条件は?
合法的にバケレンができる条件は
1 リゾートゾーン内の物件
2 バケレン許可証(Non Confirming Certificate)を持っている物件
となります。
1つ目はリゾートゾーン内の物件です。ハワイでは地域毎にゾーニング(用途地域)が指定されています。ワイキキ、コオリナなどにあるリゾートゾーン内の物件は今まで通り30日未満の短期賃貸をすることができます。ワイキキではクヒオ通りから海側はリゾートゾーンとなり、建物の管理組合が独自で規制を設けていない限り、引き続きバケレンすることができますが、クヒオ通りから山側はバケレン許可証を持っていない限り30日未満の短期賃貸はできません。
2つ目は1989年以前に発行されたバケレン許可証を持っている物件です。この許可証を持っている物件はリゾートゾーン以外でも合法的にバケレンすることができます。ただし、2年ごとの更新が必要で一回失効すると再発行不可のため、30年経ち今も継続してこの許可証を持っている物件は決して多くありません。
法案成立の背景は?
もともとリゾートゾーン外の物件もしくはリゾート許可証を持たない物件でバケレンはできませんが、今までほとんど取り締りは行われていませんでした。しかし、Airbnb(エアビーアンドビー)などの普及により、この違法バケレンが近年急増してきて見過ごすことのできない市場規模となってきました。ホテル業界はこれらの違法賃貸にお客様を奪われることになります。また、居住用コンドでバケレンする部屋が増えることにより、セキュリティ面での不安や住宅不足、家賃や物件価格の高騰に拍車をかけるとも指摘されています。そして本来バケレンでは宿泊税及び消費税を州に収める必要がありますが、違法のため徴収が難しいことが深刻な問題となっています。
ワイキキに物件所有される日本人の方は、“自分がハワイに来た時は物件に泊まり、使わない時はバケレンをする”という方が多いですが、今後はリゾートゾーン内の物件かバケレン許可証のある物件しか30日未満の貸出しはできなくなります。新たに物件を購入してバケレン運営をしたい場合は、これらの条件を満たす物件を購入する必要があります。どの物件がバケレン許可証を持っているかはホノルル市のウェブサイトで調べることができますので、不動産業者に相談してください。
この記事を書いた人
東京都出身。2000年8月から一人娘とともにハワイへ移住。2005年ハワイ大学経営学部会計学科卒業後、ハワイの日系不動産会社に勤務しハワイ州不動産免許(後にブローカーライセンス)を取得。2013年、雇用による永住権を取得し、現在は不動産投資・開発・管理・売買・商業物件・バケーションレンタル等扱う現地総合不動産会社“リアルセレクトインターナショナル”で、日本人顧客の居住用不動産売買を担当。https://www.realselectintl.com/