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空間と心のディペンデンシー

快適な生活がもたらす代償(1/2ページ)

遠山 高史遠山 高史

2019/06/24

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イメージ/123RF

夏、30歳過ぎの少々青ざめた独身の男性が、「なんとなくだるくよく眠れない」と身体の不調を訴えてやってくる。

「このごろの外の温度は朝から高い。外に出るのは好まない。日本列島ごと何かで覆ってエアコンかけられたら出てもいいとは思う」と彼はいう。私がよく眠るためには、太陽のもとでウオーキングなどがよい説明したときの彼の返事である。

彼は究極のインドア派で、日がな空調のきいた、夜昼のはっきりしない恒常的な光のオフィイスでパソコン向かう仕事。虫は嫌いで、ゲーム大好き。そもそも生まれたときから都心のマンションに暮らし、成人してからも窓も開かず空調が完備したタワーマンションの18階に暮らしている。冬でも夏でもシャツ一枚で暮らせる――とても快適な生活をしているのかもしれないが、彼の不調の原因はそもそも、彼の快適すぎる住まいによると私は思うのである。

人間は多大なエネルギーを費やして快適な空間を作ることに成功した。が、もちろんのことだが、建物の外の環境まではコントロールはできない。建物内の快適な環境を維持するために、都会の異常な高温環境を作り出したりしてしまっている。そして、身体という内なる自然環境も十分コントロールできているとはいえず、むしろ機能を落とす結果を生み出しているように思える。

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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